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国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約 〔2011年現在において、外務省による翻訳と政府法制審議会による検討中の条約名としては、「国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約(仮称)」であり、「ハーグ条約」と略称されている。「」 - 外務省〕 ( / ) とは、 子の利益の保護を目的 〔条約前文「子の利益が最も重要であることを深く確信」〕 〔Convention on the Rights of the Child / 子どもの権利条約 〕 〔児童の権利に関する条約 〕 〔法制審議会ハーグ条約(子の返還手続関係)部会においては、子どもの権利条約と最近のハーグ条約の解釈運用をめぐる国際的動向が、ハーグ条約の解釈運用においては留意されるべきことが示されている。大谷 / 相原 / 磯谷, 「ハーグ条約「担保法」検討のための基本的視点 」 - 法制審議会ハーグ条約(子の返還手続関係)部会〕として、親権を侵害する〔「ペレス・ベラ報告書」Explanatory Report on the 1980 Hague Child Abduction Convention - HCCH 〕 〔日本弁護士連合会, 「国際的な子の奪取に関するハーグ条約関係裁判例についての委嘱調査報告書 」 - 法制審議会ハーグ条約(子の返還手続関係)部会〕 国境を越えた子どもの強制的な連れ去りや引き止めなどがあったときに、迅速かつ確実に子どもをもとの国(常居所地)に返還する国際協力の仕組み等を定める 〔早川, 「ハーグ子奪取条約について 」〕 〔外務省, 「国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約 (ハーグ条約) 」〕 多国間条約で、全45条からなる。日本は2013年5月に国会で承認された〔東京新聞 2013年2月14日〕。 ハーグ国際私法会議にて1980年10月25日に採択され1983年12月1日に発効したハーグ条約のひとつである。未成年者が連れ出された国および連れ込まれた国両方が条約加入国である場合のみ効力を有する条約である。 2011年7月28日現在は欧州および北南米の86カ国が加盟している一方でアジアやアフリカの国の殆どは加盟していないが〔Status table - 28: Convention of 25 October 1980 on the Civil Aspects of International Child Abduction - HCCH 〕 〔2011年10月1日に加入のロシアをふくむ。 The Russian Federation becomes the 86th Contracting State to the Hague Child Abduction Convention - HCCH , July 28, 2011. Russia to join Hague Abduction Convention - Voice of Russia , Mar 30, 2011. 〕〔ロシア加入によりG8諸国での未締結国は日本のみとなる。 外務省, 国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約 (ハーグ条約) . 〕 〔欧州連合(EU)諸国27か国は全て加盟国である。 国際的な親による子の奪取に関する共同声明 - 駐日欧州連合代表部 , 2011年2月9日. 〕 本条約は欧米諸国を中心に作成され調印されたものである。調印当時、途上国出身(特に夫に親権が自動的に与えられる回教国)の夫が離婚後に母親に親権を(半自動的に)与える欧米の家庭裁判所の判決を不服として夫の出身国に略取することが社会問題化しており、これに対応するために条約が作成されたため「子供の元の居住国への迅速な送還」を重点に条文が書かれた。このため、略取先の国の家庭法および略取における両親の個人的な内情などは意図的に一切考察されない。略取先の国は外国の裁判所で親権に対する判断がなされた事実が確認された時点で迅速に強制執行を行わなければならない。しかし非欧米の国と欧米の国の国際結婚の場合は大抵の場合は欧米の国が子供の居住国となっているので実際の執行においては大抵の場合は非欧米国から欧米国に子供を引き渡すという内容となるため欧米の文化圏(欧州、北米、南米)以外の国は日本も含めてほとんど条約に調印しなかった。 近年、批准国は増加しつつある〔。Wikipedia英語版によれば、2012年末現在で89ヶ国が加盟しており、韓国では2013年の3月より条約の効力が生じる。 近年、国際結婚後、欧米、特に米国に移住した日本人女性が結婚の破綻後に子供を日本に連れて戻った結果、子供を連れ去られた外国人の配偶者が長年に渡り(あるいは半永久的)子供から引き離されて救済手段がないという事態が過去の累計で数百件ほど起こっており、この理由から欧米加盟国から日本の加入が要求されていた。 日本では家族法上子の親権者を夫婦のどちらか一方に決めておかなければ離婚は認められず、子の養育の権利・責任(親権)は母親が引き受ける法判断が定着している(判例では、母親側によほどの問題がない限り、親権は母親に渡されるのが通例である。ただし10歳以上の子が自らの意思で父親を選ぶ場合は除く)。ただし、法律的には母親に親権を与えると明記されているのではなく、単に離婚裁判が起こった時点での子供の居住者に親権を与えるという判断がくだされるだけで、この場合の居住者の大半が母親であるという事実を追認しているにすぎない。一方で欧米の場合は養育者・育児者(Primary Carer)に親権を与える判例が確立しており、この場合に母親が育児を行う場合が多いという一般の家庭事情を反映している。米国やフランスなどでは両方の親に親権が与えられ、他の母親に親権を与える国でも父親の面接権を確保するために母親と子供の(外国への)移住を法的に制限するなど法令が制定されているため、この条約を締結および執行した場合、単独親権制に基く日本の伝統的な慣行(親権を取った母親は父親の同意なく子を移住させて構わないし、父親に認められた面接交通権を実施してなくても問題ない)と衝突して、国内で摩擦を生むこと、現実問題として、日本人の母親が米国などの外国の現地法を犯して子を日本に連れ帰っていることが殆どであり、連れ帰った母親からの非難が予想されたため、加入には消極的であった。