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故実読み : ウィキペディア日本語版
有職読み[ゆうそくよみ]

有職読み(ゆうそくよみ)は、古来からの慣例に従って、漢字で書かれた語を特別な読み方で読むこと。故実読み(こじつよみ)、名目(みょうもく)、名目読みと同じ。例として「笏(こつ)」を「しゃく」と読む、「定考(じょうこう)」を「こうじょう」と読むなどがある〔三省堂『大辞林』「故実読み」の解説〕〔吉川弘文館『国史大辞典』「故実読み」の解説 「漢字一字または二字以上の連結形式が、一つの概念をあらわす語の表記と考えられるとき、そのよみ方を、一般の字音・字訓の慣用によって推理すると、かえって誤読となるような、伝統的な特殊なよみ方をすることをいう。すなわち、漢字のよみの特殊な伝統が故実である。「故実」とは、近世になると、もっぱら形式的な前例遵守の慣行だけを故実と解すに至った。「こじつけ(故実付け)」の語源でもある。年中行事のよび名、地名・人名・書名などの固有名詞その他が主要なもの。また古典文学や古記録・古文書にみえる普通語でありながら、日本語の変遷の中で取り残された古い形、また禁忌によるよみ替え、ある時代に慣用となった不規則な変形などが故実読みとして一括されているが、一語一語について言語史的な追究は今後の課題として残っている。」〕。
歌学の世界などで、特定の歌人(俊頼(しゅんらい)、俊成、定家、式子(しょくし)内親王など)が音読みされることを有職読みの例とする説がある〔角田文衞『日本の女性名 歴史的展望』(上)(教育社歴史新書30、1980年)、173頁。〕〔小谷野敦は、ブログで 「『名前とは何か なぜ羽柴筑前守は筑前と関係がないのか』(青土社)のp.100に「有職読み」という語が出てくるが、このような言葉は存在しない。これは2006年何者かによってWikipediaに立項され、その内容がいかにもありそうだったため、以後増補が続けられてきたもの」と記していたが、後に付記として角田文衞『日本の女性名』に使用例があったことを記している。 - 〕。
江戸時代以前の歌人文人・宮廷貴族について使われることが多いが、存命中の人物を含む近現代の政治家・一般人に対しても使用されることがある。
有職読みは、いわゆる下の名前に対して使われる用語であり、姓(苗字・名字・氏)に対しては用いられない。例えば源氏平氏を「みなもとし」「たいらし」でなく「げんじ」「へいし」と呼ぶのは有職読みとは呼ばない。
== 名前の音読み ==
江藤新平(エトウ シンペイ)や三木武吉(ミキ ブキチ)のように、と紛らわしい音読みの名乗り・本名を持つ人物がいるが、これを有職読みとは言わない。さらに、あくまでも習慣なので、木戸孝允が「キド コウイン」と呼ばれることが多いのに対し、西郷隆盛は「サイゴウ リュウセイ」とは呼ばれないように、有職読みで呼ばれるか呼ばれないかに一定の基準があるものでもない。
江戸時代以前には、その人物の本名をとし、他人が諱で呼ぶことを避ける習慣があった。代わりに輩行名百官名などの仮名で呼ぶ場合が多かったが、諱を音読みする場合もあった。例えば徳川慶喜を「ヨシノブさん(様)」と他人が呼ぶことは極めて無礼な行為であり、代わりに「ケイキさん」と呼ぶことが多く、慶喜本人もそう呼ばれることを好んでいたとされる。
高島俊男によると、戦前には有職読みをすることが一般的であり、例えば滝川事件瀧川幸辰については「タキガワ コウシン」以外の読みを戦前では聞いたことがなかったという〔高島「お言葉ですが…」(文春文庫)より〕。
現在では多く政治家、創作家、芸能関係者など、広く一般の人に名前を呼ばれることの多い人物が、本来の読みがわからないときに音読みで呼びかけられることが多いため、一種の通名として用いることが多い〔例えば、松木謙公は本来「マツキ シズヒロ」が正しい読みだが、支持者から「ケンコウ」と呼ばれることが余りにも多く、以後ケンコウで通していると、『毎日新聞』夕刊の「特集ワイド」のインタビューで答えている。また、漫画家の小林よしのりは、友人の呉智英(クレ トモフサ)〔ペンネーム〕について、「読みがわからないからゴチエイと読んでいる」と書いている(『ゴーマニズム宣言』)。〕。

抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)
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