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十重禁戒(じゅうじゅうきんかい)とは、北伝の大乗仏教(中国仏教・日本仏教)において、『梵網経』の菩薩戒として伝えられてきた十種の重戒で、大乗の僧侶と大乗の信者との兼用の戒めである。ただし、プロである僧侶と信者とでは、戒律の適用に際して多少の差異がある。 仮に、これら十種の重戒のどれか一つでも破ることになると、『大乗戒壇』による波羅夷罪に抵触し、この戒律に基づく出家の僧侶は、全ての資格を失い資産を放棄させて仏教徒ではなくなり、あらゆる仏教教団より放逐される。加えて、2年間一切の宗教活動を禁止されて、二度と僧侶となることはゆるされない。 『梵網経』に基づく大乗の菩薩戒とも呼ばれる「梵網戒」(円頓戒)では、この「十重禁戒」と、「四十八軽戒」から成る「十重禁四十八軽戒」が説かれる。我が国では、真言宗系で十善戒が重んじられるが、十重禁戒は、天台宗系で重んじられ、浄土宗〔八木季生『人生をみがく よりよく生きるための授戒講和』(浄土宗出版、1999年)191頁以下、212頁〕や曹洞宗〔『修証義』第三章「受戒入位」〕でも、守るべき戒とされている。宗派により、多少の差異がある。 ==内容== ;不殺生戒(自分も含めて全ての生き物を殺したり傷つけたりしない、また、殺生の因となる全ての行為を禁止する) *全ての生命を大切にして、全ての生命にとって利益と幸せがもたらされる行いをする ;不偸盗戒(正当に与えられていないものは取らない) *与えて頂いた時にはお礼の気持ちを返し、自分からも進んで与えていく ;不淫戒(僧侶と正式な受戒者の場合。 僧伽の理に反する淫らな欲は持たず、大乗戒壇における正式な受戒者は、加えて妻帯と女犯の因となる全ての行為を禁止する) ;不邪淫戒(信者の場合。 信者の道に反し、夫婦以外の者と不道徳な関係を保たない。)〔不邪淫戒については『梵網経』の本文にはなく、それゆえ『梵網戒』(円頓戒)には含まれない。おそらく、在家の五戒によって補足されたものと考えられるが、本来の『梵網戒』は最澄が大乗戒壇において得度のための出家の戒としたように、僧または受戒者に対して女犯を禁止しているので、正式な『十重禁戒』ではない。〕 *全ての煩悩を絶って、礼儀を重んじて接する ;不妄語戒(真理に照らして偽りとなることは言わない) *慈悲の心で言葉をおくる ;不飲酒戒・不酤酒戒(酒の売買に加え、飲酒の因となる全ての行為を禁止する) *精進を滞らせず常に心身を健全で冷静に保ち続けられるように健康的な食事を摂る ;不説過戒・不説四衆過戒(過ちをことさらに非難したり責め続けない) *受けた親切は忘れず感謝の気持ちを持って報いていき、他の長所は褒め自らも学んでいく ;不自讚毀他戒(自分を褒めて他を見下すことはしない) *全ての生命に生かされていることに感謝して敬い、自分より他人の利益と幸せを優先する ;不慳法財戒(教えや財産をひとり占めせず、分け与えることを勿体ないと思わない) ;不慳惜加毀戒(もの惜しみをして、相手を傷つけ辱めない) *良いものは皆に分け与え、悪いものは広げず良いものへと転換していく ;不瞋恚戒(怒らず恨まない。または、相手の謝罪に腹を立てない) ;不瞋心不受悔戒(相手の謝罪に腹を立てない) *どのような状況におかれても常に冷静で平常な慈悲の心を保ち続ける ;不謗三宝戒(仏・法・僧の三宝を馬鹿にして軽んじたり、そしって不平を言ったりしない) *仏の教えを信じて日々精進を継続し、八正道や六波羅蜜を行じて必ずや成道していく この中で最も重要な徳目は仏を信ずることが説かれた「不謗三宝戒」であり、生命の最重要性が仏によって説かれる限り、そのように説く仏の教えは第一に信ずるべきものとなるが、時に、それに次いで重要となるのが不瞋恚戒であり、例え異教によって命よりも大切な仏教を毀損されたとしても無意味に争うことなく平常心を保ち続けることが禅定の真髄であって、それが「不謗三宝戒」を実践して仏教を守ることともなる。 抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)』 ■ウィキペディアで「十重禁戒」の詳細全文を読む スポンサード リンク
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