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国衙軍制 : ウィキペディア日本語版
国衙軍制[こくがぐんせい]
国衙軍制(こくがぐんせい)とは、日本の古代末期から中世初頭にかけて(10世紀 - 12世紀)成立した国家軍事制度を指す歴史概念。律令国家が王朝国家へと変質し、朝廷から地方行政(国衙受領)へ行政権を委任する過程で成立したとされる。また国衙軍制は、軍事貴族および武士の発生と密接に関係していると考えられている。
== 前史 ==
古代日本の律令国家は、軍事制度として軍団兵士制を採用していた。軍団兵士制は、戸籍に登録された正丁(成年男子)3人に1人を徴発し、1国単位で約1000人規模の軍団を編成する制度であるが、これは7世紀後葉から8世紀前葉にかけての日本が、外国(新羅)の脅威に対抗するため構築したものだった。しかし8世紀後葉、対新羅外交政策を転換したことに伴い、対外防衛・侵攻のための軍団兵士制も大幅に縮小されることとなった。そのため、軍団兵士制を支えてきた戸籍制度を維持する必要性も低下していき、9世紀初頭以降、律令制の基盤となっていた戸籍を通じた個別人身支配が急速に形骸化していった。
律令制の個別人身支配が弛緩していくと、在地社会の階層分化が進み、百姓の中から私出挙私営田活動を通じて富を蓄積した富豪層が成長し始めた。地方行政にあたる国司は、郡司・富豪層に着目し、従来の個別人身支配の代わりに郡司・富豪層の在地経営を通じた支配へと転換していった。国司は調庸・封物を中央の朝廷へ運搬進納する義務を負っていたが、国司はその運搬進納を担う綱領に郡司・富豪層を任じるようになった。調庸・封物の損失や未進が発生した場合は、郡司・富豪が私的に補償する義務を負わされた。
9世紀中葉ごろから、郡司・富豪層が運搬する進納物資を略奪する群盗海賊の横行が目立ち始めた。群盗海賊の実態は、実は郡司・富豪層であった。国司は実績をあげるため、郡司・富豪層へ過度な要求を課することが多くあり、これに対する郡司・富豪層らの抵抗が群盗海賊という形態で現出したのである。略奪した物資は、補償すべき損失や未進に充てられたり、自らの富として蓄積されたりした。群盗海賊の頻発に対し、朝廷と国司は、ほとんど形骸化した軍団兵士制では満足のいく対応ができなかったため、別の鎮圧方策をとる必要に迫られていた。

抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)
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