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川北対合衆国事件 : ウィキペディア日本語版
川北対合衆国事件[かわきたたいがっしゅうこくじけん]

川北対アメリカ合衆国事件(かわきたたいあめりかがっしゅうこくじけん、''Kawakita v. United States'')は、二重国籍者の地位と反逆罪の成立を巡り争われたアメリカ合衆国の刑事事件である〔Weis, P. (1979) ''Nationality and Statelessness in International Law'' (ISBN 9780883558225) New York: Hyperion Press, pp. 195 f.〕。通称、川北事件
この事件の被告人川北は、日本とアメリカ合衆国の両国から国民として扱われる状態(二重国籍)であった1943年から1945年にかけて、アメリカ合衆国市民を含む連合国軍戦争捕虜虐待し敵国に利した咎で、戦争終結後アメリカ合衆国において反逆罪で起訴された〔。それに対して、川北は、当時アメリカ合衆国市民権を喪失していたので、無罪であると主張した〔Kim, p. 415.〕〔''Takehara v. Dulles'', 205 F. 2d 560 (1953).〕。反逆罪は、その行為主体がアメリカ合衆国市民に限られ、外国人には適用されない〔18 U.S.C. § 2381.〕からである〔Kim, pp. 57, 415 f.〕。
裁判所は第一審から終審までいずれの法廷も、川北のアメリカ合衆国市民権喪失の主張を認めず、川北が二重国籍者であり、反逆罪について有罪と判断し、死刑を言い渡した〔Kim, p. 57.〕。1952年合衆国最高裁判所が下した判決は、他国民としての権利の享受や義務の遂行が原則としてアメリカ合衆国市民権の喪失事由にならないことを示したリーディングケースであり、後年多くの裁判で重国籍者の権利を擁護する根拠として引用されている〔〔Alexander, P., et al. (1971) "Development of the Defense of Sovereign Compulsion", Loeb, A. ''Michigan Law Review'', Ann Arbor: Law School of the University of Michigan, vol. 69, 5:901.〕。
== 事件の経緯 ==

=== 生い立ち ===
川北は、1921年日本国籍を持つ両親の間にカリフォルニア州で生まれた。両親はともにアメリカ合衆国の国籍市民権を有していなかったが、川北はアメリカ合衆国の領内で生まれたことから、出生地主義の原則により出生と同時にアメリカ合衆国の国籍と市民権を得た〔Levinson, p. 116.〕。
また、父が日本国民であることから、川北は出生と同時に日本国籍を取得した〔下嶋、213頁。〕。しかし、両親が日本の領事館に彼の出生届を出さなかったために、戸籍には記載されなかった。当時の日本の国籍法には国籍留保制度がなく、在外公館への届け出は日本国籍取得の必要条件ではなかった〔下嶋、213 - 215頁。〕〔Malkin, p. 23.〕。
川北の父は1906年にメキシコに出稼ぎに行き、数年後カリフォルニアに移住し州内を転々とした後、米墨国境の街インペリアル郡カレクシコに定住した〔下嶋、12頁。〕。父はその後、同郡の郡庁所在地エルセントロの日本人会会長を務めるまでに成功した〔下嶋、13頁。〕。
川北一家はカレクシコのユニオン教会に通っていたが、同じ教会に通う日系二世にアイバ戸栗がいた〔Shibusawa, p. 141.〕。アイバ戸栗も「東京ローズ」として川北と同じく戦後アメリカで反逆罪に問われることになる。両者の類似性から、川北は「男性版東京ローズ」とも言われる〔朝日新聞社編 (1990) 『現代日本 朝日人物事典』 (ISBN 9784023400511) 朝日新聞社、501頁。〕が、アイバ戸栗が1970年代にアメリカ合衆国市民権を取り戻し名誉を回復し、晩年にはアメリカ合衆国の愛国者として称賛された〔World War II Veterans Committee, "Setting the Record Straight" , ''World War II Chronicles'' 2005年冬版。2009-07-26閲覧。〕のに対し、川北はアメリカ合衆国市民権を剥奪されたままであった点が異なる〔Shibusawa, p. 175.〕。

抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)
ウィキペディアで「川北対合衆国事件」の詳細全文を読む



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