しかし、国内外において国際離婚に伴う子の略取問題への関心が高まっていることと、欧米、特に米国の強い圧力などの理由から2011年5月に政府は加盟方針をうち出し 〔ハーグ条約:国内法整備、来月諮問 加盟へ、あす閣議了解--法務省 - 毎日新聞 2011年5月19日〕 〔「 国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の締結に向けた準備について 」 - 首相官邸 閣議了解 2011年5月20日〕、 国内法制との整合性調整等の条約締結へ向けた準備を開始し〔人権外交 - 国際的な子の連れ去り問題について - 外務省 2011年6月〕〔法制審議会 - ハーグ条約 (子の返還手続関係) 部会 - 法務省〕、2014年4月1日から日本について効力が発生することとなった〔2014年(平成26年)1月29日外務省告示第33号「国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の日本国による受諾に関する件」〕。 == 概要 == この条約は、親権を持つ親から子を拉致したり、子を隠匿して親権の行使を妨害したりした場合に、拉致が起こった時点での児童の常居所地への帰還を義務づけることを目的として作られた条約である(条約前文)。あくまでも子供の居住国の家庭裁判所の権限を尊重するために作られたもので、子供の親権や面接交渉権に関して判断を下すものではないが、条約の執行において結果的に居住国側の法律が優先されて執行することとなる。 子どもが16歳に達すると、この条約は適用されなくなる(第4条)。また拉致された先の裁判所あるいは行政当局は、子の返還を決定するに際して、子が反対の意思表示をし、子の成熟度からその意見を尊重すべき場合は、返還しない決定をすることもできる(第13条2項)。ただしアメリカでは、「子の意見を聞くことは、子の心に負担をかける。親のうち一方を選び他方を捨てる判断を子にさせるべきではない。」との意見から、子は自分の意見を返還裁判で言うことすら許されない運用をされる場合がある〔 519 F.3d 33 (2008) Dominik KUFNER, Petitioner, Appellee, v. Tina KUFNER, Respondent, Appellant. No. 07-1523. United States Court of Appeals, First Circuit. Heard January 9, 2008. Decided March 7, 2008.〕。 この条約は最終的な親権の帰属を規定するものでなく、あくまでも児童の常居所地国への返還を規定するものであり、親権の帰属については別途法手続きを行うことになる〔Article 17 - The sole fact that a decision relating to custody has been given in or is entitled to recognition in the requested State shall not be a ground for refusing to return a child under this Convention, but the judicial or administrative authorities of the requested State may take account of the reasons for that decision in applying this Convention. Article 19 - A decision under this Convention concerning the return of the child shall not be taken to be a determination on the merits of any custody issue.〕。ただし、親権者が誰になろうが、子は強制的に返還された国から出られなくなる点には注意が必要で、単に裁判管轄を決める条約ではなく、子が生育する場所を最終的に決めてしまうという重大な効果を持つことを認識すべきである。 この条約は子の利益を守ることを目的とすると条約前文には記載されている。しかし、もともとは先進国で子供が外国、特に途上国に連れ去られた場合に、その子供を取り戻すことを第一の目的に作成された条約であるため、子供の元の常居国に子供を返還することを第一目的に作られている、。子供の福祉に関しては、あくまでも子供の常居国の家庭裁判所の判断が最適であるとの前提で成り立っている。よって条約が実際に子供の福祉を最優先にしているのか、あくまでも調印国の政治的意図を優先しているのか判断が分かれる。しかし国際結婚等で夫婦間が不和となり、あるいは離婚となった場合、一方の親が他方の親に無断で児童を故国などの国外に連れ去ることがあり、それが児童の連れ去られた元の国では不法行為であっても、連れ去られた先の国に国内法が及ばないことから、連れ去られた側が事実上泣き寝入りを強いられる場合でも、常居国の家庭裁判所の権限の事実上の無効化を防ぐために子供を常居国に返還することを目的とするもので、どの国の家庭裁判所の親権や面接権に対する判断が子供の福祉に適するかを判断するものではない。 加入国は2011年6月14日現在85カ国〔であり、まだ国連加盟国192カ国の半数には達していない。ヨーロッパ、北米、南米、南アフリカ、オーストラリアなどの西洋文化圏の国のほとんどがこの条約を締結している。一方でアジア・アフリカ・中東のほとんどの国がこの条約を締結していない (締約国を参照)。 日本では、平成23年5月20日に加入が閣議決定されている〔 日経新聞 平成23年5月15日〕。(「日本における事案・加入をめぐる議論」の節参照)が、この条約およびそれに伴う日本の家庭法の改訂は実際の運営において子供を連れ去った親(大抵は母親)から半永久的に引き離す結果となる可能性があるなど、個人の家族の営みに直接介入し不可逆な結果に至る場合があるだけでなく、調印国の間でも条文のDV被害に対する不備などのために虐待する夫が出身国に逃れた母親と子供を強制的に連れ戻す手段として悪用している事実が確認されていたり(下記:DV問題)、その他にも日本人女性の配偶者などに子供を日本に連れ去られ、面会交流も実施されず長期間父子の引き離しの被害にあっている親子の問題点(下記「実務上の問題点」参照)などが識者の間でも指摘されており批准の今後の進展が注目されている。 抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)』 ■ウィキペディアで「国際的な子の奪取の民事面に関する条約」の詳細全文を読む スポンサード リンク
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