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角度(かくど、)とは、角(かく、)の大きさを表す量・測度のことである。なお、一般の角の大きさは、単位の角の大きさの実数倍で表しうる〔。角およびその角度を表す記号としては ∠ がある。これは角記号(かくきごう、)と呼ばれる。 単に角という場合、多くは平面上の図形に対して定義された平面角(へいめんかく、)を指し、さらに狭義にはある点から伸びる2つの半直線(はんちょくせん、)によりできる図形を指す。平面角の角度は、同じ端点を持つ2つの半直線の間の隔たりを表す量といえる。2つの半直線が共有する端点は角の頂点(かくのちょうてん、)と呼ばれ、頂点を挟む半直線は角の辺(かくのへん、)と呼ばれる〔〔〔。また、直線以外の曲線や面などの図形がなす角の角度も、何らかの2つの直線のなす角の角度として定義される。より広義には、角は線や面が2つ交わって、その交点や交線の周りにできる図形を指す。線や面が2つ交わって角を作ることを角をなすという。ここでいう面は通常の2次元の面に限らず、一般には超平面である。 角が現れる基本的な図形としては、たとえば三角形や四角形のような多角形(たかくけい、)がある。特に三角形は平面図形における最も基本的な図形であり、すべての多角形は三角形の組み合わせによって表現することができる。また、他にも単純な性質を多く持っているため、様々な場面で応用される。有名なものは余弦定理(よげんていり、)や、三角形の辺の比を通じて定義される三角関数(さんかくかんすう、)などがある。余弦定理と三角関数は、三角形の角と辺の間に成り立つ関係を示したもので、これらの関係を利用して、三角形の辺の長さからある角の大きさを求めたり、大きさが既知の角から辺の長さや長さの比を求めることができる。このことはしばしば三角形の合同条件(さんかっけいのごうどうじょうけん、)としても言及される。 物理学など自然科学においては、量の次元が重要な役割を果たす。例えば、辺の長さや弧の長さは物理量として「長さ」の次元を持っているが、国際量体系において、角度は辺の長さの比などを通じて定義される無次元量であるとしている。角度が無次元であることは、直ちに角度が単位を持たないことを意味しない。例えば角度を表す単位としてはラジアン(らじあん、)や度(ど、)が有名である。ラジアンと度の換算は以下の式によって示される。 : : また、ラジアンで表された数値は単位なしの数として扱うことができる。 : 角度に関連する物理学の概念として、位相(いそう、)がある。位相は波のような周期的な運動を記述するパラメーターであり、その幾何学的な表現が角度に対応している。位相も角度と同様にラジアンが単位に用いられる。 立体的な角として立体角(りったいかく、)も定義されているが、これは上記の定義には当てはまらない。その大きさは単に立体角と呼ばれることが多く、角度と呼ばれることはほとんどない。 以下、本項目においては平面角を扱う。 == 定義 == === 直線のなす角 === 1つの定まった値の角度を伴う角とは、平面 上の 1 点 とそれから出る 2 つの半直線とそれらにより平面 が分割されて生じる2つの領域の一方 からなる図形と定義できる。ただし後述のように、この定義は数学における主要な定義とは微妙に異なる。 2つの半直線が共有する端点 を角の頂点、ある角の頂点から出る2つの半直線を角の辺という〔〔〔。 頂点 から出る2つの半直線のなす領域 上の、頂点との距離が 以下の点のみを含む領域を取り出すと、この領域は頂点 を中心とする半径 の扇形となる。この扇形の大きさは有限であり、相似な図形の性質から、扇形の弧の長さは半径 に比例することが知られている。従って、扇形は半径と弧の長さを特定できれば形を完全に特徴づけられるから、半径と弧長を利用して、半径 を一定に保って弧長を変えた場合に、弧長に比例する量として角度を定義することができる。この場合、弧の長さと半径は比例関係にあるから、単純にその比例係数として角度を定義することができる。