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光ピンセット(ひかりピンセット)は、集光したレーザー光により微小物体(おもに,細胞などを含む透明な誘電体物質)をその焦点位置の近傍に捕捉し、さらには動かすことのできる装置および技術である。捕捉するための力は屈折率の違いにより生じ、典型的にはピコニュートン程度である。この技術は、近年、とくに生物学やマイクロマシニングの研究において成果を挙げている。 ==歴史と発展== 光学的手法による微小物体の操作理論がベル研究所のによって1970年代に初めて報告された〔 Ashkin, A. "Phys. Rev. Lett. 24, 156-159" , (1970) 〕。数年のち、アシュキンらは最初の実験を行い、顕微鏡下において微粒子を光線照射によって3次元的に捕捉することに成功した〔 A Ashkin, J M Dziedzic, J E Bjorkholm and S Chu, Opt. Lett. 11, 288-290, 1986. 〕。 1986年、スティーブン・チューはレーザー冷却の論文において光ピンセットに言及した(1997年、チューはレーザー冷却における研究によってノーベル物理学賞を受賞した)。インタビューにおいてチューはアシュキンを「原子捕捉・光ピンセットの先駆者」と評した。アシュキンは10-10000 nm径の微粒子の捕捉を可能にしたが、チューはこれをより発展させ、0.1 nm径の捕捉を可能とした。 1980年代、アシュキンらはタバコモザイクウイルスおよび大腸菌の操作を通じて、光ピンセットの生物学への適用を初めて行った〔 Ashkin, A. et al "Science vol. 235, iss. 4795, pp. 1517" (1987)〕。1990年代には、カルロス・バスマンテ、ジェームズ・スプディッチ、スティーブン・ブロックらがこの分野に参入し、光ピンセット・レーザー分光学・一分子細胞生物学の発展に寄与した。 この過程では分子モーターの発見など画期的な発見がなされ、生物物理学などの分野が飛躍的に発展した。 2003年には光ピンセットを用いた細胞の整列に成功した。これには各細胞の光学的特徴が利用された〔 Macdonald MP, Spalding GC, Dholakia K, "Microfluidic sorting in an optical lattice. , Nature (2003); 421: 421-424. 〕 〔 Koss BA, Grier DG, "Optical Peristalsis" 〕。2004年にはによって、これまで高価・複雑であった光ピンセットの小型化・低価格化を狙ったDLBT (Diode Laser Bar Trapping)が開発された〔 Applegate, Jr. R. W. et al Optics Express vol. 12, iss. 19, pp. 4390 (2004)〕。光ピンセットは今日、細胞骨格の操作、生体高分子の粘弾性測定、細胞操作などに利用されている。 抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)』 ■ウィキペディアで「光ピンセット」の詳細全文を読む スポンサード リンク
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