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分子標的治療(ぶんしひょうてきちりょう、)とは、ある特定の分子を標的として、その機能を制御することにより治療する療法。 正常な体と病気の体の違いあるいは癌細胞と正常細胞の違いをゲノムレベル・分子レベルで解明し、がんの増殖や転移に必要な分子を特異的に抑えたり関節リウマチなどの炎症性疾患で炎症に関わる分子を特異的に抑えたりすることで治療する。従来の多くの薬剤もその作用機序を探ると何らかの標的分子を持つが、分子標的治療は創薬や治療法設計の段階から分子レベルの標的を定めている点で異なる。また、この分子標的治療に使用する医薬品を分子標的治療薬と呼ぶ。 以下本項目では、分子標的薬の多くががん治療薬であることから、狭義の分子標的治療であるがん治療への分子標的治療薬を中心に記述する(自己免疫疾患についても触れる)。 == 歴史 == がん(その他、自己免疫疾患、臓器移植など)治療で、特有あるいは過剰に発現している、特定の標的(分子)を狙い撃ちにしてその機能を抑える薬剤により治療する方法が、いわゆる「分子標的治療」である。 この呼称はモノクローナル抗体の開発が始まった1980年代初頭より使用され始めた。1980年代にCEAなどの腫瘍関連抗原に対する抗体療法がマウスモノクローナル抗体で試みられたが成功しなかった。そこで、マウス抗体の定常領域をヒト由来のものに置き換えたキメラ抗体が開発され、1997年にリツキシマブとして、抗体医薬品が初めて承認された。しかし、その後ヒト抗キメラ抗体の出現や重篤なアレルギー反応が報告されたため、あらたにヒト化抗体が開発された。その後1990年代後半には完全ヒト化抗体が作成された。 「分子標的治療」が一般的に使われ出したのは、メシル酸イマチニブやゲフィチニブなどの低分子化合物が臨床使用され始めた1990年代末からとされる。特に2001年に承認されイマチニブは、慢性骨髄性白血病(CML)にたいして大きな効果を発揮し、分子標的薬の評価を飛躍的に高めた。また創薬期間は、イマニチブでは標的分子発見後40年を経て薬剤が承認されたが、BRAF阻害薬では標的分子発見が約10年で承認され、クリゾチニブでは承認までの時間が4年など、コンピューターとゲノム医学の進歩により標的分子発見後の創薬期間が短縮化される傾向にある。 なお、分子標的薬はその効果を高めるため、抗体に細胞毒性物質のみならず放射性同位元素などを結合させた融合抗体(抱合薬)なども登場しており、その形を広げつつある。病態形成の本質たる原因分子標的が明らかになることによって、今後目覚ましい治療効果が得られる〔田中良哉/編『免疫・アレルギー疾患の分子標的と治療薬事典』p.14 羊土社 2013年 ISBN 978-4-7581-2041-8〕とされる。 抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)』 ■ウィキペディアで「分子標的治療」の詳細全文を読む 英語版ウィキペディアに対照対訳語「 Targeted therapy 」があります。 スポンサード リンク
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