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右と左 : ウィキペディア日本語版
右と左[みぎとひだり]

右と左』(みぎとひだり、''Right and Left'')は、アメリカ合衆国画家ウィンスロー・ホーマー1909年油彩画である。これは、ひとつがいのホオジロガモが飛び立とうとしたとき猟師の散弾銃の射撃が当たった瞬間を描いている。
死まで2年足らずのときに完成して、ホーマーにとって最後の大作であり〔Cikovsky, 374〕、その由来、構図および意味に関してさまざまな解釈のまととなった作品である。ホーマー後期の他の傑作と同様に、この作品は初期の狩猟にかんする題材へのホーマーの回帰を示すものであり、また、このテーマに取り組んだ最後の作品となった。
デザインは日本美術のそれを思わせ、構図はジョン・ジェームズ・オーデュボンの彩色版画のそれに似ている。
==背景==
1908年5月、ホーマーは、軽い発作の影響で言語および身体の制御の一時的な障害をこうむった。
6月4日、彼は兄弟のチャールズ(Charles)あてに手紙を書いて送った、「わたしは以前のように描くことができます。わたしは、片眼をポットに、そして他方の目を煙突に置いているので自分の絵をますますよいと考えます - 美術の世界における新たな出発です。」〔Cikovsky, 405〕
7月18日には、自分は能力を取り戻したと書き記したが、「過去20年間やってきたようにネクタイを」結ぶことはできず、「....4、5日目ごとにやろうとしましたが、....むだでした。」と記した〔Cooper, 238-239〕。
ホーマーはその後も完全に回復することはなかったが、大作を試みることができるほどには健康であり、おそらくは、1908年12月8日付けの兄弟チャールズあての手紙で言及していた作品が『右と左』だったのであろう:
「わたしはじゅうぶんに明るいときに、たいへん驚くべき絵を描いています。」〔Cikovsky, 375〕〔Cikovsky, 406〕
ホーマーの伝記作者たちは、この絵の着想と創作当初の事情について様々に異なる説明をしている。
ホーマーの最初の伝記作者ウィリアム・ハウ・ダウンズ(William Howe Downes)は、絵に利用されたカモは、感謝祭の晩餐のために画家によって購入されたと書いた。
ホーマーは、カモの羽衣(うい plumage)に感銘を受け、それを絵に描いたのだという〔Cikovsky, 388〕。
ホーマーの甥が、ホーマーの別の伝記作者フィリップ・ビーム(Philip Beam)に語ったところによれば、その秋、画家の友人フィニアス・W・スプレーグ(Phineas W. Sprague)がプラウツ・ネック (Prouts Neck) で撃ち穫ったカモをホーマーの画室の扉にぶら下げ、その配置が絵のデザインの霊感を与えたのだという〔。しかし、オーデュボンが「魚に似ており、私の意見では食用には適さない」と評したホオジロガモの味を考えれば、食用とするためホオジロガモを入手したとする点で、いずれの話もまったく信じることはできない〔。
同様に、ホーマーがこの絵を描くためにした準備についても様々な話がある。
ダウンズは、ホーマーが二連式散弾銃 (double-barreled shotgun) をもつ男と一緒に、船で海に出て行き、撃たれた鳥の動きを研究したことを詳しく述べている〔。
ビームによれば、ホーマーはプラウツ・ネックの崖の頂に立ち、隣人ウィル・グージンズ(Will Googins)が、沖の漕ぎ舟から彼の方向にむかって空包射撃をしたと述べている〔。
しかしながら、ホーマーは、1864年に南北戦争で撃たれる側の兵士という題材『''Defiance''』、1892年には、遠くにライフル銃の硝煙を、前景に致命傷を負ったシカを描いた『''A Good Shot, Adirondacks''』(画像参照)を制作しており、すでに散弾銃の射撃を受ける側からの視角からの描写は手がけていた〔。
とりわけ後者は、『右と左』の構図と意図を先取りしていた〔。

抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)
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