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抽象代数学において、付値環(ふちかん、)とは、整域 ''D'' であって、その分数体 ''F'' のすべての元 ''x'' に対して、''x'' か ''x'' −1 の少なくとも一方が ''D'' に属するようなものである。 体 ''F'' が与えられたとき、''D'' が ''F'' の部分環であって、''F'' のすべての 0 でない元 ''x'' に対して ''x'' か ''x'' −1 が ''D'' に属しているとき、''D'' を 体 ''F'' の付値環(a valuation ring for the field ''F'')または座 (place of ''F'') という。この場合 ''F'' は確かに ''D'' の分数体であるので、体の付値環は付値環である。体 ''F'' の付値環を特徴づける別の方法は、''F'' の付値環 ''D'' は ''F'' をその分数体としてもち、そのイデアルは包含関係で全順序づけられている、あるいは同じことだが、その単項イデアルが包含関係で全順序付けられていることである。とくに、すべての付値環は局所環である。 体の付値環は支配(dominance)あるいは細分(refinement)によって順序を入れた体の局所部分環の集合の極大元である、ただし : かつ ならば、 は を支配する〔Efrat (2006) p.55〕。 体 ''K'' のすべての局所環は ''K'' のある付値環によって支配される。 任意の素イデアルにおける局所化が付値環であるような整域はプリューファー整域と呼ばれる。 == 例 == * 任意の体は付値環である。 * 有理整数環 Z の素イデアル (''p'') における局所化 Z(''p'')。これは分子が任意の整数で分母が ''p'' で割り切れないような整数であるような有理数からなる。分数体は有理数体 Q である。 * マクローリン級数(0 におけるテイラー級数展開)をもつ、全複素平面上の有理型関数の環は、付値環である。分数体は平面全体で有理型な関数である。''f'' がマクローリン級数をもたなければ 1/''f'' がもつ。 * 任意に与えられた素数 ''p'' に対して、p-進整数環 Z''p'' は、''p''-進数 Qp を分数体としてもつ局所環である。p-進整数環の整閉包 Z''p''cl はまた局所環であり、その分数体は Q''p''cl(''p''-進数体の代数的閉包)である。 Z''p'' と Z''p''cl はともに付値環である。 * k を順序体とする。k の元は、2つの整数の間にある ''n''<''x''<''m'' とき、有限である(finite)という。そうでないときは無限大である(infinite)という。k の有限な元全体の集合 ''D'' は付値環である。''x'' ∈ ''D'' かつ ''x''−1∉''D'' であるような元 ''x'' 全体の集合は無限小である元全体の集合である。''x''∉''D'' かつ ''x''−1∈''D'' であるような元 ''x'' は無限大である(infinite)という。 * 超実数体 *R(これは実数を含む順序体である)の有限超実数からなる部分環 ''F'' は *R の付値環である。F は普通の実数から無限小異なるすべての超実数(これはある普通の整数 ''n'' に対して −''n'' < ''x'' < ''n'' であるような超実数 ''x'' と言っても同じである)からなる。有限超実数を無限小超実数のイデアルで割った剰余体は実数体と同型である。 抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)』 ■ウィキペディアで「付値環」の詳細全文を読む スポンサード リンク
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