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中国高速鉄道CRH2型電車(ちゅうごくこうそくてつどうCRH2がたでんしゃ)とは、中華人民共和国鉄道部(中国国鉄)が第6次在来線スピードアップのために日本の川崎重工業車両カンパニーから購入した高速鉄道車両である。日本のE2系1000番台新幹線電車がベースになっている。新幹線車両の日本国外への輸出は、台湾高速鉄道の700T型に次ぐものである。愛称は子弾頭(子弾=弾丸の意)。なお、外国からの技術移転を基にライセンス生産されている全てのCRH車両は「和諧号」(和諧=調和、ハーモニーの意)と呼ばれている〔中国の高速鉄道 七十七銀行、2010年8月6日〕。 == 経緯 == 中華人民共和国側は当初、CRHを自国製の高速鉄道車両としてアピールしていくと発表した。これは、中華人民共和国側の車両購入条件として“中華人民共和国へのブラックボックスのない完全な技術供与”があり、その技術も含めた購入のため、「自国の技術」と言い換えることができたためである。 この車両販売に際しては、台湾高速鉄道の主として車両を受注したJR東海が参加を見送り、逆に積極的だったJR東日本のE2系ベースの車両が納入された経緯がある。JR東海が参加を見送った理由は、 *中華人民共和国へ全ての技術供与をしなければならず、技術流出が懸念されること *技術供与により次回受注ができず、日本側への継続的な利益が見込めないおそれがあること *本来、新幹線は地上設備等も含めた総合システムとして運用されているものの、車両のみを販売すると安全を保証できないおそれがあること 等を懸念したためであった。 なお、新幹線電車が完成した時点で台湾では式典が行われたが、中華人民共和国では、式典を挙げることはなかった。また車両を引き渡す際も同国ではあまり報道されなかった。当時の日中間の政治的対立が影響したためである。 契約に基づく新幹線電車の編成数は60編成である。そのうち3編成は日本で製造され完全な形で引き渡された。6編成は部品の状態で引き渡され、中華人民共和国側でコンプリートノックダウンで生産された。残りの51編成は中華人民共和国の四方機車工場によりライセンス製造された。この契約内容は、日本以外へ発注されたCRH1・3・5型のものと同様である。また一部の高度な技術を要する部品については日本から輸出している。最初のCRH2A車両は2006年3月8日に引き渡された。中華人民共和国鉄道部は、第6次スピートアップの前に少なくとも37編成のCRH2を完成した〔 科技日報、2007年4月17日.〕。CRH2A型のモーターはE2系1000番台と同一であるが、電動車 (M) と付随車 (T) の構成(MT比)は 4M4T であることから、営業運転での最高速度はE2系1000番台 (8M2T) の最高速度 275 km/h(設計最高速度 315 km/h)より低い 250 km/h となっていた。 CRH2型は、2007年1月28日から在来線で運用が開始された。初日は上海南駅 - 杭州駅 (171 km) 間を5往復半、上海駅 - 南京駅 (303 km) 間を2往復運行したが、試運転も兼ねていたため最高時速は 160 km/h であった。 2007年12月には、CRH2の派生型の CRH2C が登場した。前照灯やパンタグラフカバーなどが増設され、内装も変更されている。また2008年の北京オリンピックに合わせて北京市と天津市を結ぶ京津都市間鉄道に投入された CRH2-300 は、6M2T にMT比を変更し、シーメンスICE3ベースのCRH3型電車とともに2008年8月1日より世界最速の 350 km/h 営業運転を開始した。鉄道部は「海外の先進技術を手本にしたが、国情に合わせて 70 % 以上の国産化を達成した」としている〔中国:北京-天津間の高速鉄道試乗会 350キロ国産技術、世界にPR 毎日新聞、2008年7月23日〕。 その後、JR東日本の協力範囲を超えた速度であること、川崎重工業の設計上の最高速度を大幅に超えていることから両者が中華人民共和国側に抗議し、「責任は求めない」との念書を取った。