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朝のガスパール[あさのがすぱーる]
『朝のガスパール』(あさのガスパール)は、筒井康隆の長編小説。 朝日新聞の朝刊に1991年10月18日から1992年3月31日まで連載され、読者からの投書、パソコン通信を使った読者参加のメタフィクションが話題となる。1992年日本SF大賞受賞。タイトルはモーリス・ラヴェルの『夜のガスパール』より〔本文中にアロイジウス・ベルトランの同名の散文詩集の一部が引用されている(日本語訳・及川茂 岩波書店刊)。〕。 ==概要== この小説は1日1話ずつ掲載という新聞連載の特性を利用し、その日の掲載分を読んだ読者からの投書やASAHIネットのBBSへの投稿を作品世界に反映させ虚構と現実の壁を破るという実験的手法がとられた。具体的には投書や投稿により物語の展開に対して読者が作者に要望を出すことが出来るというものだが、単にそうした企画であるにとどまらず物語中に作者を模した小説家が登場し、その投書や投稿を引用して批評(時には激しく罵倒〔筒井は『噂の眞相』1991年12月号で、この連載の告知をした際「レベルの低い意見に対しては登場人物が反撃する」と明言しており(筒井『笑犬樓よりの眺望』より『新聞小説ははたして不要か』)、作中で某宗教団体の信者からの投書が、筒井に対する個人攻撃に終始していたため、実名で批判されている。〕)するなど作者独特の世界が開陳され従来の新聞小説に慣れた読者を驚かせた。BBSでは単に読者からの要望を物語の展開に採用するのみならず、書き込み内容やハンドルネームから醸成されるBBS住人のキャラクターを登場人物の造形に利用したりもした〔例えば、作中に登場する企業の社名や、登場人物のペットの名前など。〕。読者参加型ゲームに近い要素を持ち、また当時はインターネット普及以前で(BBSもいわゆる「パソコン通信」のものであった)まだ一般に普及しておらず言葉すらなかったオンラインゲームやオンライントレード〔作中では『PFS(ポートフォリオ・フィナンシャル・システム)』と呼ばれている。〕に近いものが登場し、非常に先進的な設定を取り入れた小説であった。BBSそのものも連載中に現在で言うところの「荒らし」「アスキーアート」「炎上」「祭り」などに相当する事態が頻発し、ネット社会を先取りする形となった。このBBSでのやり取りは『電脳筒井線-朝のガスパール・セッション』という全3巻からなるペーパーバックにまとめられ、出版された。この作品の連載にあたり、筒井は全力を注ぐため他の連載を半年ほど休止した〔『噂の眞相』連載『笑犬樓よりの眺望』など〕。尚、1993年9月に筒井が「断筆宣言」を発表した際、同作品で「『狂』という字が使えなかった〔反面、登場人物の台詞の一部に『関西弁で女性器を意味する隠語』が使われている。〕」と朝日新聞社側から「用語規制」があった事を明らかにしている〔筒井『笑犬樓よりの眺望』より『断筆宣言』(初出:『噂の眞相』1993年10月号)〕。
抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)』 ■ウィキペディアで「朝のガスパール」の詳細全文を読む
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