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辰砂(しんしゃ、cinnabar)は硫化水銀(II)(HgS)からなる鉱物である。別名に賢者の石、赤色硫化水銀、丹砂、朱砂などがある。日本では古来「丹(に)」と呼ばれた。水銀の重要な鉱石鉱物。 == 概要 == 不透明な赤褐色の塊状、あるいは透明感のある深紅色の菱面体結晶として産出する。『周禮』天官冢宰の鄭注に「」のひとつにあげられる〔中国医学・日本漢方における〈毒〉 〕など、中国において古くから知られ、錬丹術などでの水銀の精製の他に、古来より赤色(朱色)の顔料や漢方薬の原料として珍重されている。『史記』巻128貨殖列伝に「」、巴の寡婦清、その先んじて丹を得るも、しかしてその利を擅(ほしいまま)にすること数世と、辰砂の発掘地を見つけた人間が巨利を得た記述がある。 中国の辰州(現在の湖南省近辺)で多く産出したことから、「辰砂」と呼ばれるようになった。日本では弥生時代から産出が知られ、いわゆる魏志倭人伝の邪馬台国にも「其山 丹有」と記述されている。古墳の内壁や石棺の彩色や壁画に使用されていた。漢方薬や漆器に施す朱漆や赤色の墨である朱墨の原料としても用いられ、古くは吉野川上流や伊勢国丹生(現在の三重県多気町)などが特産地として知られた。平安時代には既に人造朱の製造法が知られており、16世紀中期以後、天然・人工の朱が中国から輸入された。現在では奈良県、徳島県、大分県、熊本県などで産する。ただし、現在の日本では水銀及びその化合物は、全量廃乾電池などのリサイクル(および外国からの金属水銀の輸入)で賄われており、鉱石からの製錬は行われていない。 辰砂を空気中で 400–600 ℃ に加熱すると、水銀蒸気と亜硫酸ガス(二酸化硫黄)が生じる。この水銀蒸気を冷却凝縮させることで水銀を精製する。古代から水銀製錬の原理は変わっておらず、時代を経てレトルト炉や重油を用いたロータリーキルン炉に変更していったが、これらは主として生産能力と従事者の安全性に関する改良であった。炉から放出された水銀蒸気を含むガスは脱硫装置を経て、「コンデンサー」と呼ばれる冷却・凝集装置に集められる。コンデンサーは、黒鉛製のパイプを楯状に複数立てた、上の穴が開けられていない煙突のような独特の構造であり、ガスはここに滞留して温度が低下していくうちにガス中に含まれている水銀が液化し、パイプの内側に付着する。定期的にパイプ内部には水が通されており、水によって「洗い流される」形で底部に落とされる。また、同時に「スート」と呼ばれる、水銀及び不純物を含む塵も回収され、こちらからも水銀が採取される。回収された水銀は、水と分離した後に濾過および硫酸や硝酸による洗浄を経て、粗製水銀として製品化される。水銀及び有害成分を除去されたガスは煙突を通って大気に放出された。水銀鉱山や製錬所にはこのコンデンサーが必ず立てられており、シンボル的存在となっていた。 硫化水銀(II) + 酸素 → 水銀 + 二酸化硫黄 : また、押印用朱肉の色素としても用いられる。 抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)』 ■ウィキペディアで「辰砂」の詳細全文を読む 英語版ウィキペディアに対照対訳語「 Cinnabar 」があります。 スポンサード リンク
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