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中全音律 : ウィキペディア日本語版
中全音律[ちゅうぜんおんりつ]
中全音律(ちゅうぜんおんりつ)()は、西洋音楽の代表的な音律の一つである。ミーントーンと呼ばれることも多い。15~19世紀に主に鍵盤楽器調律で広く使用された。
三度音程の純正度を確保するために、完全五度音程を純正音程よりも僅かに狭めた音律であり、全音音程は大全音(9/8)と小全音(10/9)の間の大きさとなるために中全音律と呼ばれる。狭義には純正な長三度が得られる1/4コンマ中全音律を指す。
==1/4コンマ中全音律==
1/4コンマ中全音律(:en:Quarter-comma meantone)は、ピタゴラス音律の純正な完全五度を1/4シントニックコンマ狭くすることで、純正な長三度を得るものである。
長十七度の音程は、例えばD4からF6#のような音程であり、以下のように表現できる。
*4つの完全五度の積み重ね (e.g. D4-A4-E5-B5-F6#)
あるいは
*2つのオクターヴと1つの長三度 (e.g. D4-D5-D6-F6#)
したがって長十七度をピタゴラス音律の純正な完全五度 (3/2) を4つ積み重ねたものとして表すと
: \left( \right)^4 = = \cdot = 5 \cdot
一方、純正な長三度 (5/4) と2つのオクターヴ (2/1) を用いて表すと
: 2 \cdot \cdot = 5
これはピタゴラス音律の長三度が純正音程よりも81/80だけ広いことを意味している。この差をシントニックコンマと呼び、約21.506セントである。
: 1200 \log_2 \ \hbox \approx 21.506 \ \hbox
完全五度を純正音程から1/4シントニックコンマ狭めることで、4つの完全五度の積み重ねが純正な長十七度 (5/1) と一致し、純正な長三度が得られる。
xを狭められた完全五度とすると、4つの完全五度の積み重ねが5/1になるので
: x^4 = 5 \
したがって完全五度は
: x = \sqrt = 5^ \approx 1.495349
この1/4コンマ中全音律の完全五度は約696.578セントである
: 1200 \log_2 5^ \ \hbox \approx 696.578 \ \hbox
これは純正な完全五度よりも少しだけ狭い。
: 3/2 = 1.5 = 1200 \log_2 \ \hbox \approx 701.955 \ \hbox
両者の差は1/4シントニックコンマである。
: \approx 701.955 - 696.578 \approx 5.377\approx \left( \frac \cdot 21.506\right) \ \hbox
半音階の12の音は、ある音を起点に完全五度ずつ上昇、下降を繰り返すことによって得られる。これは完全五度の大きさが少し異なること以外はピタゴラス音律と同様である。
以下の表にD音を起点とした1/4コンマ中全音律の半音階の各音の、Dからの音程の大きさを周波数比とセント値で記す。計算式の x = \sqrt = 5^ は調整され狭められた完全五度である。
ピタゴラス音律と同様に、この方法で得られるA♭とG♯は一致しない。12音の音階を構成する場合、一般にA♭が省かれる(もちろん取捨選択は自由である)。このときG♯からE♭への五度音程は、他の調整された完全五度とは逆に、純正な完全五度よりも大分広いものになる。この広い五度による和音は、顕著なうなりを生じるため、の吠声に例えてウルフの五度(:en:Wolf interval)と呼ばれる。また、ウルフの五度を含んだ4つの五度を重ねて出来た十七度に基づく長三度も同様に外れた音程となる。これらの音程は一般には実用に耐えないため、使用できる調は限定されたものとなる。1/4コンマ中全音律では一般的に調号が#が3つあるいは♭が2つより多い調は演奏不可能とされる。

抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)
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