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李徴 : ウィキペディア日本語版
李徴[りちょう]
李徴」(りちょう)は、唐の張読の『宣室記』にある唐代に書かれた伝奇小説の一編「李徴」の登場人物。後代に、「李徴」を元として脚色された「人虎伝」にも登場する。また、「人虎伝」を元とした中島敦の「山月記」においても、登場する。〔以下、作品名を示す時は、かぎかっこつきで「李徴」。登場人物をあらわす時は、かぎかっこ無しで、李徴とする。〕〔中島敦の「山月記」については別項による。「李徴」および「人虎伝」関連を記載する。〕
李徴は、「旧唐書」や「新唐書」をはじめとする正史などの史書に名がみえないが、「李徴」に登場する袁傪(えんさん)は、同時代に同名、同官職の人物がいるため、李徴のモデルとなった人物が存在した可能性はある。〔志村『中国説話文学とその背景 』182-184P〕
==概要==
以下、『宣室記』に沿って解説する。
隴西(現在の甘粛省付近)出身。皇族の一人である。家は、虢略(河南省)にあった。幼少から博学で知られ、州府の推薦を受けて、世に名士とされる。天宝10載(751年)、尚書右丞の楊沒に挙げられて、科挙の進士に及第する。数年後に、江南の尉に就任する。性格は、才能を恃んで傲慢であり、同僚に屈することができず、鬱々としていた。宴会の時は、毎度、周りの役人に、「世に生まれて、君たちの仲間になるのか!」と口にしたので憎まれた。官職を辞め、故郷に帰って門を閉じてから1年以上、人と交際することがなかった。妻子があり、衣食に窮して、江南地域を外遊して、各地の郡国で職を求めた。江南では名声があったために歓迎されて、宴会が開かれ、立ち去る時は手厚い贈り物をうけた。1年経つ頃にはおびただしい財を手にいれ、虢略の家に帰る途中で旅館に泊まる。突然、病気にかかり発狂し、下僕を鞭で激しく打つ。10日余で病気は激しくなり、夜間に急に走り出し、行方不明となった。下僕は、彼の馬と財産を奪うと遁走した。
1年後、李徴の友人である袁傪が監察御史に就任し、嶺南に赴任する途中で、に出くわす。虎は姿を茂みに隠しながら袁傪に話しかけ、袁傪は声から李徴であることを見抜く。虎は、袁傪の昇進を賀し、自分が李徴であることを語る。李徴は、袁傪の問いに答え、夜間に走り出した後、虎に変わり、人間を何人も食べたことを話す。また、袁傪が帰路に自分に会うことになったら、今回のことを忘れ、袁傪を襲うであろうことも話す。李徴は、袁傪に妻子の世話と、自分が死んだことを告げるように願い、20首ほどのかつて作った漢詩を読み上げる。袁傪は、下僕に書き記させ、その文理の高遠さに感嘆した。
袁傪は、李徴の子に財貨を贈り、上京してきたその子に真実を話す。袁傪は、李徴の妻子を養った。のちに、袁傪は、後に兵部侍郎にまで昇進した。

抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)
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