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分子クラウディング、または高分子クラウディング(英:molecular crowding または macromolecular crowding)といわれる現象は、タンパク質などの高分子が高濃度である状態で、溶媒中の分子の性質が変化すること。高分子こみあいとも言う。以下、本稿では「(分子)クラウディング」や「込み合い(効果)」などと訳す。この状態は生物の細胞中では普通に見られる。例えば大腸菌の細胞質中の高分子濃度は 300-400mg/ml になる。分子クラウディングの状態になると、その高濃度により、溶媒内の高分子の占有体積が減少し、その結果として活量が増大する。 分子クラウディング効果により、細胞中の分子は、''in vitro'' における挙動とは全く異なるふるまいをする可能性がある〔。それゆえ、実験室内で薄い溶液を使って酵素の特性や代謝のプロセスを測定すると、生存細胞内に見られる真の値より何桁も異なる場合がある。生化学的プロセスの研究は、実際に近い高濃度条件で行うことは非常に重要である。これはすべての細胞で普遍的な性質であるし、分子クラウディングこそが代謝の効率性の本質かもしれないからである。 == 原因と効果 == 細胞内は濃密な環境である。一例として大腸菌細胞は、体長約 2μm、直径約 0.5μm であるから、体積は約 0.6-0.7μm3 の体積を持つにすぎない。しかし、大腸菌は4288種のタンパク質を含み、そのうちの約1000種は容易に検出可能なレベルの濃度で存在している。それに加えて、様々な形態のRNAや染色体DNAも存在しているので、高分子の総合的な濃度は 300-400mg/ml に上る〔。真核生物の細胞内ではさらに細胞骨格を作るタンパク質フィラメントが込み合っており、この網が細胞質を小路のように分断している。 これら高分子高濃度状態は、細胞体積の大部分で生じている。そして高濃度により、それぞれの高分子の専有体積が縮小される。この排除体積効果により、高分子の影響濃度が増大し、そして反応率を変化させ、反応における平衡定数も変化する。特に、この効果によって、タンパク質のタンパク質複合体の形成や、DNA結合タンパク質のターゲット遺伝子への結合などの、特定の高分子会合が選択され、解離定数が変化する。触媒反応を起こす酵素の形態の変化により、込み合いは高分子だけではなく、小さな分子の反応も変化させる〔。 込み合い効果の程度は、関わる分子の分子量と形状の両方に依存する。しかし分子量の方がより重要であると考えられている。一般により大きい分子の方がより効果が強くなる〔。注目すべきなのは、効果の程度は非線形であることで、高分子はアミノ酸や単糖などの小さな分子よりも強くクラウディングの影響を受ける。従って分子クラウディングは、高分子が他の高分子の性質に影響を及ぼす効果であると言える。 抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)』 ■ウィキペディアで「分子クラウディング」の詳細全文を読む スポンサード リンク
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