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反結合性軌道 : ウィキペディア日本語版
反結合性軌道[はんけつごうせいきどう]

化学結合理論において、反結合性軌道(はんけつごうせいきどう、)は、電子によって占有された場合に2つの原子間の結合を弱め、分かれた原子の状態よりも分子のエネルギーを上昇させる分子軌道の一種である。このような軌道は核間の結合領域に1つ以上のを持つ。この軌道における電子の密度は結合領域の外側に集中し、核を互いに遠ざけ、2つの原子間に相互反発を生じさせる〔Atkins P. and de Paula J. ''Atkins Physical Chemistry''. 8th ed. (W.H. Freeman 2006), p.371 ISBN 0-7167-8759-8〕〔Miessler G.L. and Tarr D.A., ''Inorganic Chemistry'' 2nd ed. (Prentice-Hall 1999), p.111 ISBN 0-13-841891-8〕。
==二原子分子==
反結合性分子軌道 (MO) は通常、結合性分子軌道よりもエネルギー的に「高い」。結合性および反結合性軌道は、パウリの排他原理の結果として、2つの原子が組み合わさって分子となる時に形成される。初めは離れていた2つの水素原子が結合することを考える。これらの原子が遠く離れて孤立している時、原子は全く同じエネルギー準位を持つ。しかしながら、2つの原子間の間隔が小さくなるにつれ、電子の波動関数が重なり合い始める。パウリの原理により、相互作用系において2つの電子は同じ量子状態を取ることはできない。ゆえに、全波動関数(空間座標とスピン座標の積)は反対称でなければならない。したがって、孤立した原子のそれぞれのエネルギー準位は、元の原子の準位よりもエネルギー的に低い軌道(対称空間波動関数)とより高い軌道(反対称空間波動関数)の対に属する2つの分子軌道へと分裂する。例えば、基底状態エネルギー準位である1''s''は2つの分子軌道へと分裂する。低い方の軌道は元の原子軌道よりもエネルギー的に低いため、より安定であり、2つのH原子がH2へと結合するのを促進する。これが結合性軌道である。高い方の軌道は元の原子軌道よりもエネルギー的に高く、より不安定であり、したがって結合を妨害する。これが反結合性軌道である。H2といった分子において、通常2つの電子はエネルギー的により低い結合性軌道を占有し、したがって分子は分かれたH原子よりも安定である。
分子軌道は2つの核間の電子密度が結合性相互作用が全くない場合よりも低い時に反結合性となる。分子軌道が2つの原子間の「節面」において(正から負へ)符号を変える時、「これらの原子に関して反結合性である」と言われる。分子軌道ダイアグラムにおいて、反結合性軌道はしばしばアスタリスク (
*) でラベルされる。
等核二原子分子において、σ
*(シグマスター)反結合性軌道はσ結合のように2つの核を通過する節面を持たず、π
*(パイスター)軌道はπ結合のように2つの核を通過する節面を1つ持つ。
反結合性のもう一つの特徴は、「反結合性軌道は結合性軌道が結合性であるよりも反結合性である」という点である。これにより、反結合性分子軌道のエネルギーは核-核反発の存在によって上昇すると結論される。

抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)
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