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九六式艦上戦闘機 : ウィキペディア日本語版
九六式艦上戦闘機[きゅうろくしきかんじょうせんとうき]

九六式艦上戦闘機(きゅうろくしきかんじょうせんとうき)は、日本海軍の艦上戦闘機である。海軍初の全金属単葉戦闘機。試作機は「九試単座戦闘機」。連合軍のコードネームは“Claude”(クロード)。後継機は零式艦上戦闘機
== 特徴 ==
設計に際し高速と空戦時の運動性に重点が置かれ、空気力学的洗練と重量軽減が追求された。堀越技師によれば、後の零式艦上戦闘機よりも快心の作であったと言う〔続・ヒコーキの心 佐貫亦男 光人社NF文庫 205頁〕。
海軍制式機としては最初の全金属製低翼単葉機となった。設計当時、戦闘機を中心に主流となっていた張り線を使用した薄翼を採らず、高速時の空気抵抗減少のために張り線の無い厚翼を採用した。主翼外形は曲線を繋いだ楕円翼とした。また、国産実用機として初めてフラップを採用している。
空気抵抗の削減のため、世界初のHe 70に初飛行で遅れること3年、九六式陸上攻撃機と並び日本で初めて沈頭鋲を全面採用した。金属板の締結に使っていた従来のリベット(鋲)では金属板表面に頭が突出し、高速で飛ぶ航空機における重大な空気抵抗の原因となっていた。これに対して沈頭鋲はかしめの際に皿頭が金属板を凹ませながら締結するため、機体表面を平滑に仕上げることが可能となった。なお、九試単戦では慣れない鋲打ち作業で出来た表面の刺子様の窪みをパテで埋めて灰緑色塗料を厚めに塗った後に磨きを掛けている。〔角川文庫『零戦』37頁〕〔『丸』平成25年8月別冊『堀越二郎 零戦への道』所載「九六式艦上戦闘機の塗粧」片渕須直〕。
主脚は構造重量の増大や未舗装の飛行場での運用想定を勘案して引き込み式とはせずにできる限り小形とした固定脚とし、空気抵抗を抑えるため流線型のスパッツで覆った。これらの技術を盛り込んだ結果、当時の固定脚機の水準を超え、海軍の正式飛行試験において高度3,200m、正規重量での最高速度450km/hと公認される速度を発揮するに至った。
九六式艦戦の設計における最大の特徴は翼端の「ねじり下げ」を戦闘機で初めて採用したことである。
翼弦 (翼断面の前縁と後縁を結ぶ線分) と一様流のなす仰角が飛行中の機首上げなどで大きくなるにつれ発生する揚力も大きくなるが、ある範囲を超えると翼上面の気流が剥離する失速に至る。テーパー翼 (先細翼) では翼弦長の短い翼端部から失速が始まり胴体側に広がっていく。また、一様流と翼弦のなす角度により仰角が決まるため単発機でも多発機でもプロペラ後流の外にある翼端部は失速が早く発生する傾向がある。特に離着陸前後の大仰角、低速飛行状態での翼端部の失速はモーメントの大きさから機体の横安定が損いやすいため危険視される。
翼端失速対策として機体中心線に対して翼弦のなす角度を翼端に寄る程小さくする「ねじり下げ」を行うと翼端部の仰角が小さくなる分失速が遅れることになる。すでに着陸性能改善のための翼端失速対策としてユンカース社で実用に供していることが知られていたが、これを空戦時の高仰角飛行に対して導入したものである。
前線の飛行場などで、着陸時に水溜りの水が尾翼に当たって機体が転覆する場合があった。九六式の操縦席はキャノピーのない開放式であるため、転覆した場合など、操縦席が潰れて、パイロットが重傷を負う場合があった。これを防ぐため、着陸時に油圧フラップを操作すると、連動して操縦席後方から保護棒が突き出すようになっていた。このため万一転覆しても、保護棒が先に接地することで空間が確保され、パイロットの安全が保たれた。
広大な中国戦線での運用を考慮し、九六式艦上戦闘機では航続距離の短さを補うための増槽九〇式艦上戦闘機九五式艦上戦闘機に次いで使用した。形状は前期型では胴体に密着するスリッパ型、後期型では零戦同様の涙滴型の落下式増槽であった。
武装は、当時の戦闘機として一般的な7.7 mm機銃 2丁を計器板上部に装備した。照準器はスコープ式である。
他にはフランス製のドボワチン D.510を改装したAXD1を元に、2機の九六式二号一型の発動機をイスパノ・スイザ12Xcrs(水冷12気筒)に換装しイスパノ・スイザ HS.404 20mmモーターカノンを搭載して九六式三号艦戦(A5M3a)と命名し試験を行ったが、第一線からの調達要望に抗し切れず発動機を寿二型改三A(寿三型)に再換装し前線に送り出された。また、2機の九六式一号の主翼にエリコンFF 20 mm 機関砲を搭載したが、砲自体の問題と発射時のヨーイングの問題から試験を中止している。〔零戦の遺産 光人社NF文庫〕

抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)
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