このため、2009年2月からこの路線ではすべてCRH3型を使用し、CRH2型車両は最高速度 250 km/h の他線区に転属することとなった〔[Part2] 日本の車両も健闘、しかし・・・・・・ 、朝日新聞GLOBE、2009年2月2日 G-3面〕。 2009年10月、中華人民共和国鉄道部は、川崎重工業が日本の新幹線技術を供与した同国の鉄道車両メーカーである南車青島四方機車車両との間で、CRH380A (CRH2-380 : 最高時速350キロの高速鉄道車両) 140編成を購入する契約を結んだ。車両は日本の東北新幹線「はやて」を基礎としているが、中国鉄道部の技術や海外から移転された技術を組み合わせて新たに設計・生産され、北京―上海、北京―広州などの区間で走る予定。2010年上半期から順次、車両を納入するという内容である。 2009年12月26日、湖北省武漢市と広東省広州市を結ぶ武広旅客専用線に、また2010年2月6日には河南省鄭州市と陝西省西安市を結ぶ鄭西旅客専用線にCRH2型車両が投入され、最高速度 350 km/h で営業運転を開始した〔Wuhan-Guangzhou High Speed Rail - 350km/h Run (武廣高速鐵路) - YouTube、2010年1月2日. 〕〔郑西高铁投入运营 全国春运进入第八天 - YouTube、2010年2月6日 〕。 中華人民共和国側はまた、日本を含む各国に対して、黒龍江省ハルビン市と遼寧省大連市を結ぶ哈大旅客専用線用の高速鉄道車両の開発の打診をしているという。これによると、当地の冬季における運用が氷点下 40 ℃ という過酷な環境になり、このような極限下において定期運行できる高速電車を自主開発するのが困難なためであるという。なお、日本の新幹線も氷点下 25 ℃ までは品質保証がなされているが、それ以下の気温となると新たな技術開発が必要であるという〔日本経済新聞 2007年2月26日〕。 2010年(平成22年)4月に、JR東海会長の葛西敬之が「中国の高速鉄道は安全性を軽視することで、限界まで速度を出している。技術も『外国企業から盗用』」と主張した。これに対し、中国側の何総工程師は「我々が求めている技術は、日本のような島国向けの技術とは異なると表明する国も多い」と主張した上で、「安全性が保証されている中国の高速鉄道技術は既に世界をリードする地位を獲得した」などと反論した。一般に、日本列島のような島国では急峻な地形に伴うトンネル・橋梁、小曲率半径の軌道の建設が重視されるのに対して、大陸では長い橋梁の建設や広範囲の洪水に対する対策が特に求められる。また、世界初の商用鉄道と地下鉄はいずれも島国で発展したものであり、現在、長さで世界1・2位の海底トンネルは島国の国内鉄道と、大陸と島国間の鉄道に用いられている。ただし、同じ大陸でもスイスのような山国は山岳鉄道については島国と同等かそれ以上の技術が必要とされる。 一方、中国鉄道部科学技術局長などを務めた周翊民は、中国紙『21世紀経済報道』に対し、「世界一にこだわり、設計上の安全速度を無視し、日独が試験走行で達成していた速度に近い速度での営業を命じただけで、中国独自の技術によるものではない」と暴露し、「自分の技術でないので問題が起きても解決できない。結果の甚大さは想像もできない」と指摘した。また米国議会の超党派諮問機関「米中経済安保調査委員会」は2011年10月26日、日本の新幹線技術の中国側の取得について「中国企業が外国技術を盗用した最も酷い実例」と明記した。これを裏付けるように2011年7月23日に浙江省温州市で、死者43人に負傷者190人以上を出す追突脱線事故が起きており、鉄道局長ら幹部3人が更迭されている〔「死者43人に負傷者は190人以上 鉄道局長ら幹部3人更迭」MSN産経ニュース、2011年7月24日。〕。 CRH2Eまでの派生型にはスノープラウがついている〔中国語版参照〕。 抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)』 ■ウィキペディアで「中国高速鉄道CRH2型電車」の詳細全文を読む スポンサード リンク
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