|
アメリカ合衆国の警察(アメリカがっしゅうこくのけいさつ)は、国家が連邦制であることに加え、自治の権限が高いことから、地方公共団体(郡、市、町、村の各政府が、自組織が治める領域(管轄。多くは行政区画)ごとに独自の警察を設置できる。連邦と州は一国。日本の皇宮護衛官、国会議事堂での衛視、麻薬取締官、麻薬取締員、自衛隊での警務官、廃止された鉄道公安職員や郵政監察官のような特別な法執行機関も多数存在し、日本では考えられないような組織にも警察権が与えられている。 警察と言えば良く知られるのがポリス(Police)であるが、各州の郡などに置かれるシェリフ(Sheriff)や、郡や市町村におかれるマーシャル(Marshal)、コンスタブル(Constable)、総称して保安官の方が歴史が古い。ポリスの起源は、保安官を補佐する目的で設置された市民自警団まで遡る。自警団は市長が召集するなどし、保安官を補佐して治安維持に当たっていた。各地の自警団は19世紀から"Police Department"として改組・設置されていき、1838年にボストン市警察〔History of the Boston Police 〕、1845年にニューヨーク市警察〔NYPD History 〕、1889年にロサンゼルス市警察〔The LAPD: 1850-1900 〕が発足している。何れも夜警や、市や郡の法執行官を補佐する自警団を起源としている。以後は各地で警察が改組・設置されていき、今日に至る。 この歴史が示す通りポリス以外にも警察活動を行う法執行機関が非常に多く、日本では、マーシャルやコンスタブルなども保安官と訳されることが多い。独りで地域を護るタウン・マーシャルのようなものから約38,000名の警察官を擁するニューヨーク市警察まで、法執行機関の数は官民合わせて20,000前後あるとも言われ、都市部では法執行官でさえ自分の管轄内に知らない法執行機関があるほど複雑である。 == 職員 == 全米に法執行官(日本の刑事訴訟法における司法警察職員が近い)は約740,000人いるといわれており、そのうち12%前後が女性である。法執行官はポリス・オフィサー(police officer)、ピース・オフィサー(peace officer)、ロー・エンフォースメント・オフィサー(law-enforcement officer)、スウォーン・オフィサー(sworn officer swornはswearの過去分詞で「(法を遵守し正しく執行することを)宣誓した」)などと呼ばれ、それぞれの管轄・権限内で警察業務を担っている。 * ニューヨーク州:刑事訴訟法により、ポリス・オフィサーとピース・オフィサーについて定義され、ニューヨーク市独自のスペシャル・パトロールマンなどについても細かく規定されている。ほとんどのポリス・オフィサーと一部のピース・オフィサーは勤務時および非番時の拳銃携帯を許可されているが、意外にも、勤務時であっても許可や命令がなければ拳銃携行が許可されていない法執行機関も存在する。 * カリフォルニア州:刑法で明記された法執行官全ての法的名称はピース・オフィサーであり、シェリフ、パトロールマン、レンジャーなど、どのような呼称で呼ばれようが、カリフォルニア州のピース・オフィサー資格を持つ者(所属機関のIDカードに「Peace Officer」と明記されている)は、雇用主に関わらず、州内全域で常時警察権を有する。 実力主義の慣習は法執行機関でも例外でなく、日本の警察のキャリア制度のようなものは存在せず(アメリカ合衆国の州は個々で一国に相当し、自治体職員と州政府職員や連邦捜査官は全く別の存在)、全ての法執行官は巡査など最下級の階級から職業人生を始め、能力のある者が「警察長」「局長」などの最上位階級まで上り詰める。2013年現在のニューヨーク市警察の警察長であるフィリップ・バンクス三世は1986年に採用され、81分署の巡査からその経歴を始め今日に至る。また2015年現在のロサンゼルス市警察の警察長であるチャーリー・ベックも、2年間のロサンゼルス市警察予備警察勤務(ボランティア)を経て1977年に巡査に任じられ、同市警察で経歴を重ねて今日に至っている。 終身雇用が基本の日本の警察官と異なり、より良い雇用条件や栄達を求めて他組織へ転職する法執行官も珍しくない。アメリカの法執行官向けウェブマガジンなどには、様々な機関の職員募集広告が掲載されている。同誌でみると、巡査級だけでなく、巡査部長級以上の管理職級を募集する機関も多い。大学以上の高等教育機関で犯罪学・犯罪心理学等の専門教育を受けていれば、より良い転職先を求めることもできる。警察本部長級であれば、経営学や法学などの学位や法執行官の高級幹部課程が履修済みであることなど、かなり高等な条件が定められている。日本と同じような警察官採用試験もあるが、頻度は組織によって大きな差があり、年一回程度のところから、ニューヨーク市警察のように平日は毎日のように実施する機関まで幅広い〔NYPD Recruit 〕。 こうして転職がある一方で州や自治体でも猟官制が取られていることから、州知事や自治体の首長、保安官が交代したことで警察職員の中には解雇される者や新たに任命される者も出てくる。ヴァージニア州のハンプトンでは2009年に保安官選挙が行われたが、保安官助手の一人が落選した保安官候補のフェイスブックに「イイね!」をつけていたことから、保安官によって罷免されるということがあった〔Virginia deputy fights his firing over a Facebook 'like' CNN2012年8月10日〕。2012年の時点では不当解雇として係争中である。 このように、日本とは違って法執行官の雇用形態はより「民」に近く、また内務調査などで厳しい追及を受けることもある。そこで法執行機関労働者の権利の擁護を目的として労働組合が存在し〔ロボコップ2、刑事ニコ/法の死角を参照〕〔普通は管理職(巡査部長級以上)は労働組合員になれないのだが、ニューヨーク市警察には巡査組合 、巡査部長組合 、警部補組合 、警部組合 など、階級ごとに組合が存在している。尚、警部組合への加入はキャプテン(警部級)だけでなく、警部と同じく分署長を担うデピュティ・インスペクターやインスペクター(警視・警視正級)、より上級のデピュティ・チーフ(警視正~警視長級)、警察医()も可能。実質的に中級管理職警察官組合となっている。〕、ストライキが打たれる事もある。全米各地の警察に労働組合があるが、それらの連合体としてロビー活動を行っているのが(NAPO-National Association of Police Organizations )である。 抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)』 ■ウィキペディアで「アメリカ合衆国の警察」の詳細全文を読む 英語版ウィキペディアに対照対訳語「 Law enforcement in the United States 」があります。 スポンサード リンク
|