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人擁法 : ウィキペディア日本語版
人権擁護法案[じんけんようごほうあん]
人権擁護法案(じんけんようごほうあん)は、日本法律案である。2002年平成14年)、第154回国会(常会)で小泉内閣により提出された〔人権擁護法案(擁護法案) 経過 本文 、第154回国会(常会)閣法56号、衆議院。〕。
本項目では、2005年(平成17年)、第162回国会(常会)で、民主党が策定して国会に提出した「人権侵害による被害の救済及び予防等に関する法律案」(人権侵害救済法案、人権救済機関設置法案)〔人権侵害による被害の救済及び予防等に関する法律案(経過 本文 )、第162回国会(常会)衆法33号、衆議院。〕、および、2012年(平成24年)9月19日野田内閣が閣議決定した「人権委員会設置法案」(設置法案)〔人権委員会設置法案及び人権擁護委員法の一部を改正する法律案について 、法務省人権擁護局、2012年。〕等についても記す。
なお、一連の法案は、人権擁護の法制度拡充につながるとの賛成意見もあるが、一方で、裁判所の令状無しでの出頭命令、家宅捜索、押収が可能なため逆差別につながり恣意的な運用によって言論の自由を脅かすとの反対意見もある。
== 概要 ==
人権擁護法案は、人権侵害によって発生する被害を迅速適正に救済し、人権侵害を実効的に予防するため、人権擁護に関する事務を総合的に取り扱う機関の設置を定めた法案である。この点については、人権侵害救済法案、人権救済機関設置法案、人権委員会設置法案も同様である。この人権擁護機関について、人権擁護法案〔、人権委員会設置法案〔では合議制の人権委員会とし、国家行政組織法3条2項の規定に基づく行政委員会(いわゆる三条委員会)として法務省の下に設置すると定めた〔人権擁護法案5条1項、人権委員会設置法案4条とも、国家行政組織法3条2項の規定に基づく行政委員会として「人権委員会」の設置を定める。ただし、人権擁護法案では法務省外局ではあるものの独立性が高い「法務大臣の所轄に属する」機関としたのに対し(擁護法案5条2項)、人権委員会設置法案では人権委員会を単に「法務省の外局」としている(設置法案4条)。〕。
人権委員会及び法務局地方法務局は、人権相談を受け付け、人権侵害による被害の申し出があったときには調査を開始する。この調査は、人権委員会の委員、人権委員会事務局の職員、人権委員会から委嘱された人権擁護委員〔人権擁護法案では人権擁護委員の規定を置き、従来の人権擁護委員法は廃止することとされたのに対して、人権委員会設置法案には人権擁護委員の規定を置かず、従来の人権擁護委員法を一部改正することとされた。人権擁護法案による人権擁護委員には国籍条項を置かず、人権擁護委員法の一部改正による人権擁護委員は従来と同じく選挙権を有する者として日本国民に限り、国家公務員法の適用を受けるものとした。〕、法務局・地方法務局の職員が実施する。さらに、人権擁護法案では、過料等の罰則によって実効性を担保した特別調査の手続を定めた(なお、人権委員会設置法案では、この特別調査の手続は定めていない。)。調査の結果、人権侵害行為が認められた場合には、人権委員会は、申出者に対する助言等の援助、申出者と関係者との関係の調整、人権侵害行為者に対する事理の説示・勧告、関係行政機関に対する通告、犯罪に該当する行為の告発、第三者に対する要請等の救済措置を行う(なお、人権委員会設置法案では、勧告の公表は公務員による人権侵害行為の場合に限られている。)。また、人権委員会は、人権侵害行為に係る事件について、当事者から申し出がある場合には、調停委員会・仲裁委員会を設ける。調停委員会・仲裁委員会には、人権委員会が任命する人権調整委員の中から事件ごとに調停委員・仲裁委員を指名し、調停・仲裁を行わせる。
「人権擁護法案」は2002年平成14年)の第154回国会(常会)に小泉内閣が提出し、その後継続審議を経て、2003年(平成15年)10月の衆議院解散により廃案となった。しかし、廃案後も法務省自民党民主党内などで引き続き検討が行われた。2005年(平成17年)の第162回国会(常会)には民主党が「人権侵害による被害の救済及び予防等に関する法律案」(人権侵害救済法案、人権救済機関設置法案)を策定して国会に提出したが、審議未了廃案となった。2012年(平成24年)、野田内閣は人権擁護法案を修正した「人権委員会設置法案」等を閣議決定した。
人権擁護法案は、独立性の高い人権擁護機関である人権委員会によって、広汎な「人権侵害」に対する迅速で実効的な人権救済行政を行うことが期待される一方で、対象とする「人権侵害」の定義が広範・曖昧なために、人権委員会が独走し、行き過ぎた権限行使が行われるのではないかと危惧されている。人権擁護法案が提出された当初、主に報道機関と文筆家らが、人権侵害を理由として幅広く表現規制されると憂慮し、抗議活動が行われた。その後、「人権侵害」の定義が曖昧であることや、人権擁護委員に国籍条項がないこと、調査の実施や勧告の公表によっても過大な不利益が生じうること、調査拒否に対して過料を課す「特別調査」が強制調査に当たりうること、人権委員会の独立性が高すぎることなど、法案の様々な点を問題視する意見も現れた。
人権委員会設置法案では、これらの意見を踏まえて一部の修正がなされたものの、逆差別や報道統制、言論の自由を脅かす危険性があるとの理由から、なお反対意見は根強い(''人権擁護法案に対する批判、反対意見''を参照)。

抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)
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