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生命の起源(せいめいのきげん、英:Origin of life)は、地球上の生命の最初の誕生・生物が無生物質から発生した過程〔『岩波生物学事典』 第四版 p.766「生命の起源」〕のことである。それをテーマとした論や説は生命起源論という。 == 概要 == 生命は、いつ、どこで、いかにして誕生したのか? この問いかけとそれに対する説明は古代から行われていた。遡れば、人類は古くは神話において、それを行っていた。また、様々な宗教においても古くからそれは行われ、現在でも行われている。 古来人々は、生命というのは無生物からわくようにして生じていた、と考えていたふしがある。 古代ギリシアにおいては、神話とは異なった哲学的な考え方が行われるようになったとされる。「アルケー」つまり万物の起源・根源はなにか、という(現在の西洋の科学に通じる面ももつ)考察が行われた。それと同様に、哲学者によって、生物の起源に関する考察も行われた。アリストテレスは観察や解剖を行ったが、彼の説は動物は親の体から産まれる以外に物質からも生じることもあるとし、その見解はその後およそ二千年間も支持されることになった。また彼は世界には生命の胚種が広がっており、それが物質を組織して生命体を生じさせると考えていた。 近代でも自然哲学者らが考察を行った。さらに19世紀になり科学者という職業が誕生すると、この科学者たちも同様の考察・研究を行い、生命の起源の仕組みを何とかして科学的に説明しようとする試みが多く行われてきた。 現在、科学の領域における仮説の多くは、チャールズ・ダーウィンの進化論を適用することによって、おそらく最初に単純で原始的な生命が生まれ、より複雑な生命へと変化することが繰り返されたのだろうと推察している。また、われわれヒトの誕生(人間の存在)を分子生物学的に説明するという試みも行われている。また科学者の中には、宇宙空間には生命の種のようなものが広がっており、生命の誕生の場所は地球上ではなかったとする説(パンスペルミア説)を支持する人々もいる。 つまり現在、地球上の生命の起源に関しては大別すると三つの考え方が存在する。ひとつは、超自然現象として説明するものであり、一例を挙げると神の行為によるもの、とする説である。第二は地球上の化学進化の結果と考える説である。第三は、地球外に起源があるとする説で、パンスペルミア説と呼ばれる。現代でも、第一の超自然現象説や第三のパンスペルミア説を発表する学者は多い。(自然科学者の間では)一般的には、オパーリンなどによる物質進化を想定した仮説が受け入れられているとされる〔東京化学同人『生化学辞典』「生命の起源」〕。 生物が無生物質から発生する過程は、自然、実験の両方で、観察、再現されていない。また理論的にも、生命の起源に関しては、決定的な解答は得られていない。 なお、自然科学においては、ただ「生命の起源」と言っても、そこには、生命とは何か(生命の定義)、生命はどこから・どのように誕生したのか(狭義の生命の起源)、生命はどのように多様性を獲得したのか(種の起源)、という問題・テーマが関連してくることになる。 この項では生命起源論を歴史に沿って追うこととし、中でも自然哲学や自然科学における様々な学説に重点を置いて説明することにする。
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