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可変深度ソナー[かへんしんどそなー]
可変深度ソナー(かへんしんどソナー )は、ソナーの装備形式の一つ〔木下郁也,海上自衛隊の対潜兵器,世界の艦船 No432 1991年2月号,P82-89,海人社〕。 == 概要 == 海中での音波伝播は、海水温によって大きな影響を受ける。一般に海水温は、表面が暖かく、深海は冷たいが、これにより、前方に向けて照射された音波は必ずしも直進せず、やや下方に収束する傾向を示す。 また場合により、海水温が鉛直に急激に変化する層が出現することがあり、これはレイヤーデプス(変温層)と呼ばれる。変温層のなかでは音波の伝播路は不規則にゆがめられ、場合によっては反射されることもある。このため、洋上の戦闘艦がソナーを使用しても、潜水艦が変温層下にいた場合には、これを探知することが難しくなる。潜水艦の側はこの特性を利用して、変温層下にひそむことを常道としていることから、変温層下の目標を探知できる距離のことをBDR(Best Depth of Range)と称する。 可変深度ソナーは、ソナー・トランスデューサーを変温層下に吊下することで、変温層の影響を受けない安定した音波伝播路を確保し、BDRを延伸するためのものである〔。アメリカ海軍においては、1950年代末から開始された艦隊近代化計画(FRAM)改修においてAN/SQA-10が装備された後、より改良されたAN/SQS-35 IVDS(Independent Variable-Depth Sonar)が配備されて、本格的な運用を開始した。同機種は西側諸国で多く採用され、特に日本の海上自衛隊は、1,500トン級のちくご型護衛艦にまで搭載した。 しかし、可変深度ソナーは変温層の影響を局限化して安定した探知を可能にする一方で、使用中に母艦の運動性が制限されるという重大な限界を内包しており、海上自衛隊では、投入および揚収時には3〜12ノットの艦速を厳守するよう定めていた。また、曳航体に装備されるソナー・トランスデューサーは艦体装備のものとほぼ同等であり、これ以上の低周波化にともなう大型化は困難であった〔。このことから、西側諸国における配備は、1980年代より、戦術曳航ソナー(TACTASS)に移行していくことになった。戦術曳航ソナーは、ソナー・トランスデューサーを曳航するという点では可変深度ソナーと同様である(実際、初期のモデルは可変深度ソナー・システムの多くを流用して開発された)が、深深度に吊下することよりは、長大なアレイを曳航することによりトランスデューサーを大型化することに主眼をおいている。ただし、哨戒ヘリコプターに搭載されるディッピングソナーには可変深度ソナーとしての要素も具備されていることから、変温層下にソナー・トランスデューサーを投入する能力は維持されている。
抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)』 ■ウィキペディアで「可変深度ソナー」の詳細全文を読む
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