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性的志向 : ウィキペディア日本語版
性的指向[せいてきしこう]

性的指向(せいてきしこう)()は、いずれの性別恋愛性愛の対象とするかをいう、人間の根本的な性傾向のことを指し、性指向ともいう。無意識に形成されるとされ、大きく「異性愛」、「同性愛」、「両性愛」に分類される。性的指向を持たない場合は「無性愛」となり、これを便宜的に性的指向の中に分類する場合もある。
*性別以外の性欲に関係する好みを表す性的嗜好とは別であるが、似た語彙で同音であるため混同されることが多い。「性的志向」という表記は誤り。
== 用語 ==
主な性的指向の定義。
* 異性愛(いせいあい)とは、自身の性別とは異なる性別の者へ恋愛感情や性的願望を抱くこと。
* 同性愛(どうせいあい)とは、自身の性別と同じ性別の者へ恋愛感情や性的願望を抱くこと。
* 両性愛(りょうせいあい)とは、「男女」という2つの性の両方へ恋愛感情や性的願望を抱くこと。男女が恋愛対象のバイが殆どを占めるが、男性とトランスジェンダー(女装男性)、女性と女装男性、女性と男装女性などの組み合わせもある。
* 多性愛(たせいあい)とは、「男女」のほか、トランスジェンダー(女装男性や男装女性など)、両性具有などを含め、3つ以上の性の者へ恋愛感情や性的願望を抱くこと。
* 全性愛(ぜんせいあい)とは、「男女」のほか、トランスジェンダー、両性具有などを含め、あらゆる人々に恋愛感情や性的願望を抱くこと。
ゲイライターの伏見憲明は、自身の性的指向は、「マスターベーションをする時に、どの性を想像するかで分かる」と主張している〔『プライベート・ゲイ・ライフ―ポスト恋愛論』(学陽書房,伏見憲明)。〕が、厳密にその人の性的快楽や興奮の対象の性別と実際の恋愛対象や性交の対象となる性別が一致する必要はないと考えられる。〔詳しくは同性愛の「同性愛の定義」の項の「同性に対して性欲を感じる人」およびフェティシズムの「フェティシズムの誤用」の項を参照。〕

近年の研究によれば異性愛者は全世界の人口の約90%以上を占めるとの説がある。マジョリティである異性愛者(ノーマル)以外の性的指向の者は、異性愛中心の一般社会の日常(学校や会社、その他の公共の場所、コミュニティ等)において、いくつかの宗教文化風土、社会的に容認されない場面があったり、そもそも概念として存在すらしないものとなっている実際などから、
自らの性的指向が周囲とは違うということに自ずと気づくことになり、性的アイデンティティーを意識せざるを得ない流れを踏むことが多い。
異性愛も性的指向のひとつであるが、異性愛者は基本的に自らの性的指向と法制度社会制度、一般常識などが一致しており、そうしたなかで男性が女性に、女性が男性に惹かれるというベーシックに流れる性的指向の存在自体について、LGBTのように自己の指向を客観視、俯瞰して悩んだり、特別な意識のし方をし続けなければならない状況はほとんど発生し得ない。
異性愛の概念と一致しない指向は異常であるとか、特別であるといったような思考というのは、マジョリティである異性愛との対比によってはじめて発生し得るのであり、
こうした性的指向に対する社会通念は人が作り出すもので、感情論や「流行り廃り」と同様の変動性をもって容易に変化する可能性を常に孕んでいる。マイノリティー性的少数者)の捉え方は、時期や国柄、方針などによって、厳しく弾圧したり、逆に容認してみたりと人工的な要因によって極端に変動することとなる。
しかし、こうした人が作る常識や風潮は性的指向の存在自体に変化や影響を与えない。マジョリティ、マイノリティーに関わらず人智や意志が及ばない範疇において、おおよそ同様の確率で淡々と自然界に発生するのが性的指向である。
※動物にも異性愛以外の性的指向は存在する。(参考:動物の同性愛
==性的指向を取り巻く諸状況==
日本は、既に2008年12月の国連総会で「性的指向と性自認に基づく差別の撤廃と人権保護の促進を求める」旨の声明に同意しており、行政が性的指向を認知し、差別は公式に人権問題であるとして、なくす呼びかけを行っている国である。
しかし、こうした事実は民間レベルへはあまり知られておらず、また、知った場合にも、未知の事実に対する間違ったイメージや憶測の先行、旧世代的な慣習や固定観念の根強さなどから、警戒心や抵抗感が横たわり、日常的に特別視される場面が少なくない。また、性的指向に限ったことではないが、自分の弱点や欠点から周囲の注目を反らして自己を保護するために、「まともではない存在」という概念を作って、そちらへ意識を向けておかなければならない人々によって、その利用価値からマイノリティーへの特別視が意識的に打ち出されて維持されるといったこともある。
このように日本ではメディアでのタレントや著名人などによって同性愛等がオープンになってはいるものの、実生活のなかでは異性愛者にとって異性愛以外の性的指向が概念上マイノリティーであるのが実状である。
しかしながら、実数として2012年の電通総研の調査において、異性愛以外のLGBTは人口の5.2%(20人に1人)にも登るという結果が出ている。この数字は日常にLGBTがごく当然に多数存在していることを示す大変重大なデータである。
米メディアによると、日本のLGBT消費者による年間消費額は6兆円規模に達するともいわれ、ソフトバンクや電通のほか、グーグルIBMドイツ銀行などは、LGBTの関連賞であるTokyo SuperStar Awardsのスポンサーとなっているといった現状もある。こうした中で、果たして実質的にLGBTが未だマイノリティーであるとし続けられるのかは大いに問題である。
海外においては、習慣などから未だ異性愛以外は処罰の対象として弾圧を行っている国もあるが、これらは旧体制の開発途上国ばかりが中心である。
オバマ大統領が2012年に同性結婚の支持を打ち出したこともあり、近年は先進国を中心に行政が性的指向を認知をする動きがある。殊に欧・米では法整備が進められ、異性愛以外はマイノリティーという概念が消滅し、ごくありふれたマジョリティの常識的範疇の一部となっている地域も多く存在している。

抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)
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