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架線集電式 : ウィキペディア日本語版
架空電車線方式[かくうでんしゃせんほうしき]

架空電車線方式 (かくうでんしゃせんほうしき、がくうでんしゃせんほうしき)とは、電気鉄道集電方式のひとつである。車両が通る空間の上部に架線を張り、ここからパンタグラフなどの集電装置によって集電する方式である。架線集電方式ともいい、架線はトロリー線、電車線などと呼ばれる。
トロリーバスは架空電車線方式、鉄道では架空電車線方式と第三軌条方式がほとんどであり、新交通システムも第三軌条方式からの発展形である。
== 概要 ==

基本的な構造としては、鉄道車両などの集電装置(パンタグラフ)と接触して電力を供給するためのトロリ線、それを吊し又は支持するためのハンガイヤー・ドロッパ・吊架線・懸垂碍子・吊り金具である振止金具と曲線引き金具、それらを支持する電柱・ビーム・可動ブラケットなどの支持物で構成されている。直流電化区間では、確実な送電のために、変電所から「饋電線(きでんせん)」が架線に沿って敷設され、標準で250 m ごとに饋電分岐線(フィードイーヤ)によりトロリ線に接続される。トロリ線を吊り下げる方式のため、トロリ線の重量により弛みが生じ、支持間隔が長く、重量が重く、張力が低いほど、その弛みが大きくなる。車両の速度が低い場合には、トロリ線の弛みが多少大きくても、集電装置のトロリ線に対する追随性には問題ないが、車両の速度が高い場合には、集電装置(パンタグラフ)の上下動が激しくなって、トロリー線から離線するなどの障害を起こしやすくなる。そのため、架線には適切な張力を与える必要がある。
集電装置がトロリー線を通過する時には、トロリー線は押上げられ、通過後は自由振動を起こした後に振動は減衰していく。架線には押上げばね定数があり、架線を支持する支持点では大きく、支持点の間の中間付近での径間中央では小さいため、集電装置が通過する際には、支持点では架線の押上がり量が小さく、径間中央では押上がり量が大きい、そのため、集電装置は上下変動を繰り返しながら進んでいくようになる。
材質には、饋電線には硬銅より線が使用され、トロリ線には主に硬銅トロリ線が使用されるが、耐熱性を上げた入り銅トロリ線、新幹線の高速区間用として、銅に心を入れたCSトロリ線,耐摩耗性に優れた入り銅・析出強化銅合金(PHC)トロリ線がある。吊架線には一般には亜鉛メッキ鋼より線が使用されているが、饋電吊架式とCSトロリ線を使用してのシンプルカテナリー方式(後述)では、硬銅より線が使用されている。トロリー線の断面形状には、形円形・溝形円形・異形などがあるが、日本では溝形円形が使用されている。断面積は、在来線本線用が110 mm²、在来線の側線用が85 mm²、新幹線用は170 mm²が使用されており、引っ張り強さに対する安全係数は硬銅トロリ線で2.2、CSトロリ線で2.5としている。また、トロリ線には、流れる負荷電流抵抗損、集電装置の摺板の接触抵抗停車中に列車補機類の使用により流れる補機電流により、温度が上昇するため、許容温度が定められており、トロリ線で90 、ほかの裸電線で100 ℃としている。
架線は集電装置の摺板の磨耗が偏らないよう、摺板に対して横方向に蛇行して張られており、それによるレール中心に対する架線の左右の片寄りを偏位と言う。実際には、直線区間では振止金具を、曲線区間では曲線引き金具を使用して、トロリ線とビーム・可動ブラケットの間に取付けることにより、トロリ線に左右の偏位をつけさせるとともに架線を保持させる。また、集電装置の摺板の摩擦でトロリー線も磨耗するため、トロリー線の使用限度が決められている。電圧が高い交流電化区間では、直流電化区間より架線を支持する懸垂碍子の個数や可動ブラケットと電柱の間に取付けられている長幹碍子の段数が増やされる。
また架線の望ましい条件として次のことが挙げられる。
* 自重に加え強風による横荷重や積雪結氷の付着による垂直荷重に耐えられる。
* 一様の同程度のたわみ性があり硬点がない。
* パンタグラフによる押上がり量が小さく車両への給電が円滑である。
* 支持物の構造が簡素で信頼性と耐久性が高い。
* 建設が軽減できて保守もしやすい。
架線のトロリー線までの高さは、軌道上面から5,100mmを標準として、最低4,550mmから最高5,400mmとしているが、狭いトンネル内(狭小建築限界トンネル、剛体架線の区間、ミニ地下鉄)ではこれよりも低くなることがある。また、桜木町事故以降、架線の断線による列車火災を防止するため、折りたたんだ集電装置と架線との距離を直流1500Vの場合は250 mm 以上(ミニ地下鉄では150 mm)とすることや、車両の屋根を絶縁体で覆うことが決められている。また、トロリー線の偏位は、曲線での架線の偏位なども関連して、軌道中心から左右で最大250 mm(新幹線は300 mm)としている。
架線を支持する電柱には、木柱・コンクリート柱・鋼管柱・鉄柱などがあり、電柱の設置間隔は50m程度であるが、曲線区間などでは短縮される。レールを挟んで向い合う2本の電柱の間に取付けられ、懸垂碍子・吊架線・トロリ線を吊し又は支持するビームには、固定ビーム・スパン線ビーム・鋼管ビームがあり、他に電柱に直接取付けて、その接合部を中心に自由に回転して、架線の移動に追随できる構造の可動ブラケットがある。
架線(電化区間)の終端には架線終端標識が設置される。


抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)
ウィキペディアで「架空電車線方式」の詳細全文を読む

英語版ウィキペディアに対照対訳語「 Overhead line 」があります。



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