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中西 徹(なかにし とおる、1958年8月1日 - )は、日本の経済学者。東京大学大学院総合文化研究科・教養学部教授。専門分野は開発経済学、慣習経済論、地域研究(フィリピン)。特にフィリピン都市貧困地区の諸問題に関する著作が多い。経済学博士(東京大学)。国際大学国際関係学研究科助手、北海道大学経済学部助教授、東京大学経済学部助教授、東京大学教養学部助教授を経て現職。東京都生まれ。 == 略歴 == 東京都立石神井高等学校卒、1982年上智大学経済学部卒業 *1989年 東京大学大学院経済学研究科博士課程修了(経済学博士) *1989年 国際大学大学院国際関係学研究科講師 *1991年 北海道大学経済学部助教授 *1996年 東京大学経済学部助教授 *2000年 東京大学教養学部助教授 *2003年 東京大学大学院総合文化研究科・教養学部教授(経済学研究科兼担) *2007年 東京大学教養学部総合社会科学科長 を経て現職。 == 人物 == スラム経済の研究で著名であり、今でこそスラム研究は盛んになりつつあるが、国内で初めて参与観察法によって発展途上地域のスラムに立ち入り、現地の経済活動を分析した人物である。その成果は氏の博士論文「フィリピンの都市インフォーマルセクター」(東京大学経済学部博士論文、1989年)をもとにした『スラムの経済学』(東京大学出版会、1991年)に表された。同書は、現在でもなお、開発経済や都市研究などの分野において読まれ続けている。 上智大学時代には兼光秀郎教授のもとでミクロ経済学を学修し、その後、東京大学大学院ではフィリピン経済・低開発経済論研究者であった高橋彰教授(故人、元アジア経済研究所理事)に師事して発展経済学やフィリピンの農村経済、都市労働市場、金融などを学ぶ〔中西徹(1991)『スラムの経済学』,東大出版会,pp.v- vii〕。 特に、ルイス=ラニス=フェイモデルに代表される二重経済論や発展途上国の労働市場を説明する農工間資源移転モデルに詳しい。しかし、経済学の論理実証主義の立場に懐疑的な立場をとり、現地への直接的接近から低開発経済の要因を探求するため、フィールドワークを実施。その後は、スラム経済に代表される慣習経済や貧困問題に関心を移し始めた。国際大学、北海道大学で勤務したのち、1996年に高橋彰が東京大学を退官の際、後継として東京大学経済学部助教授に就任。その後、同大学教養学部に異動した。 == 専門 == 経済理論の実体的に理解とその批判に立って描かれた「スラムの経済学」以来、フィールドワークを用いた現地調査、統計データの解析、さらには数理社会学や経営学における社会ネットワーク分析論など多様なアプローチを活用して、経済発展・貧困緩和過程における慣習経済の広がりを労働市場、姻族関係や農工間人口移動などを手がかりに研究している。近年は経済学から社会学や社会人類学をも包含する広がる学際的な研究を行っており、応用経済学としての開発研究と地域研究との止揚を目指した研究に取り組んでいる。 == 叙勲歴 == 発展途上国研究奨励賞(アジア経済研究所、1992年)。 == 主な著書・編著書 == *「銀行金利引き上げ措置と都市伝統部門」,伊藤和久・高坂章・田近栄治編『経済発展と財政金融』,アジア経済研究所,1985年 *「フィリピンにおける都市非公式部門」,『アジア経済』Vol29, No.1-2,アジア経済研究所 *「『暗黙の契約』と都市インフォーマル部門の経済理論」『社会科学ジャーナル』第28巻第2号、国際基督教大学、1990年 *“The Labour Market in the Urban Informal Sector: The Case of the Philippines”,''The Developing Economies'', Vol.28, No.3,Institute of Developing Economies, 1990. *『スラムの経済学』, 東京大学出版会,1991年 *「東南アジアにおける農村都市間人口移動と都市化」中兼和津次編『講座:現代アジア:近代化と構造変動』 東京大学出版会, 1994年 *「フィリピンにおける都市インフォーマル部門の変容」『経済学論集』第61巻第6号、1995年 *“Comparative Study on Informal Labor Markets in Urbanization Process,” ''Developing Economies'', vol.34, no.4., 1996. *「二重構造と失業」,アジア経済研究所(朽木昭文・山崎幸治・野上裕生)編『テキストブック開発経済学』,有斐閣,1998年。 *「貧困と慣習経済」, 絵所秀紀ほか編『開発と貧困』, アジア経済研究所, 1998年 *「発展途上国の貧困と人権」,恒川惠市編『開発と政治』岩波書店 1998年 *「市場経済化における慣習経済」,中兼和津次ほか編『市場の経済学』 有斐閣 1999年 *『アジアの大都市:マニラ』(小玉徹,新津晃一と共編),日本評論社,2001年 *「都市化と貧困」,中西徹・小玉徹,新津晃一『アジアの大都市:マニラ』,日本評論社,2001年 *“Building Bridge: Poverty, Customs and Environmental Politics,”in Tatsuo Omachi and Emerlinda R. Ramon eds., ''Metro Manila: In Search of a Sustainable Future'', University of the Philippine Press, 2002. *“Migration and Environmental Issues in Economic Development,” in Tatsuo Omachi and Emerlinda R. Ramon eds., ''Metro Manila: In Search of a Sustainable Future'', University of the Philippine Press, 2002. *“Hidden Community Development among the Urban Poor: Informal Settlers in Metro Manila,” ''Policy and Society'', vol. 25 no.4., 2006. *「地域社会と人間の安全保障:マニラ貧困層におけるコミュニティの出現」,『アジ研ワールド・トレンド』 12(1),日本貿易振興機構アジア経済研究所研究支援部,2006年 *「フィリピンのパズル――有利な条件を有しながら、なぜ「発展」しないのか」,『外交フォーラム』№222,都市出版,2007年 *「深化するコミュニティ」,高橋哲哉・山影進編『人間の安全保障』,東京大学出版会,2008年 *「マニラ:都市貧困層の社会ネットワーク」, 藤巻正己他編『新・世界地理』,朝倉書店,2009年 など。 == 関連人物 == * 石川滋 * 高橋彰 * 速水佑次郎 抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)』 ■ウィキペディアで「中西徹」の詳細全文を読む スポンサード リンク
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