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ディストピアまたはデストピア()は、ユートピア(理想郷)の正反対の社会である。一般的には、SFなどで空想的な未来として描かれる、否定的で反ユートピアの要素を持つ社会という着想で、その内容は政治的・社会的な様々な課題を背景としている場合が多い。 ディストピアの語源は、「悪い、困難な」を意味する「」〔δυσ- , Henry George Liddell, Robert Scott, ''A Greek-English Lexicon'', on Perseus〕と、「場所、風景」を意味する「」〔τόπος , Henry George Liddell, Robert Scott, ''A Greek-English Lexicon'', on Perseus〕を組み合わせたものである。また同様に「悪い、不道徳な」を意味する「」を組み合わせたカコトピア()〔κακόs , Henry George Liddell, Robert Scott, ''A Greek-English Lexicon'', on Perseus〕や、反ユートピア()、あるいは日本語では暗黒郷〔デイヴィット・アスキュー 「リバタリアンSF:『月は無慈悲な夜の女王』を中心に」『リバタリアニズム読本』 勁草書房、2005年、84頁。ISBN 978-4326101542。〕、地獄郷などとも言われる。 == 概要 == ディストピアという語の初出は、オックスフォード英語辞典(OED)によれば、ジョン・スチュアート・ミルが1868年に行った演説である〔http://oed.com/cgi/findword?query_type=word&find=Find+word&queryword=Dystopia〕。 ディストピア文学のはしりはH・G・ウェルズの『タイム・マシン』(1895年)や『モダン・ユートピア』(1905年)などとされている。ジュール・ヴェルヌが書いた初の未来小説である『二十世紀のパリ』(1865年)は、SFにおけるディストピア小説の先駆的な試みといえるが、当時のヨーロッパにおける科学技術を賞賛する風潮になじまず、作者の生前は刊行されなかった。実際に急増するのは第一次世界大戦から第二次世界大戦に至る戦間期のソビエト連邦の誕生やファシズムの台頭など、西欧各国で全体主義の懸念が広がった時期である〔『シュルレアリスムとは何か』 巖谷國士、ちくま学芸文庫 ISBN 4-480-08678-1〕。 ただし、(そもそもトマス・モアの『ユートピア』が典型的であるが)16世紀以来ヨーロッパで書き継がれてきたユートピア文学に登場する様々な「理想郷」の多くが全体主義的、管理社会的で、現代の価値観でとらえればディストピアそのものである社会や制度も理想郷のそれとして描かれていることがある。 理性が統制する社会を楽観的に描き、非理性や感情が支配する現実の社会を批判してきたユートピア文学の書き手が、現実に社会が理性や科学で統制され始めた20世紀に入ってもはや楽観的ではいられなくなり、従来の『ユートピア』を逆転してディストピアとして描くようになったと考えられる〔。 19世紀という啓蒙の時代の反動が、SF小説の始まりと共に20世紀に現れたとも言えよう。なお、多くのディストピアにおいて、ダーウィン主義や社会進化論をベースにした「ヒト」そのものの変革が主題の一つとなっているが、これは理性信仰・科学技術信仰を基にした19世紀の進歩史観が、20世紀になり強く懐疑視されるようになったものとも考えられる。 また、直接的にディストピア文学とは言い難い内容ではあるものの、ディストピア的世界観を借景として利用した作品が現在では数多く作られており、そのジャンルもファンタジーやアクション、私小説的なものから、果てにはポルノまで多岐に及んでいる。 抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)』 ■ウィキペディアで「ディストピア」の詳細全文を読む 英語版ウィキペディアに対照対訳語「 Dystopia 」があります。 スポンサード リンク
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