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多価性 : ウィキペディア日本語版
多価関数[たかかんすう]

多価関数(たかかんすう、multivalued function)とは、完全関係のひとつであり、一つの入力が与えられたときに一つあるいは複数の出力を得るものである。しかし現代的な定義での関数写像の一種とみなされ、一つの入力があるときに出力を一つだけ得るものと定義されることが多く、この場合には多価関数を「関数」と呼ぶのは不適切となる(下記多価関数#歴史的経緯参照)。多価関数は単射でない関数から得ることができる。そのような関数では逆関数が定義できないが、逆関係 (inverse relation, en) はある。多価関数は、この逆関係に相当する。
== 例 ==

* 0 より大きな実数、または 0 でない複素数について、その平方根を計算することができるが、これが多価関数である。4 の平方根は という集合である。0 は多項式 ''x''² の根でその重複度が 2 あるため、0 の平方根は という多重集合である。
* 複素数には三個の立方根がある。立方根の計算も多価関数である。
* 複素数の対数関数 (en) は多価関数である。log(1) の値はすべての整数 n に対し 2 \pi n i と定義される。
* 三角関数は周期関数であるため、その逆関数は多価関数である。たとえば以下の関係
::
\tan\left(\right) = \tan\left(\right)
= \tan\left(\right) = \tan\left(\right) = \cdots = 1.

:を見ると、tan の逆関数である arctan について arctan(1) の値は π/4, 5π/4, −3π/4 などの複数の値をとる。ここで arctan の定義域をたとえば -π/2 < ''x'' < π/2 とする、つまり arctan(''x'') で -π/2 < ''x'' < π/2 とすることによって、arctan を一価の関数とすることができる。この範囲を限定された定義域での関数値を主値とよぶ。
上記はすべて、単射でない関数の逆関数としての例である。つまり入力値が元の関数の写像によって移されて出力となるときに、入力に関する情報の一部が欠落してしまうために、出力から入力を再現できないのである。この場合、多価関数は元の関数の部分関数の逆関数 (partial inverse, en) であると言える。
複素数関数の多価関数は、分岐 (branch point, en) とよばれる点を持つ。たとえば ''n'' 次の平方根あるいは対数関数では、0 が分岐である。逆正接関数 (arctan) では実部が 0 で虚部が ''i'' または −''i'' の点が分岐である。つまり分岐とは、その点を挟んで一方の領域では一価、他方の領域では多価になるという点である。したがって分岐における範囲制約をすることで、これらの多価関数を一価の関数として定義し直すことができる。二つの分岐を結ぶ曲線のうち適切なものを一つ、分枝切断 (branch cut, en) として選ぶことで、その制約を行う区間も決まる。これは複数のリーマン面から一つの面だけを選ぶことである。実数関数の場合に、範囲を制約して定められた関数値を主値とよぶ。

抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)
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英語版ウィキペディアに対照対訳語「 Multivalued function 」があります。



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