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大地の子 : ウィキペディア日本語版
大地の子[だいちのこ]

大地の子』(だいちのこ)は、山崎豊子小説、また小説を原作としたテレビドラマ中国残留孤児・陸一心(ルー・イーシン)の波乱万丈の半生を描いた物語である。
1987年5月号から1991年4月号まで文藝春秋の月刊誌『文藝春秋』に連載され、1991年に同社から単行本が全3巻で刊行、1994年に文春文庫版が全4巻で刊行された(ちなみに山崎豊子の作品の中、文藝春秋で文庫版を刊行したのは『運命の人』と本作だけであり、他の作品は全て新潮文庫新潮社)で刊行されている)。
この作品を書くために、山崎は1984年から胡耀邦総書記に3回面会し、取材許可を取り、当時外国人に開放されていない農村地区をまわり300人以上の戦争孤児から取材した(山崎は「残留」という言葉があたかも孤児達が自分の意思で中国に残ったかのような印象を与えるとの理由から、残留孤児という呼称を使わなかった)。
2013年11月19日NHK総合テレビで放送されたクローズアップ現代「小説に命を刻んだ〜山崎豊子 最期の日々」において、山崎の肉声テープで「中国大陸のそこここで、自分が日本人であることも分からず、小学校にも行かせてもらえず牛馬の如く酷使されているのが本当の戦争孤児ですよと…、私はこれまで色々な取材をしましたが、泣きながら取材したのは初めてです。敗戦で置き去りにされた子どもたちが、その幼い背に大人たちの罪業を一身に背負わされて『小日本鬼子(シャオリーベンクイツ)』、日本帝国主義の民といじめられ耐えてきた事実、日本の現在の繁栄は戦争孤児の上に成り立っているものである事を知ってほしい。大地の子だけは私は命を懸けて書いてまいりました」とのコメントが紹介された。
1997年、作品内における表現の一部が、『卡子(チャーズ) 出口なき大地』(文春文庫ほか)の盗作であるとして、著者の遠藤誉から提訴されたが、最終的に遠藤の敗訴が確定した。
== あらすじ ==
信濃郷満蒙開拓団の長男・松本勝男は、日本の敗戦後、ソ連軍の攻撃などにより祖父と母を失い、妹とも生き別れになってしまう。父親は徴兵されており、勝男のいる満州にはいなかった。
過酷な体験のあまり、自分の身分や言葉など全ての記憶を失った勝男は、放浪中に人買いに捕まり、中国人農家に売られて酷使される日々を送ることになる。度重なる虐待に耐えかねて逃げ出したものの、再び人買いの手にかかり売られそうになった勝男を助けたのは、小学校教師の陸徳志(ルー・トウチ)であった。子供のない陸徳志夫妻は勝男に一心という名を与え、貧しいながらも実の子のように愛情をこめて育てる。
優秀な青年に育った一心は大連にある大学に進学。恋人である趙丹青に日本人であるがゆえに別れを切り出されるなど差別を受けながらも、中国の発展のため尽くそうと決心する。しかし、彼の背後には文化大革命の嵐が押し寄せつつあった。
やがて一心は、日本人であるという理由で槍玉に挙げられ、囚人として労働改造所に送られる。初めはダム建設の苛酷な労働を強いられたが、黄河の氾濫により全て徒労に終わる。その後さらに奥地の労改に送られた一心は、そこで日本語を話す華僑で、今は羊飼いの仕事をさせられている黄書海と知り合い、母国語である日本語を習得する。しかし日本語というかすかな生きがいを見つけたのもつかの間、他の囚人の脱走幇助の冤罪を着せられ懲役刑が確定してしまう。更にふとした怪我から破傷風にかかり生命の危機にさらされるも、後に妻となる看護師の江月梅に命を救われる。月梅は匿名で徳志に音信不通となっていた一心の所在を知らせる手紙を送り、徳志ははじめて一心の置かれている悲惨な境遇を知るに至った。徳志の命がけの嘆願と、共産党幹部となった親友・袁力本の奔走の甲斐あり釈放された一心は、命の恩人である月梅と結婚、日中共同の一大プロジェクトである製鉄所建設チームの一員として働くことになる。
一方、中国に協力を要請された日本の東洋製鉄では、一心(勝男)の実父である松本耕次を上海事務所長に派遣する。松本はかつて自分の徴兵中に満州で消息を絶った妻子の行方を今も求め続けていた。苦労の末、ようやく一心の妹であるあつ子(中国名:張玉花)を見つけ出した松本だが、寒村の農家に嫁がされた彼女は過労の果てに病(脊椎カリエス)を得て、すでに死の床にあった。同じ頃、一心もまた唯一の肉親である妹を探し、村にたどりついていた。あつ子の死を契機に、間近にいながら親子とは気づかなかった一心と松本は、ここで初めて互いの関係を知り、確執を越えて数十年ぶりの再会を喜び合う。
その後、プロジェクトの一環で日本に出張した一心は、松本の家を訪れる。しかし、この訪問が原因で、一心はほどなくして以前から彼を快く思っていなかった同僚(趙丹青の夫)の策略により産業スパイとして告発され、プロジェクトから外された上に内蒙古の製鉄所へ左遷させられてしまう。初めは失意に暮れていた一心だったが、やがて製品の改良などを通じて内蒙古の仲間達と深い絆で結ばれる。
時を経て、丹青は一心を陥れた夫の策謀を知り、共産党幹部に告発。冤罪が解けた一心は再びプロジェクトに復帰し、7年がかりで完成した製鉄所の高炉に火が入り、日中の参画者の心は一つになる。
プロジェクト終了後、一心は徳志の勧めで松本と父子水入らずの長江下りの旅行に出かける。雄大な長江を下る船の上で、松本は一心に日本へ来て一緒に暮らさないかと持ちかけた。日本の父と、中国の父。二人の父への愛情に一心の心は揺れ動くが、彼は苦悩の末、涙ながらに「私はこの大地の子です。」と答え、中国に残ることを決意するのであった。
なおドラマ版では、その後自ら左遷時代の仲間達が待つ内蒙古の製鉄所への転属を志願する後日談が加えられており、家族ぐるみの移住に先立ち一足先に内蒙古に向かった一心が、製鉄所でかつての仲間達と再会するシーンで物語は幕を閉じる。

抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)
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