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戦列歩兵 : ウィキペディア日本語版
戦列歩兵[せんれつほへい]

戦列歩兵(せんれつほへい、, )とは、17~19世紀の欧州の野戦軍で主流となった歩兵の運用形態のひとつである。
同様の兵科は欧州各国のみならず、中国、インド(セポイ)、新大陸(大陸軍)など、世界中で組織された。
== 歴史 ==

戦列歩兵は、古代から存在した密集陣形を組んで運用される重装歩兵の系譜に連なる兵科であり、野戦軍の中核をなした兵科だった。野戦における戦列歩兵は、散兵として運用される軽歩兵猟兵騎兵砲兵といった各兵科のサポートを受けつつ、敵の主力を同じく構成している戦列歩兵を撃破する事を主な役割としていた。18世紀頃には、擲弾兵と呼ばれる擲弾を敵陣に投げ込む選抜歩兵が欧州各国の軍に存在したが、時代を経るに従って擲弾による戦闘が廃れると、戦場における機能は戦列歩兵とほぼ同じとなり、体格や武勇に優れた兵士を選抜したエリート部隊として名称のみが残された。
戦列歩兵は、「Musketeer」という名の通り銃隊であり、槍にかわってマスケット銃銃剣が歩兵の主装備となって職業軍人の優位が消滅した三十年戦争の頃から各国軍で一般的に編成されるようになった。傭兵として長い歴史のあるスイス傭兵や、ヘシアン〔ヘシアン(Hessian)とは、ヘッセン大公国出身のドイツ人傭兵を指し、アメリカ独立戦争に際してイギリス軍が鎮圧のために送った兵力のうち3万人にも上る大勢力だった。彼らは新大陸に移民していたドイツ系入植者達とも戦火を交える事になったが、うち5,500人ほどは独立後も新大陸に留まりアメリカ人となった。ちなみにアメリカの怪奇伝説として知られる「スリーピー・ホロウ」は、この時期のヘシアンの話が元になっている。〕のような公募された傭兵(多くの場合、多重債務者や犯罪者によって構成されていた)や、徴兵された一般人を、少数の専門家による比較的短い期間の訓練によって大量に戦力として養成できる利点から、広く世界中で採用される歩兵運用方式となった。
19世紀の中頃に銃砲が飛躍的に発達し、ミニエー銃と近代的な後装式の砲が出現すると、戦列歩兵の密集陣形と派手な威嚇色を使った軍服スタンダールの『赤と黒』のタイトルは、当時の軍服の色である赤と僧衣の色である黒を、その両者を栄達の手段として捉える青年の行動を通じて、当時の世相を描いた事に由来する。〕は遠距離からの射撃の良い的となって死傷者が激増したため、歩兵の運用は密集を避けて周囲の環境に隠れながら行動できる散兵による浸透戦術が中心となり、戦列歩兵は急速に廃れていった。
戦列歩兵の消滅以降も、駐退機の開発による火砲の連射速度向上と近代爆薬の出現による榴弾の威力の驚異的向上、機関銃鉄条網の登場により、野戦における歩兵の死傷率はさらに増加し、兵士が戦闘時に着用する軍服は目立ち難い暗色系や保護色へと変化して行き、最終的に現在のような迷彩服に至っている。

抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)
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