すなわち、半径 , 角度 の扇形の弧長が半径 と角度 の積 に等しくなるように角度を定義する。 :''角度'' × ''半径'' ''弧長'' この角度の定義は、直接的に半径と弧長の比を用いて表すこともできる。 :''角度'' または :''角度'' : 1 ''弧長'' : ''半径'' 角度を固定すれば、半径と弧長の比は一定であり、同じ角度を持つ扇形はすべて互いに相似である。従って、はじめに与えた頂点 を挟む2つの半直線がなす領域 に対しても扇形と同様に角度を与えることができる。すなわち、半直線のなす領域 に対する角度は、その領域に含まれる、頂点 を共有する扇形の角度に等しい。 上述のように決まった図形に対する角度を定義すれば、図形の変形を特徴づける量としても角度を用いることができる。はじめ、頂点 を共有する2つの半直線が同じ場所に重なっている状態から、一方の半直線を、その端点を点 から動かさずにその向きを変えるように動かすと、2つの半直線がなす領域 は半直線の運動に応じて変形される。このとき、領域 の角度の変化量として、動かした半直線の回転角を定義することができる。言い換えると、ある1つの半直線の向きを変えた場合に、変える前と変えた後の位置にある半直線のなす角がその半直線の回転角である。この観点からは角度は2つの半直線の開き具合を示す量ともいえる。実際、このような回転から角および角度を定義している事典もある〔。 上記の点 と2つの半直線が定まると、それらにより平面 が分割されて生じる2つの領域 にそれぞれ対応して2つの角が生じる。この2つの角のうち角度が大きいほうを優角〔〔〔〔〔、小さいほうを劣角〔〔〔と呼ぶ。明らかにどんな一組の頂点と2辺についても、その優角と劣角との角度の和は、 で一定である。 平面 上の1点で交わる2つの直線は平面 を4つの領域に分け、それぞれの領域に対応する4つの角が生じる。これら4つの角を、この2つの直線のなす角という。1点で交わる2つの直線は同一平面上にあるので、"平面上の"という条件は実は必要がない。 ダフィット・ヒルベルトがその著書の『幾何学基礎論』において示した〔では、「端点を共有する 2つの半直線の組」(引用文献のままの表現ではない)として角を定義しており、日本でもこの主旨の定義を採用している数学辞典〔〔や国語辞典〔〔〔が多く、最も受け入れられた数学的定義と見なせる。 この定義の前記定義との違いは 2つの半直線が挟む領域を含めていないことである。ヒルベルトの公理系ではそのかわり、平面 が角(2つの半直線)により分割されて生じる 2つの領域の一方を角の内部、他方を角の外部として区別している。角度の小さい領域が内部になるのだが、この段階では角度はまだ定義されていないため、別の方法での定義をしている。そして定理20で角の大小関係を定義している。すなわち、1辺を共有する2つの角のうち一方の角 の辺が他方の角 の内部にあれば、 であると定義する。すなわち、角の大小関係として劣角の角度の大小関係を採用したことになる。 ユークリッドの著作『原論』〔〔〔では第1巻の定義8において、「互いに交わる2つの線 の傾き 」(引用文献のままの表現ではない)と定義されている。"傾き" という語の解釈次第では2つの直線で分割された領域のいずれかを含むと解釈することも可能であり、そう解釈している辞典もある〔。またこの定義と同じように「"傾き"である」という定義を採用している国語辞典もある〔。またこの定義での2つの線は線(原論では定義2)であって直線(原論では定義4)ではないので、曲線も含まれる〔〔。2つの半直線の傾きとしての角、つまりヒルベルトの定義による角は、定義9で直線角 という名称で定義されている。 英英辞典には、2つの半直線の間の領域 が角であるとするものもある〔。 抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)』 ■ウィキペディアで「角度」の詳細全文を読む 英語版ウィキペディアに対照対訳語「 Angle 」があります。 スポンサード リンク
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