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中川八洋 : ウィキペディア日本語版
中川八洋[なかがわ やつひろ]

中川 八洋(なかがわ やつひろ、1945年1月20日 - )は、日本の政治学者、保守主義者。筑波大学名誉教授。外交史・戦史を含む国際政治学、英米系政治哲学および憲法思想、“皇位継承学”など。
== 人物 ==
福岡県福岡市生まれ。1963年福岡県立修猷館高等学校卒業。1967年東京大学工学部航空学科宇宙工学コース卒業。スタンフォード大学政治学科大学院修了。科学技術庁勤務の後、1980年筑波大学助教授、1987年筑波大学教授、2008年3月定年退官、名誉教授。財団法人日本科学協会理事。
初めは比較政治学を研究していたが、1979年12月のソビエト連邦アフガニスタン侵攻を機に国際政治学の研究を開始し研究対象を広げた。国際政治学に関しては、一貫して日本の核武装を主張している。しかし盲目的に核武装を主張する人物に対しての警戒感も示しており、自身はあくまで様々な条件を考慮した上での学術的な前提の制限を課していると主張している。中川の核武装論は、第一にロシア、第二に中国、第三に北朝鮮、という三つの「仮想敵国」の特定と、その核脅威の特定とを前提としたうえでのものであり、中川自身、核武装論にはこの二つの要素が不可欠だと説き、それのない核武装論も核武装反対論も、無知をさらけ出した幼稚な思いつきにすぎないと述べる〔『日本核武装の選択』〕。
中川の核戦略論は、『現代核戦略論』『核軍縮と平和』『日本核武装の選択』にまとめられている。さらに、2009年に発表した『地政学の論理』において、独自の「核抑止の地政学」を提唱している。国防の第一主敵だとするロシア(ソ連)については、ロシアをテーマとして批判する書を6冊著しており、また、日本の軍備の大幅増強と日本国憲法第9条の改正を、ソ連邦崩壊後も主張し続けている。なお中川は、1989年の「東欧解放」の3か月前頃、「ソ連はロシアに回帰し二十年を経れば新ロシア帝国として再び強大化して日本を脅威する」と予測した〔『蘇えるロシア帝国』〕。
英米系地政学ではハルフォード・マッキンダーニコラス・スパイクマン、外交政策ではウィンストン・チャーチルロナルド・レーガンマーガレット・サッチャー、そして昭和天皇、保守主義の哲学ではエドマンド・バークエドワード・コークアレクサンダー・ハミルトンを特に尊敬し、研究対象としている。1999年に、イギリスのベコンズフィールドで、秘匿されてきたバークの墓を確認した(産経新聞1999年11月8日)。軍人ではフィンランドのマンネルハイム元帥を「師」と仰いでいる〔『民主党大不況』「附記」など参照。〕。
1984年には、独自の改憲案を発表し、1991年にはその改訂版を出版した(いずれも『新・日本国憲法草案』)。2004年の『国民の憲法改正』は、1991年の憲法改正案とは「全く別な新しい憲法案と憲法理論をまとめたもの」である〔同書「あとがき」〕。1989年の昭和天皇崩御を機に皇位継承学の研究を開始(学術分野として確立されたものではない)。2005年から皇位継承問題に関して積極的に発言。旧皇族の皇籍復帰と皇室典範の一部改正(「皇族会議」の復活など)とによる、男系男子主義の絶対維持を主張している。
政治哲学に関しては、1980年代はマルクス・レーニン主義に対する批判的研究をしていたが、1992年から英米系政治哲学に研究の軸足を移した。2000年に入り、フランクフルト学派社会学を含め、ポスト・モダン思想、フェミニズムポストコロニアリズムにまで研究対象を広げ、これらの思想の危険性を訴えている。『與謝野晶子に学ぶ』では、晶子を「日本随一の思想家」と評価し、フェミニストと対置して、晶子の思想を論じ、国内では山川菊栄平塚雷鳥大澤真理坂東眞理子、国外では英国のアン・オークレー、米国のジョン・マネーや初期のベティ・フリーダン、フランスのバダンテールらフェミニストの思想や、「ジェンダー・フリー」論、過激性教育を批判した。同書ではまた、疫学者三砂ちづるの『オニババ化する女たち』(光文社新書、2004年)やエッセイスト酒井順子の『負け犬の遠吠え』(講談社、2003年)を高く評価している。『福田和也と魔の思想』では、福田和也保田與重郎磯崎新浅田彰ヘルダーリンなどをケースとした、ポスト・モダン思想を批判した。中川の英米系政治哲学概論は、『正統の哲学 異端の思想』と『保守主義の哲学』にまとめられている。
“皇位継承学”についての研究成果を、「法の支配」を基軸とする英米系政治哲学・憲法学や、大宝律令を含む日本法制史の知見を総合した三部作『皇統断絶』『女性天皇は皇室廃絶』『悠仁「天皇」と皇室典範』にまとめた。
1980年代以降、ソ連国家保安委員会第一総局(現・ロシア連邦保安庁)の非公然情報戦(「積極工作」)を研究し、近衛文麿が“ソ連と通じて日本の共産化を図った”ことを論証しようとしている。山本五十六については、日本の敗戦と廃墟を無意識に願望していたのではないかとの仮説をたてているが、共産主義者ではないと断定している。中川は、大正時代以降の帝国陸軍には共産主義者が跋扈していた一方、陸軍からは優秀な将軍が多く出ているが、帝国海軍には共産主義者は少なかったものの、日本を敗戦に導いた腐敗体制があり、優秀な提督が出なかったと考察する。また、特攻作戦を、若き日本軍人に対する冷酷非情な作戦として、批判・否定する〔『近衛文麿とルーズヴェルト』(『大東亜戦争と「開戦責任」』)、『山本五十六の大罪』〕。
ジャン・ジャック・ルソーを、バークの保守思想と対置する形で非難する(中川は、ルソーが歴史・伝統・慣習の破壊/家族解体/全体主義体制などの唱導を初めてなしたとする。『正統の哲学 異端の思想』)。
著書『脱原発のウソと犯罪』で西尾幹二を中傷したとして西尾から名誉毀損で提訴されている〔お知らせ―中川八洋氏に対する名誉毀損裁判の途中経過報告 西尾幹二のインターネット日録 2014年8月13日。西尾に同様に提訴されたオークラ出版とは和解成立〕。一方の中川は西尾を「歴史の偽造屋」「妄言屋」と貶し、小堀桂一郎小田村四郎櫻井よしこ高橋史朗江藤淳渡部昇一と並べ「自称民族主義者の朝日チルドレン」と蔑んでいる〔西尾幹二の妄言狂史 中川八洋掲示板〕。

抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)
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