|
核生成(Nucleation)とは、非常に局所的な領域で、異なる熱力学的相が出現することである。核形成とも呼ばれる。例えば、液体中では結晶・ガラス領域・気体の泡などの発生が実例として挙げられる。一般に知られている例としてはメントスガイザーがある。空孔クラスタの発生にも関わっており、半導体産業などで重視される。飽和水蒸気から液滴が形成される現象も核生成の一種であり(雲凝結核)、人工降雨のプロセスや泡箱・霧箱のような実験器具とも深く関連している。例外は存在するが(電気化学的核生成)、ほとんどの核生成過程は物理的な現象であり、化学的現象ではない。 通常、この現象は核生成部位と呼ばれる、流体と表面が接している場所で起こる。懸濁物や微小な気泡の表面でも発生する。このようなタイプの核生成は不均質核生成 (heterogeneous nucleation) と呼ばれるが、明確な核生成部位のない均質核生成 (homogeneous nucleation) も存在する。均質核生成は自発的・ランダムに起こるが、これには過熱・過冷却が必要である。 ==例== * 高層大気では雲凝結核の供給量が少ないことなど、気象学では重要な概念である(人工降雨も参照)。 * ナノ粒子の結晶化過程に関連しており〔E.M-V. and R. Bowles (2007) ''Surface nucleation in the freezing of gold nanoparticles.'' Phys. Rev. Lett. May 4;98 (18) 185503〕、気相プロセスでの合成において重要である。 * 天然・人工を問わず、均質な溶液からの結晶化プロセスは核生成から始まる。 * 酢酸ナトリウムを用いたエコカイロでは、金属板を折り曲げる際のキャビテーションを核生成中心として利用し、結晶化を引き起こしている。 * 炭酸水が常圧下に置かれると、すぐに核生成により二酸化炭素の泡が発生する。このように核生成は界面の存在によって促進され(不均質核生成)、沸騰石やRock candy(上の写真)などの例がある。メントスガイザー(メントスコーラ)は劇的な事例である。 * シャンパンステアラーにはこれを応用した製品があり、表面積や角の多い形状によって炭酸を効率的に逃すことができる。 * 液体の圧力が減少した場合、沸点が低下して過熱状態となり、液体のバルク部分で核生成が起きることがある。だがこれよりも、濡れ性の低い容器の表面の亀裂などに小さな気泡が付着し、ここが核生成部位となることが多い。このため、過熱を起こすには容器の表面が滑らかで濡れやすく、液体が脱気されていることが必要になる。 * 膜沸騰やライデンフロスト効果はバルク部分での均質核生成によって起きる現象である。 * 重合体〔R. J. Young (1981) ''Introduction to Polymers'' (CRC Press, NY) ISBN 0-412-22170-5〕・合金・セラミックスなどで重要な概念である。 * 化学・生物物理学では、重合過程の中間体としての多量体の形成にこの言葉が用いられる。これは結晶化やアミロイド形成を説明するモデルとして有用である。 * 分子生物学では、単量体の小さなクラスタから急速な重合が起こり、ポリマー構造が生成される際の用語として用いられる。 例えば、2分子のアクチンの結合は緩いが、3分子目が結合することで安定化する。この三量体にさらに分子が結合し、核生成部位ができる。これは微小繊維の重合過程において律速段階となっている。 抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)』 ■ウィキペディアで「核生成」の詳細全文を読む スポンサード リンク
|