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後期重爆撃期 : ウィキペディア日本語版
後期重爆撃期[こうきじゅうばくげきき]
後期重爆撃期(こうきじゅうばくげきき、英語:Late Heavy Bombardment, lunar cataclysm, LHBとも)とは、天文学地球惑星科学において41億年前から38億年前の期間を指す言葉である。ここで言う「後期」とは星間物質の集積(衝突)による惑星の誕生・成長(:en:planetary accretion)の時期を前期とし、惑星形成後の衝突を示したものである。
この時代にはに多くの隕石衝突によるクレーターが形成され、地球水星金星火星といった岩石惑星も多くの天体衝突を受けたと考えられている。後期重爆撃期の主な証拠は月の石の年代測定から得られたもので、天体衝突に由来する月面の溶融岩石の大部分がこの短い期間に作られたと示されている。
後期重爆撃期の原因については諸説が唱えられているが、広く合意を得たものはない。有力な説の一つとしてはこの時期に巨大ガス惑星の公転軌道が変化し、その影響で小惑星エッジワース・カイパーベルト天体の公転軌道の離心率が上昇、一部が岩石惑星の領域にまで到達したというものがある。一方で後期重爆撃期の存在に懐疑的な見方もある。月サンプルの年代の偏りは見かけ上のもので、採取された試料が一つの衝突盆地に由来するとすれば後期重爆撃を仮定する必要はないというものである。
== 証拠 ==
後期重爆撃期の主要な証拠はアポロ計画で集められた月の石の放射年代測定から得られた。天体衝突による溶融物の大半は、直径10 kmほどの小惑星や彗星が、直径数百 kmのクレーターを生じるような衝突を起こしたときに作られたと考えられている。アポロ15・16・17号の着陸地点は、この種の衝突盆地である「雨の海」、「神酒の海」、「晴れの海」の近くが選ばれた。
計画で持ち帰られた溶融物を分析したところ、形成年代が38億年前から41億年前の短い期間に集中していることが判明した。1970年代中ごろにこの事実に最初に気づいたのは、フアド・テラ (Fouad Tera)、ディミトリ・パパナスタシュー (Dimitri Papanastassiou)、ジェラルド・ワッサーバーグ (Gerald Wasserburg) らだった。彼らは今から39億年前に前後して月で隕石の衝突頻発が急増したという仮説を提案し、この事件を「lunar cataclysm(月の大激変)」と呼んだ。これらの溶融物が本当に3つの衝突盆地に起源を持つものならば、3つの主要な盆地が短期間に形成されたことに加え、層序学的観点から見て他の多くのクレーターや衝突盆地もこの短期間に作られたという証拠となり得た。
後期重爆撃仮説は発表当時は確証には至らなかった、月から飛来した隕石などのデータが蓄積されるにつれ次第に広く受け入れられるようになった。月隕石は月面のランダムな地点に起源を持ち、少なくともその一部はアポロの着陸地点から離れたところに由来するはずだった。長石を多く含み、月の裏側から飛来した可能性のある隕石の年代測定が行われたが、その中に39億年より古いものは存在せず、仮説と一致していた。ただし形成年代はアポロの月の石ほど短期間に集中しておらず、25億年前から39億年前の間に分散していた。
クレーター直径の分布の調査によると、後期重爆撃期には月と水星に同じ系列の隕石が衝突した可能性が示されている〔Strom, 1979〕。水星の重爆撃期が月と同様だったと仮定すれば、水星最大の衝突盆地「カロリス」は同様の月面地形「東の海」や「雨の海」に相当し、水星の全ての平地は今から30億年前以前に形成されたことになる。

抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)
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