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中島義道 : ウィキペディア日本語版
中島義道[なかじま よしみち]
中島 義道(なかじま よしみち、1946年7月9日 - )は、日本の哲学者作家。元電気通信大学教授。マスコミ曰く「戦う哲学者〔中島義道『カイン』新潮文庫、88頁。〕」。専攻はドイツ哲学、時間論、自我論。イマヌエル・カントが専門。
== 経歴 ==
祖父は東京外国語学校フランス語科を卒業後、結婚してまもなく札幌北星学園を出たばかりのカトリック教徒の祖母を連れてカリフォルニア州サクラメントに渡る。時はゴールドラッシュの頃で、一攫千金を夢見た祖父は、皿洗いからスタートして農園を経営するまでになり、日本人成功リストに載る。一人息子であった父(当時7歳)を連れて、故郷の大分県宇佐市に里帰りした。そして、父は第一高等学校に合格し、東北帝国大学工学部に進む。卒業後、有り金すべてをはたいて、戦後日本を復興させるような企業を目指す。一方の母は山口県下関市の出身で、18歳の時に関門海峡を渡って江戸時代からの庄屋であった父の実家に嫁いだが、姑にひどくいじめられる。しかし、母の実家は絶対に戻ってくることを許さなかった。父はやがて福岡県門司市に仕事場を設るが、当時感染が恐れられていた肺結核にかかる。二十歳を超えたばかりの母が、質屋通いをするほどの極貧を強いられていた。
そんな中、工場兼自宅である馬小屋のような所で生まれ、生後間もなく若松市に転居。数年後、父が大企業の管理職に収まり、東京都世田谷区尾山台に転居。品川区大井町大田区馬込を経て、1953年夏から川崎市中原区市営住宅に育つ。
公立中学から東京教育大学附属駒場高等学校の入試に失敗して神奈川県立川崎高等学校に進学。東京大学入学時点では法学部進学課程の文科一類に在籍。一度は法学部進学の手続きをとったものの、「自分が明日死ぬとしたら、いま何を学びたいか」を考えるとそれはどうしても法律ではなく哲学であるという結論に到達。1年留年した後、かねてその著書から衝撃を受けていた大森荘蔵の招きで教養学部科学史科学哲学分科に進んだものの、物理学の理解に困難を感じ、再び留年。カントに関する論文を大森に提出した翌年、本郷の哲学科の大学院に進んだが陰鬱な雰囲気に耐えられなくなり、遊びほうけて修士論文を書けずに退学。司法試験公務員試験の受験を目指して法学部に学士入学したが、哲学への心残りを捨てられず、法学部卒業後は哲学の修士課程に入学。1年でカントについての修士論文を仕上げる。こうして、学士号2つと修士号1つを得て東大から離れたときには、大学入学から12年が経っていた。
その後、予備校の英語講師として就職するが、2年半にして講師としての人気の無さや自己の現状に絶望し、33歳でウィーン大学に私費留学する。当初は両親の仕送りに頼って生活したが、やがて現地の日本人学校で現地採用の英語教師となる。ウィーン滞在2年に近づく頃、日本人学校の教師である女性と結婚。1983年にウィーン大学で、やはりカントについての論文(『カントの時間構成の理論』)で哲学博士号を取得。翌年、東大教養学部助手に採用されるが、そこで上司である教授(谷嶋喬四郎)から執拗ないじめを受ける〔中島義道『孤独について』(文春新書、1998年)、『東大助手物語』(新潮社、2014年)〕。のち、帝京技術科学大学助教授を経て、1995年4月より2009年まで電気通信大学教授。
『カントの人間学』『哲学の教科書』『ウィーン愛憎』などで著述界に登場する。これらの著作ではカント哲学の読み解き、また留学体験を通じての優れたヨーロッパ文明批判を平明な文体で展開した。後述のように中島の才能を早くから認め、大手出版社などに対し物書きとして推薦したのは西尾幹二である。
カント哲学やヨーロッパ文明批判以外に、日本社会における騒音・景観の無頓着さへの批判でも知られる。1996年、様々なありがた迷惑な騒音を是とする現代日本に異議を申し立てた、エッセイ『うるさい日本の私』により、「戦う哲学者」として広く認知される(タイトルは、川端康成の『美しい日本の私―その序説』と、大江健三郎の『あいまいな日本の私』の、2人のノーベル文学賞受賞記念講演のパロディである。この「うるさい」ということばは、「日本」だけでなく「私」をも形容しているのだ、と本人自身が述べている)。
現在は哲学を志す人のための『哲学塾カント』を開設している。

抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)
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