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薬剤耐性(やくざいたいせい、あるいは単に耐性、drug resistance)とは、生物が、自分に対して何らかの作用を持った薬剤に対して抵抗性を持ち、これらの薬剤が効かない、あるいは効きにくくなる現象のこと。薬剤抵抗性、薬物耐性とも呼ばれる。 医学、薬理学、微生物学の分野では、特に細菌やウイルスなどの病原性微生物やがん細胞などが、それらの病原体による疾患を治療する抗生物質や抗癌剤など(化学療法剤)の薬剤に対して抵抗力を持ち、これらの薬剤が効かない、あるいは効きにくくなることを指し、この場合「薬剤耐性」という語が用いられることがもっとも多い。 農学の分野では、殺虫剤に対する病害虫の耐性や、除草剤に対する植物の耐性が扱われることが多く、「薬剤抵抗性」「薬剤耐性」の用語が用いられる。この内容については、薬剤抵抗性を参照のこと。微生物や昆虫の薬剤耐性獲得は変異と選択による進化の最も身近な例の1つである。 医学、薬理学の分野で扱われる、他の疾患に対する治療薬や麻薬などの向精神薬を反復投与することで、ヒトや動物に対する効力が低下していく現象を指す「耐性」(drug tolerance)については、耐性 (薬理学)を参照のこと。 なお、特定の薬剤を与えることによりのみ生物の増殖を認めるものを「薬剤依存性」(薬剤要求性)と呼ぶ。 == 薬剤感受性と薬剤耐性 == 細菌やウイルスなどの病原性微生物によって引き起こされる感染症や、がん細胞の増殖によっておきる悪性腫瘍の治療法の一つとして、これらの病原体を殺したり、あるいはその増殖を抑制する化学物質を治療薬として投与する化学療法がある。化学療法に用いられる薬剤(化学療法剤)には抗細菌薬(抗生物質のほとんどがこれに当たる)、抗ウイルス薬、抗真菌薬、抗原虫薬、抗癌剤などが含まれ、それぞれに多くの種類が開発、実用化されている。患者に投与して治療を行うためのものであるため、ヒトに対する毒性は低いが病原体には特異的に作用するという、選択毒性があることが化学療法剤には要求される。このため、細菌やウイルスだけが持ち、ヒトには存在しない特定の酵素を阻害したり、細菌やがん細胞だけが細胞内に取り込み、正常なヒトの細胞は取り込まないなどの特徴を持ったものが、化学療法剤として用いられている。 これらの薬剤は、例えば抗細菌薬であればすべての細菌に有効、というわけではなく、薬剤の種類と対象となる微生物(またはがん細胞)の組み合わせによって、有効な場合とそうでない場合がある。ある微生物に対してある薬剤が有効な場合、その微生物はその薬剤に対して感受性(susceptibility) であると呼ぶ。これに対し、ある微生物に対してある薬剤が無効な場合には、(1) もともとその薬剤が無効である、(2) もともとは有効であったがある時点から無効になった、という二つのケースが存在する。この両者の場合を、広義には耐性または抵抗性であると呼ぶが、通常は(2)のケースに当たる狭義のものを薬剤耐性(drug resistance)または獲得耐性(acquired resistance)と呼び、前者は不感受性(insusceptibility)または自然耐性(natural resistance)と呼んで区別することが多い。例えば、元からペニシリンが効かない結核菌は「ペニシリン不感受性」、もともとはペニシリンが有効であったブドウ球菌のうち、ペニシリンが有効なものを「ペニシリン感受性」、ペニシリンが効かなくなったものを「ペニシリン耐性」と呼び、このうち、最後のペニシリン耐性ブドウ球菌が、一般には「薬剤耐性」と表現されることが多い。 薬剤耐性を獲得した微生物は、細菌の場合は薬剤耐性菌、ウイルスは薬剤耐性ウイルス、がん細胞は薬剤耐性がん細胞などのように総称される。また個々のものについては、上記した例のように、対象となる薬剤と微生物との組み合わせによって、ペニシリン耐性ブドウ球菌などと表記される。また、複数の薬剤に対する耐性を併せ持つことを多剤耐性(multi drug resistance)と呼び、医学分野では治療の難しさから特に重要視することが多い。また、ある薬剤に対する耐性が、それと類似の薬剤に対する耐性として働く場合を、交差耐性と呼ぶ。 抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)』 ■ウィキペディアで「薬剤耐性」の詳細全文を読む 英語版ウィキペディアに対照対訳語「 Drug resistance 」があります。 スポンサード リンク
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