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山陽電気鉄道5000系・5030系電車 : ウィキペディア日本語版
山陽電気鉄道5000系電車[さんようでんきてつどう5000けいでんしゃ]

山陽電気鉄道5000系電車(さんようでんきてつどう5000けいでんしゃ)は、山陽電気鉄道が所有する3扉セミクロスシート通勤形電車である。
当初は2700系300形270形といった吊り掛け駆動方式を採用する旧性能車の置き換え用として計画・製造され、普通列車運用に充当されていたが、その後の増備・増結によって特急運用にも充当されるようになり、2011年現在では直通特急をはじめとした優等列車運用を主体に使用されている。
製造は全車とも川崎重工業兵庫工場が担当している。
山陽電気鉄道では車両の形式称号について書類上は「クモハ」や「モハ」などの車種を示す記号を用いているが、現車では車内を含め一切表記しておらず、また車両番号が重複しないよう同一数字を用いる形式では奇数・偶数で車種を分けて管理している。このため、本記事の以下の記述では、車種構成の項以外についてはこれらの記号を基本的に省略し、必要に応じて (M'c) や (M) などの略記号を付して解説する。また、解説の便宜上、神戸西代三宮)側先頭車の車両番号+F(Formation=編成の略)を編成名として記述(例:5020以下6両編成=5020F)する。

== 概要 ==
本系列製造開始以前の山陽電鉄の主力車種であった3000・3050系は、従来の2000系が営業政策や運用上のさまざまな方針の変化に翻弄されて極めて複雑かつ多様な車体・機器構成〔神戸高速鉄道を介した阪神本線や阪急神戸線への乗り入れ規格が二転三転したことによって電装品が複雑なものとならざるを得なかった。しかも、混雑緩和を図るためにロングシートを採用するか、長距離客に配慮してクロスシートを採用するかで社内の意思統一を図るのに苦労したことから、1系列の中で2扉・3扉・セミクロスシート・ロングシートが混在してしまった。加えて車体構造の比較検討のために普通鋼・スキンステンレス・アルミの3種の車体が並行して製造されたため、3両8編成24両が在籍したものの同一仕様の編成が3編成しか組めず、台車も空気ばねと金属ばねで3系統が混在する、という保守・運用上極めて扱いの難しい系列となった。〕となって運用・保守の両面で不都合であったことへの反省から、3扉ロングシートという仕様を墨守して1964年から1985年まで22年の長きにわたり、合計133両が製造〔2000系や2300系からの編入車も含めると総数は148両となる。〕された。
この3000・3050系は、神戸高速鉄道開業前後を中心とした高度経済成長期の山陽電鉄の輸送力増強に大きく寄与したほか、その後の増備では老朽化した在来車〔700250820・850形など。いずれも旧式な吊り掛け駆動方式を採用する。〕の置き換えに充当され、結果として車両性能・輸送力の標準化と接客設備の品質向上、それに保守の合理化に大きく貢献した。
こうしてマイナーチェンジを加えつつ長期間にわたって製造された3000・3050系であるが、並走する競合線区である日本国有鉄道(国鉄)山陽本線新快速快速用の主力車両がクロスシート117系1980年までは新快速・快速に153系を使用。〕とセミクロスシートの113系の各系列であったことから、それらと比較した場合、接客設備面で明らかに見劣りした〔座席は長距離客に配慮して座面が低く奥行きの深いロングシートを採用していたものの、京阪神間での並行各私鉄との対抗上破格のハイグレードな内装を備え、シートピッチの広い転換クロスシートを備える117系とは比べるまでもなかった。〕。さらに、3000系の基本設計は1960年代中期のものであり、今後もそのまま増備を続けた場合、接客設備面のみならずシステム面でも陳腐化が進むことが否めなかった。こうした事情から、1983年には現在の山陽電気鉄道が宇治川電気から独立して50周年を迎えたこともあり、その記念の意味も込めて3000系の後継となる新型車の検討が進められ、クロスシートや新しい制御方式の試作車として1編成を製造することが計画された。
しかし、こうした新形式車両の投入方針は、旧型車の置き換えと国鉄分割民営化対策の二点から急遽変更されることとなった。
この頃には旧型車の置き換えも最終段階に入り、1985年末には2700系3両、300形8両、270形15両の3形式26両を残すのみとなっていた。これらは、神戸高速鉄道開業に伴う同社線乗り入れに適さない在来車の淘汰を目的とした車体更新車として、1960年代に車体を製造〔2700系は700形、300形は200形、270形は100形の車体更新車である。〕したものであった。そのため車体は陳腐化していなかったが、流用品を主体とする主要機器の老朽化が著しく、さらに旧弊な吊り掛け式の駆動装置を採用するため、乗り心地や軌道への負担の点で問題があった。また、15m3扉の300形と17m2扉の270形といった中小型車の存在は、輸送力確保と整列乗車の面からも問題があった。
さらに、国鉄分割民営化の内容が明らかになるにつれて、山陽本線が従前にも増して強力なライバルになることが予想された。そこでまとまった数の新形式車両を投入して一気に旧性能車を置き換え、車両冷房化を含めた接客レベルの向上を図ることで乗客の逸走を防ぐことが営業政策上強く求められた。
このような状況下で計画された本系列は、当時の私鉄電車ではあまり類例のない普通列車専用のセミクロスシート車として、山陽としては神戸高速鉄道開業時以来の大量増備となる、3両編成7本の計21両が一挙に製造されることとなった。
以後、本系列は1995年までに合計60両が製造された。

抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)
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