|
崩壊定数(ほうかいていすう、decay constant、disintegration constant〔小田稔他編 『CDーROM版理化学英和辞典 』、研究社、1998年、項目「崩壊定数」より。ISBN 978-4-7674-7100-6〕)または壊変定数(かいへんていすう)〔 吉村壽次ほか編、『化学辞典 第2版 』、森北出版、2009年、項目「崩壊定数」より。ISBN 978-4-627-24012-4〕とは、放射壊変をする原子核または素粒子が微小時間d''t'' 内に壊変する確率をλd''t'' とあらわしたときのλのことである〔 〕。素粒子物理学では半値幅(half-width)という〔 日本数学会編、『岩波数学辞典 第4版』、岩波書店、2007年、項目「素粒子論」より。ISBN 978-4-00-080309-0 C3541 〕。 放射壊変との関係は、放射壊変の微分方程式 : より原子数に比例することがわかるがこの比例定数λのことを崩壊定数と呼ぶのである〔。 また、半減期''T''1/2 との関係は である〔。すなわち、崩壊定数と半減期は反比例の関係にあり、また平均寿命τとも : と逆数の関係となっている。半減期が大きいほど崩壊定数は小さくなり、逆に半減期が短いほど、崩壊定数は大きくなる。定義の通り確率とみなせば、崩壊定数が大きいとは崩壊する確率の大きいことであるから、沢山崩壊するため半減期が短くなる、とも理解できる。 もう少し具体的にいえば、微分方程式 d''N'' (t) = -λ''N'' (0)d''t'' を一次近似とみなせば、微小時間d''t''を 普通の時間''t'' とおいて、単位時間''t'' 後に崩壊している原子数が であらわせるということである。ここで、差分である時点の放射能を求めるとき、簡単のため原子数を1とおけば が単位時間後の残留放射能である。これを微分で一次近似するとまず とする。これが差分でのある時点''t'' での残留放射能の割合である(原子数まで考えるならば両辺に原子数''A'' を掛ける)。半減期ではある時点での残っている割合を計算するが、この式では減った割合を計算していることに注意せよ(1はe0 でもあるが、そのように式をみなせば補確率''q'' = 1 - ''p'' とも理解できる)。この時刻''t'' での微分係数を比例定数とする''t'' に関する一次式が微分での一次近似となるから、まず導関数を求めて ''t'' = 0とおけばe0 = 1であるからλが比例定数となる。つまり、 であらわせることがわかるだろう。 簡単な例をあげれば10個の原子核が単位時間内に崩壊する確率が10%であれば、確率ゆらぎや測定誤差を無視すれば単位時間後には10×0.1×1 = 9個となっている。同様に2単位時間後には8個となっている・・・と一次式で近似して計算できる。あくまで半減期ではなく一次式で近似しているのであるため、時間が大きいほど、あるいは崩壊定数が大きいほど(指数関数の変数、つまり崩壊定数が小さくて時間が大きいとも数学的にはみなせるため)誤差が大きくなる。この考えを応用すればベクレルなどの物理量を微分で計算することができる。 崩壊定数は粒子のエネルギー準位の幅に比例する〔。 == 数値例 == たとえばプルトニウム239の半減期を24000年とおけば、崩壊定数は で与えられるが、これは1秒間に1個のプルトニウム239が崩壊する確率を表していると解釈できる。1gの比放射能を計算すれば、原子量を計算すると、アボガドロ数を6×1023とおくと1グラムあたりのプルトニウム239の原子量は である。これが1秒間に崩壊したとすれば となり、比放射能が求められる。実際、差分で比放射能を計算してみると と一致する。プルトニウムを例に用いたのは上にも述べた通り、半減期が長いため崩壊定数が小さく、微分での近似との誤差が問題とならないからであるが、実用上は崩壊定数が十のマイナス何乗オーダーであれば十分誤差は小さい。 抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)』 ■ウィキペディアで「崩壊定数」の詳細全文を読む スポンサード リンク
|