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小田急1800形電車 : ウィキペディア日本語版
小田急1800形電車[おだきゅう1800がたでんしゃ]

小田急1800形電車(おだきゅう1800がたでんしゃ)は、小田急電鉄(小田急)が1946年から1981年まで運用を行なった通勤車両である。
第二次世界大戦後の東京急行電鉄大東急)時代に運輸省鉄道軌道統制会から国鉄63系電車の製造割り当てを受けた車両〔生方 (1981) p.76〕で、その後相模鉄道に6両が譲渡された〔が、同数の同型車両を名古屋鉄道から購入した〔。また、戦時中に焼失した旧国鉄制式電車の払い下げを受け、復旧した上で1820形として運用された車両もあったが、これらは後年の車体更新の際に仕様が統一され、1800形に編入された〔。小田急では初となる全長20m級の大形車両で〔『鉄道ピクトリアル アーカイブス1』p.59〕、収容力を生かして朝の通勤ラッシュ時の輸送に重用されたが、加速性能が低いことから〔生方 (1981) p.77〕1981年までに全車が廃車となり、秩父鉄道に譲渡された〔。
本項では以上の経緯から、国鉄で焼失した車両を譲受し、復旧工事を施工した上で車籍編入した1820形についても、秩父鉄道800系電車として譲渡された後についても記述する。また、国鉄63系電車については「63形」と記述する。
== 登場の経緯 ==
戦時中の空襲による各施設の焼失・破壊やそれを避けるための地方疎開、それに物資・人員の不足などが原因で第二次世界大戦直後の日本国内では、各種工場の生産能力は著しく低下していた〔吉川 (1987) p.56〕。このような状況下で鉄道車両工場の生産能力もなかなか回復せず〔、その一方で、鉄道事業者も空襲の被害や戦時中の酷使による車両故障の頻発、それに物資不足に起因する補修用部品の確保困難などから稼動車両が少ない状態で〔、当時の東急も決して例外ではなかった。このため、電動車でありながら搭載すべき主電動機のない車両などが続出し〔生方 (1981) p.109〕、小田原線江ノ島線で運用される90両ほどあった車両のうち、わずか28両しか使用できない状態になっていたこともあった〔。
しかも、戦時中からの燃料統制は継続していて自動車は使えず陸上公共交通機関は事実上鉄道に限られ、さらに都心部から周辺の農村地帯への食料買い出しなどの需要増大要因もあって、この時期、日本国内の鉄道各者では一様に乗客が急増した。
このような事情から、日本国内の工業生産能力が最悪の状況にあり、また旅客輸送需要がピークに達しつつあった1945年末から、運輸省傘下の鉄道軌道統制会(のちの鉄道車輌統制会)では工場生産設備の効率的な運用と部材調達の容易化を目的として、特に状況の悪い私鉄各社について各社で独自設計の車両を製造するのを認可する代わりに、国鉄向けに製造された63形を私鉄へ割り当て〔『鉄道ピクトリアル』通巻546号 p.87〕、その代わりに割当先各社が保有する小型車を地方中小私鉄に供出させる制度を設けた〔。この制度の下で、63形は同形式の受け入れ・運行が可能で、しかも在籍車両の状況が著しく悪く、また輸送需要の増大が特に深刻であった東京急行電鉄(大東急)・東武鉄道(東武)・名古屋鉄道(名鉄)・近畿日本鉄道(近鉄)〔南海線。後に南海電気鉄道へ譲渡され、同社本線となる線区。〕・山陽電気鉄道(山陽)に割り当てられた〔。
このうち、東急では車両限界架線電圧などから〔、この63形を小田原線・江ノ島線で運用することとなった〔。当初は1947年(昭和22年)度までに50両を投入し、既存の中形車1200形から1600形を東横線に、1150形を厚木線(現在の相鉄線)に転属させる予定だったが、現場での評判が悪く1946年(昭和21年)度割り当て分の20両に留まったほか、その一部は厚木線に投入された〔『鉄道ピクトリアル』通巻442号 p.112〕〔『鉄道ピクトリアル』通巻468号 p.107〕〔『鉄道ピクトリアル』通巻511号 p.105〕。
小田原線と江ノ島線だけで見れば1600形の次に導入された形式であるが、当時東急の一路線で、歴史的にも小田急の子会社にあたる帝都電鉄が建設した井の頭線に導入された新形式車両が1700形であったため〔、それに続く1800形と付番・導入されることになった〔〔その後、1900形・1910形(2000形)の後に製造された特急専用車1700形となっている。〕。

抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)
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