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国体(こくたい)(旧字体:國體)とは、八木秀次によれば“ある国の基礎的な政治の原則”〔八木は「欧米に国体に似た文字があるかと言えば、強いて言えば、フランス革命がイギリスにも影響を及ぼし、イギリスもまた共和政体に変更すべしという議論があったときにエドマンド・バークが『イギリスの政体は君民共治である。君民共治はイギルスの基礎的政治の原則(Fundamental Political Principle of England)である・・・』と主張した。このバークのいう「基礎的政治の原則」という文字が、やや日本の国体に似ているように思う」とする。「明治憲法の思想: 日本の国柄とは何か 八木秀次(PHP出版)P.123〕。事実上、日本の事象に特化した政治思想用語であり、特に「天皇を中心とした秩序(政体)」〔「過去との断絶と連続--1945年以降のドイツと日本における過去との取り組み」マンフレート・ヘットリング/ティノ・シェルツ 川喜田敦子 訳(ヨーロッパ研究6 2007年3月 東京大学大学院総合文化研究科・教養学部ドイツ・ヨーロッパ研究センター)P.5 〕を意味する語とされている。そのため、外国語においても固有名詞扱いで "''Kokutai''" と表記される。 == 概要 == 【國】とは政体の下に属する土地・人民、地理上の区画、首都、封土、ふるさとの意。【體】とは典型または規範などの意〔KO字源〕。 一般に国体とは、日本神話の、皇室は万世一系の天照大神の子孫であり、神によって日本の永遠の統治権が与えられている(神勅)〔「天照大神が皇孫瓊瓊杵ノ尊を降し給ふに先立つて、御弟素戔嗚ノ尊の御子孫であらせられる大国主ノ神を中心とする出雲の神々が、大命を畏んで恭順せられ、こゝに皇孫は豊葦原の瑞穂の国に降臨遊ばされることになつた。而して皇孫降臨の際に授け給うた天壌無窮の神勅には、豊葦原の千五百秋(ちいほあき)の瑞穂(みづほ)の国は、是れ吾(あ)が子孫(うみのこ)の王(きみ)たるべき地(くに)なり。宜しく爾皇孫(いましすめみま)就(ゆ)きて治(しら)せ。行矣(さきくませ)宝祚(あまつひつぎ)の隆えまさむこと、当に天壌(あめつち)と窮りなかるべし。と仰せられてある。即ちこゝに儼然たる君臣の大義が昭示せられて、我が国体は確立し、すべしろしめす大神たる天照大神の御子孫が、この瑞穂の国に君臨し給ひ、その御位の隆えまさんこと天壌と共に窮りないのである。而してこの肇国の大義は、皇孫の降臨によつて万古不易に豊葦原の瑞穂の国に実現されるのである。」『国体の本義』〕天皇により統治された、人民や古里の決まりといった意義。国体論では、とりわけ他国との対比において、王朝交代・易姓革命・近代においては市民革命が起きなかったことを、日本の国体の表れとして重視する。論者の大部分は天皇による国家統治を国体の不可欠の要素として主張する。 不変の国体の存在を措定する限りにおいて、国体論は概して民族主義的・保守主義的立場といってよいが、その範囲内で、具体的に何を日本の国体の本質とみなすかは、時代や論者によって差異がある。 国体論の視座は大別して「徳」と「智」があり〔子安宣邦「朱子学と近代日本の形成-東亜朱子学の同調と異趣」 台湾東亜文明研究学刊第3巻第1期 2006.6、PDF-P.4、5〕、徳川封建社会以来のイデオロギーとしての朱子学や儒家的な思惟を重視すれば、国体とは個人の内面や実践に深く関わっており、親兄弟、家族や地域とのかかわりといった儒教的全体としての側面が強調され(徳)、それは西洋近代の先進文明が象徴する(智)に優先する。智を優越させた立場は福沢諭吉の「文明論之概略」であり、近代主義的な西欧文明論による日本社会の改造を意味する。「建國の體」を重視する君権学派は前者であり、「海外各國ノ成法」を重視する立憲学派は後者となる〔立憲学派は国体に関わる実践は、法理ではなく倫理の範疇に関わるものであるとする。立憲学派においても国体とは国家創業以来の「歴史の経験」の現実であるとし、超国家的なものとしての倫理の実践を重視する。法体制として憲法による君主権の制約というイギリス流の憲法観に拠るものであり、天皇廃止論に輿するものではない。〕。 「国体思想」の要素は * 神国思想:日本の国家と皇統は神々に由来し、日本は神々に守護されているという信仰。特にファシズム時代には天皇を現人神と仰いだ(『国体の本義』・修身の教科書など)。神国思想は、大東亜戦争で敗北した為崩壊したとする論者もある。 * 皇国史観:天皇を中心とする日本の国の歴史を称揚する歴史観。 * 国民道徳論:忠君報国や親孝行などを日本の古来からの道徳として称揚する(教育勅語など)。 * 家族国家論:日本の国家を一大家族に擬制し、皇室を国民の宗家とし、天皇を家長にたとえる。 * 君主国体説:諸国家を「主権」の所在により君主国体と民主国体に分類し、日本を君主国体とする憲法学説(穂積八束・上杉慎吉)。 * 立憲主義・民本主義:天皇による統治は国民のために行われるべきと主張する(美濃部達吉・吉野作造など)。 などが挙げられる。 「国体」は旧字体では「國體」と書き、古くから漢籍に見える。「国体」の文字は『管子』君子篇では「国を組織する骨子」の意味で、『春秋穀梁伝』では「国を支える器」の意味で用いられている。古代日本でも『出雲国造神賀詞』に「国体」と書いて「クニカタ」と読む言葉があり「国の様子」を意味している。 国家観の意味で「国体」の語が用いられるようになったのは江戸後期以降であるが、それ以前にも国体の萌芽となる思想は現われていた。そのひとつは、日本を神々の国であるとする神国思想、もうひとつは皇位の血統性を強調する皇国思想である。 抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)』 ■ウィキペディアで「国体」の詳細全文を読む 英語版ウィキペディアに対照対訳語「 Kokutai 」があります。 スポンサード リンク
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