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ジアゼパム()とは、主に抗不安薬、抗けいれん薬、催眠鎮静薬として用いられる、ベンゾジアゼピン系の化合物である。筋弛緩作用もある。アルコールの離脱や、ベンゾジアゼピン離脱症候群の管理にも用いられる。ジアゼパムは、広く用いられる標準的なベンゾジアゼピン系の一つで、世界保健機関 (WHO) による必須医薬品の一覧に加えられている。また広く乱用される薬物であり、1971年の国際条約である向精神薬に関する条約のスケジュールIVに指定され、日本では処方箋医薬品の扱いである。処方・入手は医師の処方箋に限られる。 ジアゼパムはてんかんや興奮の治療に用いられる。また、有痛性筋痙攣(いわゆる“こむらがえり”)などの筋痙攣の治療にはベンゾジアゼピン類の中で最も有用であるとされている。鎮静作用を生かし手術などの前投薬にも用いられる。アルコールやドラッグによる離脱症状の治療にも用いられる。変わったところでは、軍事的ないしそれに類する狙撃手によって、筋弛緩作用と呼吸を緩やかにする作用から命中率を高めるために用いられることもある ジアゼパムによる有害事象としては、前向性健忘(特に高用量で)と鎮静、同時に、激昂やてんかん患者における発作の悪化といった奇異反応が挙げられる。またベンゾジアゼピン系はうつ病の原因となったり悪化させることがある。ジアゼパムも含め、ベンゾジアゼピンの長期的影響として耐性の形成、ベンゾジアゼピン依存症、減薬時のベンゾジアゼピン離脱症状がある。ベンゾジアゼピンの中止後の認知的な損失症状は、少なくとも6か月間持続する可能性があり、いくつかの損失症状の回復には、6か月以上必要な可能性があることが示されている。ジアゼパムには身体的依存の可能性があり、長期間にわたって使用すれば身体的依存による重篤な問題の原因となる。処方の慣行を改善するために各国政府に対して、緊急な行動が推奨されている〔〔。 化学的には、1,4-ベンゾジアゼピン誘導体で、1950年代にレオ・スターンバックによって合成された。1960年代に広く用いられることとなった。日本での代替医薬品でない商品には、武田薬品工業のセルシンやアステラス製薬〔山之内製薬より変わる〕のホリゾンがあり、他に各種の後発医薬品が利用可能である〔あくまでも例であるが、ジェネリックの錠剤や散剤を用いて、薬価をセルシン錠やセルシン散の1/2以下に抑えることも、場合によっては可能である。〕。アメリカ合衆国での商品名としてValium、Seduxenなどがある。 == 適応 == ジアゼパムは以下のように、非常に広範な適応を持つ。 *不安、パニック発作、興奮状態の治療 *重度の不眠症の短期的治療 *手術前・手術後の鎮静 *てんかん重積状態の治療、ならびにそれ以外のてんかんの補助療法 *破傷風(他の積極的な治療と併用する) *疼痛を伴う筋疾患の補助療法 *脳卒中、多発性硬化症、脊髄損傷などを原因とする痙性麻痺(片麻痺、四肢麻痺)の補助療法(長期療法としてリハビリテーションと併用される) *躁病の初期管理(短期間に限る。リチウム、バルプロ酸などの第一選択薬と併用される) *幻覚薬、および中枢神経興奮薬の過量摂取に対する補助療法 *アルコール、ならびに麻薬の離脱症状の緩和(医師による注意深い監視を要する) *神経遮断薬(抗精神病薬)の、早期の錐体外路性副作用に対する補助療法 「日本の」特殊事情として、こうした薬理学的適応のほかに、医療保険上の適応になるか否かが問題になる。そのため、睡眠薬としてジアゼパムが用いられることは少なく、抗不安薬・鎮静薬としての用途で用いられることが多い。 獣医学的な用途にも用いられ、犬猫の短期間作用型鎮静・抗不安薬として大変有用である。犬猫の術前鎮静薬や、鎮静が許容できる場合での抗けいれん薬(短期・長期治療いずれも)としても使用される。例として、猫のけいれん発作重積状態を止めるためには、5mgの注腸、ないし緩徐な静注(必要により再投与)が用いられることがある。 抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)』 ■ウィキペディアで「ジアゼパム」の詳細全文を読む 英語版ウィキペディアに対照対訳語「 Diazepam 」があります。 スポンサード リンク
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