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両剣論 : ウィキペディア日本語版
両剣論
両剣論(りょうけんろん、theory of two swords)とは、12世紀から13世紀にかけての中世ヨーロッパにおいて考察された聖俗権力についての理論〔渕倫彦「第十二・十三世紀ヨーロッパにおける両剣論」『宗教法』1号、p164-190.1983年、宗教法学会〕。ローマ教皇神聖ローマ皇帝の間での叙任権闘争を背景にして生まれた〔佐々木隆「トマス ・ アクイナスの法論の起源」『中世思想研究』第27号、1985年(昭和60年)9月20日発行〕。
「この世は聖俗二つの権力によって統治されている」という観念を教皇ゲラシウス1世が提唱し、また教会法学者も二つの権力が存在するのは神法に基づくと説いた〔。『オックスフォード中世事典』では「司祭の聖なる権威と王の権力」についてのゲラシウス1世の理論を補強して解説したものと説明されている〔苑田亜矢「一二世紀後半イングランドにおける両剣論 」熊本法学, 127: 241-289,2013-03-21
〕。
== ゲラシウス1世 ==
ゲラシウス1世は494年東ローマ皇帝アナスタシウス1世へ宛てた書簡で、この世を統治する二つのものとして「司祭の聖なる権威と王の権力」があると説いた〔。
教皇ゲラシウス1世は俗権と教権がともに神に由来すると述べ、聖界の普遍的支配者としての教皇と俗界の普遍的支配者としての皇帝が並列的に存在していることを論じた。ただしゲラシウス1世は一方で教権が帝権の上位にあることを論じているから、俗権と教権は完全に並列的であると考えられていたわけではない。彼によれば、「政治的支配をする」王は「権力」 (potestas) を持つのに対し、教皇は権威 (auctoritas) を持っているのだが、後者こそが完全な主権なのである。。この両剣論はその本来的な意図においては教権と帝権の相補的役割を期待したものであった。


抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)
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