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月光のスティグマ : ウィキペディア日本語版
月光のスティグマ[げっこうのすてぃぐま]

月光のスティグマ』(げっこうのスティグマ)は、中山七里の恋愛サスペンス小説。新潮社の小説誌『yom yom』にて2013年春号から2014年夏号まで連載され、2014年12月22日に新潮社から単行本が刊行された。
本作は「ラブストーリーをお願いします」という出版社の希望により企画されたが、著者の中山にはほとんど恋愛小説を読んだ経験が無いことや、ただ惚れた腫れたの恋愛ではなく、仕事の面では対立しながら精神面では繋がっているという男女のアンビバレントな状況下での恋愛を描きたいという思いがあったため、恋愛サスペンスの色合いになったという。わかるようでわからない、つかめるようでつかめない“女性”という存在のもどかしさを強調するため、双子という2人の女に翻弄される1人の男が主人公として描かれている〔。
各章のタイトルは「思春の森」「運命の人〔『』や『運命の女 (2002年の映画)』という映画がある。〕」「恋人たちの距離〔『恋人までの距離』という映画がある。〕」「逢瀬いま一度」「いのちの戦場」となっており、実在する映画のタイトルや、それを少しもじったものになっているが、これは著者が恋愛のエッセンスを本からではなく、趣味の映画から抽出した結果である〔。
== あらすじ ==
美人双子姉妹と有名な八重樫麻衣優衣の顔は瓜二つで見分けが困難な中、幼馴染である神川淳平は一言二言話すだけで2人を的確に判別できる稀有な存在だった。姉妹の額には幼い頃に近くの森で変質者に襲われた時につけられた傷が残っており、同じ場にいたのに助けられなかった不甲斐なさを感じた淳平は、これから先は何が何でも2人を護るという誓いを立てていた。成長しても男性を寄せ付けない難攻不落な2人が唯一気を許す相手として共に過ごしてきた淳平だったが、次第に自分は優衣の方に惹かれているのだと自覚し始める。そして高校進学を間近に控えた1994年12月24日、優衣からも同じ想いを告白され、2人はキスをする。一方で麻衣は淳平の兄・省吾から想いを寄せられていたが、麻衣がそれに応える様子は見られなかった。それから約1か月後、塾帰りに廃ビルの前を通りかかった淳平は、中で省吾が誰かに刺される瞬間を目撃し、驚いてその場から逃げだしてしまう。しかも相手が麻衣に見えた気がしたため誰かに言うこともできず、淳平はまんじりともせず一夜を過ごす。そんな淳平を、阪神・淡路大震災が襲う。自宅も隣の八重樫家も崩壊し、淳平の両親も下敷きになってしまったが、本能で外に飛び出していた淳平は瓦礫の下からなんとか優衣を救い出し、避難所へと運ぶ。廃工場の焼け跡からは完全に墨化した省吾の遺体が発見され、事故と事件の両面で捜査もされたが、淳平は目撃したことを話さず、凶器も残存していなかったことから震災に巻き込まれたとして処理された。家族をともに失った淳平と優衣はそれぞれ芦屋の伯父の家と名古屋の叔母の家に行くことになり、淳平は連絡先も聞けないまま、優衣と離れ離れになる。
時は経ち、淳平は東京地検特別捜査部検察官となっていた。民生党から政権を取り返そうと必死になる国民党の牧村派に不審な金の動きがあると睨んだ勝呂逸夫は淳平に内偵を命じ、淳平は調査の結果、牧村派には共通の資金提供者がおり、その取引には帝都銀行が使われているという証拠を見つける。そして選挙投票日までにその口座から多額の現金引き出しがあり、なおかつ牧村派の政治家・是枝孝政が理事として名を連ねているという点でNPO法人〈震災孤児育英会〉の存在が浮かび上がる。再び勝呂の命令でボランティア希望として〈震災孤児育英会〉に潜入捜査を試みた淳平は、八重樫優衣を是枝の秘書として紹介され、予想もしなかった15年ぶりの再会を果たす。昔とは少し違った印象に、震災当時にも湧いた疑問が再び頭をかすめる淳平。自分が助けて今目の前にいるのは間違いなく優衣なのか?あの時、省吾を刺したのは本当に麻衣だったのか?
優衣が傾倒している是枝や〈震災孤児育英会〉を疑わなければならない立場でありながら、東日本大震災にショックを受け怯える優衣を目の当たりにして愛しい想いを強めた淳平は、優衣と結ばれる。その後の選挙で国民党は政権の座に返り咲き、是枝孝政も幹事長に就任。優衣とは逢瀬を重ねながらも任務は遂行していた淳平だったが、隠していた身分がばれ、ボランティアを解雇されてしまう。それでもなんとか育英会がアルジェリア支部に2億の送金を行った事実をつかんだ淳平は、優衣もアルジェリアへ向かうことを密かに確認し、自らもアルジェリアへと飛ぶ。そしてそこで動かぬ証拠となる書類を手に入れた淳平だったが、日本へ帰ろうとした矢先、首都アルジェで大規模なテロ事件が発生し、優衣とともに巻き込まれてしまう。日本大使館に逃げ込むもテロリストたちに拘束されてしまった2人だったが、次々人質が殺されていく極限状況の中、淳平は優衣からあの日の真相を聞かされる。

抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)
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