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指南書 : ウィキペディア日本語版
指南書[しなんしょ]
指南書(しなんしょ)は上方落語の演目の一つ。元々はお寺の『法話』だった物を、2代目桂文之助が落語として完成させた。東京では『夜店風景(よみせふうけい)』との演目名でも演じられる。
主な演者として、初代森乃福郎3代目桂米朝などが、東京では4代目(9代目)鈴々舎馬風などがいる。
== あらすじ ==
京都のとある商家の若旦那である清吉は、頭もよく、商才もあって親孝行もする結構な人…なのだが、恐ろしく嫉妬深いのが玉に瑕。
あまりの嫉妬深さを心配した両親が、「結婚でもすれば大人しくなるかな?」とお花さんという女性と清吉を結婚させた。
しかし―『スズメ百まで踊り忘れず』。今までの嫉妬心が全部お花さんに向かってしまい、毎日壮絶な夫婦喧嘩をするようになってしまった。
これではイカンと思ったご両親。檀那寺(菩提寺)の和尚さんに清吉を預け、寺で精神修養させることを思いつく。
一年程ばかり修行していると、本基頭の良い人物であったうえに、旦那寺の和尚が【理で理を攻める】ような教え方をしてくれたおかげで、だんだんと人間が丸くなって来た。
これに安心したのか、両親が相次いで他界してしまう。さらに一年後、今度は和尚さんが体調を崩して床に伏してしまった。
いよいよという時、和尚さんは清吉を枕元に呼んで一冊の分厚い本を渡した。
「仏作って眼を入れずの例えじゃ…これだけが心残りでな」
もし、腹が立ったりした時は、どこでもこれを開いてみなさいと言い残し、和尚さんは大往生を遂げた。
それからの清吉は、和尚さんのおかげでこれまでとは180度変わった夫婦円満の生活を満喫。そんなある日、草津に住む叔父さんのところへ五十両届ける用事ができた。
初めての旅。大金を持ち歩いているのも相まって、道行く人がみんな盗賊に見える…。
「もし!」
出た!? 俗に言う【護摩の灰】だと思った清吉はもうガタガタ。何とか助けてもらおうと思い、指南書をひも解いてみると…?
〔 ''旅は道連れ 世は情け'' 〕
「…さいですか。おまっとさんでした、一緒に参りましょ」
「けったいな人ですなぁ」
話をしつつ、山科街道を抜けて大津の浜へ。矢橋船に乗ることになったが、清吉はカナヅチであるために船が怖くて仕方ない。
ここぞとばかりに指南書を開くと…?
〔 ''急がば回れ'' 〕
船で一里のところを陸路で三里かけ、てくてく歩く清吉。その道すがら、野路の里あたりで急に激しい雨。
船の方が良かったのかな? 首をひねりつつ指南書を開くと…?
〔 ''急がずば濡れざらましを旅人のあとより晴るる野路の村雨'' 〕
教えられたとおりに待っていると、間もなく雨は上がった。そんなこんなで草津。お金を渡すと叔父さんは清吉の苦労をねぎらい…。
「どうやって来た?」
清吉が「陸路で」と答えると、叔父さんは
「さっき雨に降られたやろ? あれは【吹き下ろし】と言う奴でな、それがために矢橋船が一そう残らず転覆したんだ。浜辺じゅう仏さんの山や」
と恐ろしい話。驚いて浜に行ってみると、最前の道連れの男の死骸も転がっている。
これも和尚さんのおかげだ…と胸をなでおろし、今度は急に家族のことが心配になって来た清吉。
泊って行けと言う叔父さんを制し、途中でお土産に羊羹を買いつつ京都へ。
急いで家に帰ってみるともう夜更け。そっと中を覗いてみると、…なんとおかみさんが男と一緒に布団の中!!
「お花め…四つにして切り刻んでやる…!」
間男なんかしおって! 激情に駆られ、中に踊りこみそうになる体を必死に抑え、清吉は念のためにと指南書を開く。
〔 ''なる堪忍は誰もする ならぬ堪忍するが堪忍'' 〕
「殺生や! 和尚さんも間違うんかいなぁ? もう一度お願いします!」
〔 ''七度尋ねて人を疑え'' 〕
「そうや。どうせ斬り殺すんなら尋ねてからでも同じや…」
何とか平静を装って戸をたたき、出てきたおかみさんをボカッ!
「何をするん!」
困惑するおかみさんの首を締めあげ、あそこで寝ているのはどこの男だ…と尋ねると、何故かおかみさんが変な顔に。
「あれはお母さんや」
何でも清吉の留守中、反物を持って遊びに来てくれたらしいのだが、振る舞い酒に酔っぱらってベロベロになってしまい、そのまま帰すと危ないからと一緒に布団に入ったんだとか。
歳のせいで髪の毛がまばらになってしまい、まるで男のハゲ頭のように見えてしまったという訳。
次の朝、義母にわびを言って、土産の羊羹を皆で食べようとすると腐っている。
おかしいと思って、またまた指南書をひもとけば…?
〔 ''うまいものは宵の内食え'' 〕

抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)
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