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丁朝 : ウィキペディア日本語版
丁朝[ていちょう]

丁朝(ていちょう、ディンちょう、Nhà Đinh、966年 - 980年)は、ベトナム北部を支配した王朝。首都は華閭(ホアルウ、現在のニンビン省に位置する)。ベトナムで編纂された史書では呉朝がベトナム初の独立王朝とされているが、北ベトナムが真に中国の王朝から独立したのは、丁朝の時代からだとする意見もある〔小倉『物語 ヴェトナムの歴史 一億人国家のダイナミズム』、66頁〕。
== 歴史 ==
建国者丁部領(ディン・ボ・リン)の父・丁公著(ディン・コン・チュ)は、驩州(ホアンチャウ)の刺使として呉朝に仕えたが〔小倉『物語 ヴェトナムの歴史 一億人国家のダイナミズム』、62頁〕、丁公著は丁部領が幼少のころに没した。
呉朝末期の965年に、北ベトナムでは12人の群雄による覇権争いが起こると(十二使君の乱)、丁部領は十二使君の一人である陳覧(チャン・ラム)と同盟を結び、陳覧より後継者の地位を約束された〔小倉『物語 ヴェトナムの歴史 一億人国家のダイナミズム』、64-65頁〕。十二使君の一人・呉昌熾(ゴ・スオン・シ)兄弟を倒した丁部領は北ベトナムの主導権を握り、他の使君との戦いに勝利し、民衆より「万勝王(ヴァン・タイン・ヴォン)」と呼ばれた。
丁部領は大勝明王(大勝明皇帝)という王号を贈られ、国号を大瞿越(ダイコヴィェト、「偉大な越」の意〔小倉『物語 ヴェトナムの歴史 一億人国家のダイナミズム』、67頁〕)とし、王朝である丁朝を開いた。中国に依存する従来の支配者層が多い、呉朝の首都である大羅(ダイラ)を避けて故郷の華閭を都に定め、首都の建設と国内の再興を計画した〔小倉『物語 ヴェトナムの歴史 一億人国家のダイナミズム』、66頁〕。そして970年にベトナム最初の元号である太平が制定された〔。翌971年に文武僧道の階品(行政、軍事、仏僧、道士の最高位と人物の制定)の制定を実施した〔小倉『物語 ヴェトナムの歴史 一億人国家のダイナミズム』、67-68頁〕。ベトナム初となる〔酒井「丁部領」『アジア歴史事典』6巻、419頁〕国号と王号の制定、銅銭「太平興宝」の鋳造によって、丁朝は東南アジア唯一の小中華国家としての道を歩み始める〔桃木「唐宋変革とベトナム」『東南アジア古代国家の成立と展開』、41-42頁〕。
978年に丁部領の末子である丁項郎(ディン・ハン・ラン)が皇太子となるが、父・部領と共に十二使君との戦いを勝ち抜いた丁璉はこの決定に不満を抱き、人を遣って項郎を暗殺した〔小倉『物語 ヴェトナムの歴史 一億人国家のダイナミズム』、68頁〕。この事件が979年10月の内乱を引き起こし、丁部領、丁璉は廷臣・杜釈(ド・ティック)によって暗殺される。
丁部領の死後、彼の子で唯一生存していた丁璿が6歳で即位し、軍部の有力者である黎桓(レ・ホアン)が摂政となって丁璿を後見する〔小倉『物語 ヴェトナムの歴史 一億人国家のダイナミズム』、69頁〕。宮廷で政務を執る機会が多い黎桓は皇太后の楊皇后と親密になり、定国公・阮匐ら廷臣や黎桓の政敵は挙兵するがクーデターは失敗し、首謀者は処刑された〔。一方、では北ベトナムの政変に乗じて軍を進めるべしという意見が容れられ、ベトナム遠征の準備が進められていた。また、南方のチャンパ王国では、チャンパに亡命していた十二使君・呉日慶(ゴー・ニヤツ・カイン)がチャンパ水軍との共同出兵を行った〔桃木「唐宋変革とベトナム」『東南アジア古代国家の成立と展開』、34頁〕。チャンパ水軍の遠征は嵐に遭って失敗したが、980年6月に黎桓は腹心の范巨倆(ファム・キュウ・リュオン)を大将軍に命じて北辺の防備にあたらせ、范巨倆は出陣の前に黎桓を帝位に擁立することを将兵に説いた。将兵たちは黎桓の即位に賛成し、丁璿の廃位、黎桓と楊皇后の結婚〔桃木「唐宋変革とベトナム」『東南アジア古代国家の成立と展開』、39,41頁〕をもって丁朝は滅亡し、前黎朝が成立した。
前黎朝成立後、反乱鎮圧に従軍して戦死するまでの間丁璿は故主衛王として中央で厚遇され、楊皇后は黎桓の五皇后の筆頭として影響力を持った〔桃木「唐宋変革とベトナム」『東南アジア古代国家の成立と展開』、41頁〕。また、キン族ムオン族の中には丁部領の子孫を称する家系が存在する〔桃木「ディン・ボ・リン(丁部領)」『ベトナムの事典』、223頁〕。

抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)
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