|
『日本楽府』(にほんがふ)は、頼山陽による、国史に題材を採った詩集。1828年(文政11年)に完成。 中国の李東陽(1447年 - 1516年)の「擬古楽府」に倣って、日本の古代から安土桃山時代までの歴史を歌謡風に詠じたものである。本書は山陽の著書の中で唯一、その在世中に出版された、1830年(文政13年)。門弟の牧百峰が注を施し、うたわれている史実の内容を解説している。全て66闋から成る(「闋」とは「ひとくさり」の意。したがって66闋は作品総数が66首ないし66曲であることをいう)。 この擬古楽府とは、古楽府の題のみを借りて作った楽府である。中国において六朝時代に流行した楽府の多くは、みな伝統的な楽府と歌辞の内容とを真似た模倣品であったが、唐代に入って拘束の厳しい近体詩の規則が整備されると、楽府についてはただ六朝期の古楽府の題だけをとって作ることが盛行し、形式上ほぼ古体詩と変わらぬまでになった。 上記の李東陽は明朝後期の文人で、盛唐の詩と唐宋八大家の古文を模範として当時流行の台閣体(表現形式に凝って内容の空疎な詩風を旨とする)に異を唱えた人物だが、この擬古楽府を能くし、山陽も『日本楽府』をものするにあたってこれを襲ったと、同書の後叙に見える。 ただ『日本楽府』の場合、史実をうたったとは言っても、その描写は往々にして信頼のおける史料との食い違いを見せるなど『日本外史』と似た傾向を持つ。同様のことは先の李東陽についても言え、その擬古楽府は社会一般に通行している歴史観と相容れぬ独断の歴史世界を描いたものと当時から揶揄されていた。しかし山陽の場合、これを以て単に歴史に無学な者の作品とするのは狭隘な見方で、むしろ山陽の主観に基づいた史実への論賛というべきであろう。 読みやすい本では、渡部昇一『頼山陽「日本楽府」を読む (全3巻)』がある。PHP研究所より、新版が選書で出されている。 category:日本の漢詩集 抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)』 ■ウィキペディアで「日本楽府」の詳細全文を読む スポンサード リンク
|