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原子炉スクラム(げんしろスクラム、)またはスクラム () とは、原子炉が緊急停止した状態、または、原子炉を緊急停止させることである。加圧水型原子炉では、原子炉トリップ(げんしろトリップ、)ということがある。多くの場合、スクラムは、通常の原子炉の停止手順の一部でもある。 == 仕組み == すべての原子炉で、スクラムは大きな負の反応度を加えることによって達せられる。軽水炉では、型式によって挿入する方法は異なるが、炉心に中性子を吸収する制御棒を挿入することで達せられる。加圧水型原子炉では、制御棒は自重と強いスプリング(ばね)の力に逆らって、モーターの力で炉心の上に保たれている。そして、モーターへの電力の供給を遮断することによって、制御棒を挿入する。ほかの設計では、自動制御棒挿入、または電力供給の瞬時の遮断があっても、制御棒を保持するために、電磁石を使用している。スクラムは、すぐに(多くの原子炉での実験結果によれば、4秒未満で)制御棒をモーターから切り離し、自重とスプリングによって炉心に挿入することで、可能な限りすばやく原子炉を停止させる。沸騰水型原子炉では、制御棒は原子炉圧力容器の下部から挿入する。この場合、蓄圧タンクを用いた油圧制御装置は、電力供給の遮断時にすばやく4秒以内で制御棒を挿入するための力を供給する。典型的な大型の沸騰水型原子炉は制御棒が185本ある〔原子炉機器(BWR)の原理と構造 (02-03-01-02) - ATOMICA - によれば、電力出力1100 MW級の沸騰水型原子炉。〕。加圧水型原子炉と沸騰水型原子炉には、主停止系が迅速かつ十分に作動しなかったときに制御棒を挿入する後備停止系(これに加えてしばしば第三の停止系)がある。 水溶性中性子吸収材は、軽水炉の原子炉停止系でも使われている。スクラムの後、原子炉(またはその一部)の(依然として重要である)停止余裕がないときは、運転員は冷却材の中に中性子吸収材を含む水溶液を直接注入することができる。中性子吸収材は、一般的な家庭用ホウ砂、ポリホウ酸ナトリウム、ホウ酸、または硝酸ガドリニウムのような中性子を吸収する化学物質を含む水溶液で、反応度の減少を引き起こす。これにより、制御棒を使用せずに原子炉を停止することができる。加圧水型原子炉では、中性子吸収材水溶液は逆止弁を介して一次冷却系につながっている(アキュムレータと呼ばれる)蓄圧タンクに貯められている。中性子吸収材の様々な水準は、常に一次冷却水の中で保たれている。そして、すべての制御棒を挿入することに失敗したときに、アキュムレータを使うことでこの水準を増加させることにより、すぐに原子炉の停止余裕を確保する。沸騰水型原子炉では、水溶性中性子吸収材は、ホウ酸水注入系 () から得る。これには、冗長バッテリー駆動噴射ポンプ、または、最新の型式では、どのような圧力にも逆らって原子炉圧力容器に中性子吸収材水溶液を注入するための高圧窒素ガスを使う。中性子吸収材は原子炉の再起動を遅らせるかもしれないので、ホウ酸水注入系は制御棒の挿入が失敗したときに原子炉を停止するためだけに用いる。この懸念は、とりわけ沸騰水型原子炉では重要で、ホウ素化合物の水溶液の注入は、燃料被覆管に固体ホウ素化合物の析出を引き起こし、この析出した固体ホウ素化合物を取り除くまでは、原子炉の再起動は妨げられるだろう。 多くの原子炉の設計では、原子炉の停止手順は、完全に制御棒を挿入する最も信頼性の高い方法として、また、停止作業をしている時、または、し終わった後に、誤って停止作業を撤回する可能性を防ぐことができる方法として、制御棒を挿入するためにスクラムを用いている。 いくつかの現代の原子力艦は、スクラムに加えて、自動で数秒間、高速に内部に向かってモーターを動かす能力がある原子力発電用原子炉を搭載している。これにより、モーターから離れずに、炉心へ制御棒を短い距離だけ駆動させる。この「高速挿入」により、とても重要な原子力艦は、商業用発電所と比べてすぐに再起動する準備ができている状態で原子炉の一部分を停止する。 抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)』 ■ウィキペディアで「原子炉スクラム」の詳細全文を読む 英語版ウィキペディアに対照対訳語「 Scram 」があります。 スポンサード リンク
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