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実子 : ウィキペディア日本語版
嫡出[ちゃくしゅつ]

嫡出(ちゃくしゅつ〔このほか常用漢字表の表外の音訓となるが「てきしゅつ」の読みもある(法令用語研究会 『有斐閣法律用語辞典』有斐閣、2006年、1005頁及び『法律学小辞典 第4版補訂版』2008年、905頁参照)〕)とは、婚姻関係にある男女(夫婦)から生まれること。対義語は「庶出」である〔谷口知平編著 『新版 注釈民法〈21〉親族 1』 有斐閣〈有斐閣コンメンタール〉、1989年12月、91頁〕。
実子の嫡出子には、出生と同時に嫡出の身分を取得する「生来嫡出子」のほか、準正によって嫡出子となる「準正嫡出子」がある(準正嫡出子を参照)。なお、法定親子関係である養子は法律上の血縁関係が擬制され縁組の日から嫡出子の身分を取得する(民法第809条。養親子関係については養子を参照)。
「嫡出」という語は「正統」という意味を持ち、「庶出」という語は「異端」という意味を持っている。子は生まれの正統や異端を選べないのに、子を「庶出」「異端」呼ばわりして蔑むのは誤った行為だという批判もあり〔二宮周平著 『家族と法』 岩波書店〈岩波新書〉、2007年10月、7頁〕、近年では「嫡出子」を「婚内子」、「非嫡出子」を「婚外子」と称する場合もある。
日本の法制においては婚姻の有無とは関係なく血族関係は発生するが、ただし、後に述べられるように非嫡出子において父子関係が発生するためには認知を要する(779条784条)〔谷口知平編著 『新版 注釈民法〈21〉親族 1』 有斐閣〈有斐閣コンメンタール〉、1989年12月、91-92頁〕。
== 嫡出の法理 ==
歴史的には、子が社会的にその存在を公認されるためには、婚姻関係にある男女から生まれることが重要な意味を持つとされた(嫡出の法理)。嫡出子とは婚姻関係にある男女間に生まれた子をいい〔千葉洋三・床谷文雄・田中通裕・辻朗著 『プリメール民法5-家族法 第2版』 法律文化社、2005年11月、78頁〕、非嫡出子とは婚姻関係にない男女間に生まれた子をいう〔遠藤浩・原島重義・広中俊雄・川井健・山本進一・水本浩著 『民法〈8〉親族 第4版増補補訂版』 有斐閣〈有斐閣双書〉、2004年5月、172頁〕
1942年以前の日本の民法(明治民法)は、養子でない子を『嫡出子』、『庶子』(婚姻外で生まれ父が認知した子)、『私生子』(婚姻外で生まれ父の認知を受けない子)の三つに分け、私生子より庶子を優遇し、庶子より嫡出子を優遇していた〔富岡康郎(梶康郎)『民法正義』第4巻(親族編)、松陽堂、1903年、116-117頁。梶康郎『六法釈義全書』(民法・商法・民事訴訟法・国際公法・経済学)、法曹閣、再版1924年、205-207頁。〕。この年2月12日の改正で私生子と庶子を併せて「嫡出ニ非サル子」という表現に改めた〔昭和17年法律第7号。国立公文書館デジタルアーカイブ「民法中改正法律・御署名原本・昭和十七年・法律第七号 」〕〔。現行の条文で嫡出子の語は残るが非嫡出子はなく、「嫡出でない子」と表現される。
これらの区別は法律婚を重んじる趣旨とされるが、親も選べず、生まれの流派も選べない子供の立場を擁護する観点からは厭わしいと見て問題点も指摘されている〔遠藤浩・原島重義・広中俊雄・川井健・山本進一・水本浩著 『民法〈8〉親族 第4版増補補訂版』 有斐閣〈有斐閣双書〉、2004年5月、161頁〕。歴史的に見ると、西洋では、非嫡出子は"nobody's child"(何人の子にもあらざる子)や"illegitimate child"(違法な子供、異端の子供)として軽蔑され差別されて来たが、近年では子供を尊敬する立場から"illegitimate"という語は廃れ、"extramarital"(結婚外)という語が使用されている。
日本では、家制度との関係においては比較的優遇されてきたとされる〔。しかし、日本でも婚外子は「私生児」として軽蔑され差別されて来た。そして、「私生児」という語が廃れた現在でも、全出生児に対する婚姻外出生児の割合は低い。その原因としては、婚外子への軽蔑や差別が根深いことが背景にあるとみられている〔千葉洋三・床谷文雄・田中通裕・辻朗著 『プリメール民法5-家族法 第2版』 法律文化社、2005年11月、81頁〕。
現代の欧米諸国では、非嫡出子も嫡出子とほとんど同じ法律上の地位が認められるに至っている。しかし日本においては、現行の日本民法の民法第900条第4号の法定相続分の規定などに差別があるとして議論されてきた〔。民法900条第4号については、2013年9月4日に最高裁判所がこの規定が違憲であるとの判断を下した〔「婚外子相続差別は違憲 最高裁大法廷」日本経済新聞 2013年9月4日〕。そして、この最高裁決定を受けて、平成25年12月11日法律第94号により民法900条4号は改正されている。

抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)
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