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『大鴉』(おおがらす、The Raven)は、アメリカ合衆国の作家エドガー・アラン・ポーが1845年1月29日に発表した物語詩。その音楽性、様式化された言葉、超自然的な雰囲気で名高い。心乱れる主人公(語り手)の元に、人間の言葉を喋る大鴉が謎めいた訪問をし、主人公はひたひたと狂気に陥っていく、という筋である。学生であろうと指摘されることの多い〔Meyers, 163〕〔Silverman, 239〕主人公は、恋人レノーアを失って嘆き悲しんでいる。大鴉はパラス(アテーナー)の胸像の上に止まり、「Nevermore(二度とない)」という言葉を繰り返し、主人公の悲嘆をさらに募らせる。詩の中のいたるところに、ポーは伝承やさまざまな古典の隠喩を行っている。 ポーは『大鴉』はきわめて論理的かつ整然と書かれたものだと述べている。翌1846年に発表したエッセイ『構成の原理』(:en:The Philosophy of Composition)の中で、ポーは、批評家・一般読者両方の嗜好に訴えることのできる詩を作ることを意図したと解説した。この詩はチャールズ・ディケンズの小説『バーナビー・ラッジ』に出てくる人間の言葉を喋る大鴉に一部着想を与えられたのではないかと言われている〔Kopley & Hayes, 192〕。その複雑な韻律(rhythmおよびmeter)は、エリザベス・ブラウニングの詩『Lady Geraldine's Courtship』から借用したものである。 「イブニング・ミラー」紙(:en:New York Mirror)に掲載された『大鴉』のため、ポーはまたたくまに有名になった。『大鴉』はすぐに各紙に再掲載され、挿絵もつき、パロディも生まれた。その価値については異議を唱える批評家もいるものの、これまで書かれた有名な詩の1つであることに変わりはない〔Silverman, 237〕。 == あらすじ == 『大鴉』の冒頭、名前のない主人公は恋人レノーアを失ったことを忘れようと、忘れられた古い伝説を座って読んでいる。そこに部屋のドアを叩く音がする。主人公はドアを開くが、誰もいない。しかし、主人公の魂は刺激されてひりひりする。と、さっきよりわずかに大きな音が窓の方でする。主人公が調べに行くと、大鴉が部屋の中に入ってくる。大鴉は主人公を気にもとめず、パラスの胸像の上で羽根を休める。 主人公は大鴉の重々しい様が面白くて、戯れに大鴉に名前を聞く。すると大鴉が答える。「Nevermore(二度とない)」、と。大鴉はそれ以上何も言わないが、主人公は大鴉が人間の言葉を喋ったことに驚く。主人公はそれまで友人たちが希望と一緒に飛び去って行ったように、「友」たる大鴉も自分の人生からまもなく飛び立とうとしていると呟く。すると大鴉はそれに答えるかのように、再び「Nevermore」と言う。主人公はその言葉は、おそらく前の飼い主が不幸だったから覚えたもので、大鴉はそれしか喋れないのだと確信する。 それでも主人公はもっと大鴉と話してみたいと思い、大鴉の方を向く。そこでしばらく何も言わずに考える。主人公の心は失われた恋人レノーアの元に再び戻って行く。主人公は部屋の空気が濃くなって、天使がいるように感じる。主人公はその連想に腹を立てて、大鴉を「邪悪なる存在」「予言者」などと呼ぶ。主人公がわめきちらすたびに大鴉は「Nevermore」を繰り返す。最後に主人公は大鴉に、天国でレノーアと再会できるかを尋ねる。大鴉がまたしても「Nevermore」(二度とない)と答えると、主人公は叫び声をあげ、大鴉に冥界の岸に戻るよう命令する。しかし、大鴉は動かない。おそらく主人公がこの詩を詠んでいる時にも(冒頭が過去の回想のようにはじまる)、大鴉はパラスの胸像の上にじっとしている。主人公は最後に、大鴉の影の下に魂を閉じこめられ、「Nevermore」と叫ぶ事しかできなかった。 抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)』 ■ウィキペディアで「大鴉」の詳細全文を読む スポンサード リンク
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