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原子核変換 : ウィキペディア日本語版
核変換[かくへんかん]

核変換(かくへんかん、)とは、原子核放射性崩壊や人工的な核反応によって他の種類の原子核に変わることを言う〔デジタル大辞泉 〕。元素変換()、原子核変換とも呼ばれる。
使用済み核燃料に含まれる半減期が極めて長い核種を、短寿命の核種に変える群分離核変換技術により、環境負荷を低減する研究開発が進められている。

== 概要 ==
化学において、化学結合で結ばれた原子群である分子は基本的な要素の一つであるが、化学反応によってその分子の構成は比較的容易に変化する。一方、その分子の構成要素である原子(の原子核)もまた核力で結ばれた陽子中性子の群でしかないため、分子同様、原子もその構成(核種陽子数(原子番号)に関する種類分けの要素元素と呼び、より詳細な区分け方である陽子中性子の数(質量数原子番号)に関する種類分けの要素を核種と呼ぶ。〕)は、分子ほど容易ではないものの〔核力による結合は化学結合による結合とは比較にならないほど強く、基本的に古典物理学的または化学的な手法に対しては原子の原子核はほぼその影響を受けない。〕、変化することがある。この原子の原子核の構成の変化(核種の変化)を核変換(nuclear transmutation)と呼ぶ。
原子核物理学において基本的な現象である放射性核種放射線を放出して別の核種へと変わる放射性崩壊は核変換の一種であるが、純粋に人工的な核変換は、1932年のコッククロフトウォルトンによる、加速器を用いた核種の変換の成功に始まる〔なお、純粋に人工的な核変換ではないものの、1919年にラザフォードは、放射性物質から出るα線を窒素の原子核に衝突させることで水素原子核と酸素原子核を生じさせていた。〕。なお、核分裂反応核融合反応も核変換の一種である。
核変換によって生成される代表的な物質としてはプルトニウム239がある〔そもそも原子炉はウランの同位体の中でも核分裂反応をし難いウラン238から核分裂反応を起こす核種であるプルトニウム239を核変換によって生成するために開発された。
そのため、現在においても原子力発電所の使用済み核燃料を再処理することで核変換によって生成されたプルトニウム239を抽出することができる。ただし、原子力発電所(熱中性子炉)はプルトニウムを生成する効率(転換比)が悪く経済的では無いと言われる。その欠点を克服し効率的(高い転換比で)に核変換を起こす(プルトニウムを生成する)ことができる炉を増殖炉と呼ぶ。原子力発電 p.175


増殖炉としては、高速増殖炉(高速中性子を用いた増殖炉)のもんじゅなどが知られている。〕。
なお、元来、原子を構成する核種半減期は環境変化の影響を極めて受け難い物理量であり、古典物理学的・化学的な手法では半減期を変化させる(その核種を核変換させる)ことはできないと考えられていたが、近年になって、極端な状態においてようやく1%程度というものであるが、高圧、電磁場あるいは化学構造などによって、半減期が変化する(核変換が発生する)ということが明らかとなっている〔クローズド・システム(1973) p.30〕〔例えば、2014年3月、三菱重工業は、パラジウム酸化カルシウムからなる多層膜に金属元素を付着させ、この膜に重水素を透過させる手法によってマイクログラム単位の元素変換を確認できたと報告した。セシウム原子番号55)はプラセオジム(原子番号59)に、ストロンチウム(原子番号38)はモリブデン(原子番号42)に、カルシウム(原子番号20)はチタン(原子番号22)に、タングステン(原子番号74)は白金(原子番号78)になるなど、原子番号が2または4または6大きい元素に変わったという。
 
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〕。
原子炉使用済み核燃料からなる高レベル放射性廃棄物は様々な核種を含んでいるが、その一部は、天然ウランレベルの放射能まで減衰するのには数万年のオーダーの時間がかかる超長寿命の核種である。プルサーマルや核燃料サイクルを経て出てくる放射性廃棄物から、超長寿命核種であるマイナーアクチノイド(MA)〔アクチノイド系列に属する超ウラン元素の内、核燃料そのものであるプルトニウムを除いたものを、マイナーアクチノイド(Minor actinide)と呼ぶ。プルサーマルや核燃料サイクルにてプルトニウムは放射性廃棄物の中から抽出されることになるため、それらを経た放射性廃棄物に含まれる超ウラン元素で超長期の寿命を持つものはマイナーアクチノイドのみになる。〕〔
マイナーアクチノイドは、熱中性子炉軽水炉)で処理する場合、中性子を捕獲させ核分裂性物質にする必要があり、炉の設計、特に安全特性に影響を及ぼすため燃料として使えなかった。これに対し、直接核分裂させることができる高速中性子炉である高速増殖炉核燃料サイクルの中で処理する方法や、加速器駆動未臨界炉や専焼高速炉による階層処理が考えられている。
〕や核分裂生成物(FP)を群分離した上で、数百年単位の短寿命核種または安定核種に核変換する技術(核変換技術、かつては消滅処理)の研究開発が1970年代から〔日本においては、原子力発電に伴う使用済み燃料の再処理工程から生ずる核分裂生成物、超ウラン元素等を対象としてその総合対策を検討するため昭和46年8月(1971年8月)に「核分裂生成物等総合対策懇談会」が日本原子力産業会議によって設置された。クローズド・システム(1973) p.2〕進められている。

抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)
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