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核磁気共鳴スペクトル : ウィキペディア日本語版
核磁気共鳴分光法[かくじききょうめいぶんこうほう]

核磁気共鳴分光法 (かくじききょうめいぶんこうほう、)は、核磁気共鳴(NMR)を用いて分子の構造や運動状態などの性質を調べる分析方法である。なお、NMR関連の文書では水素原子核の意味でプロトン陽子に由来)という言葉がよく使われ、本記事でも多用されている。
== 概要 ==

原子番号質量数がともに偶数でない原子核は0でない核スピン量子数 ''I'' と磁気双極子モーメントを持ち、その原子は小さな磁石と見なすことができる。磁石に対して磁場をかけると磁石は磁場ベクトルの周りを一定の周波数歳差運動する。原子核も同様に磁気双極子モーメントが歳差運動を行なう。この原子核の磁気双極子モーメントの歳差運動の周波数はラーモア周波数と呼ばれる。この原子核に対してラーモア周波数と同じ周波数で回転する回転磁場をかけると磁場と原子核の間に共鳴が起こる。この共鳴現象が核磁気共鳴と呼ばれる。
磁場中に置かれた原子核はゼーマン効果によって磁場の強度に比例する、一定のエネルギー差を持った 2''I'' + 1 個のエネルギー状態をとる。このエネルギー差はちょうど周波数がラーモア周波数の光子の持つエネルギーと一致する。そのため、共鳴時において電磁波の共鳴吸収あるいは放出が起こり、これにより共鳴現象を検知することができる。
被観測原子のラーモア周波数は同位体種と外部静磁場の強さでほぼ決まるが、同一同位体種の原子核でも試料中での各原子の磁気的環境によってわずかに異なり、そこから分子構造などについての情報が得られる。ひとつのNMRスペクトルで観測される周波数範囲は比較的狭く、一種類の同位体原子だけの試料中での状態を反映したものになる。つまりNMRは同位体種に選択的な測定法である。
分光法なので得られるデータは横軸が周波数で縦軸が強度のスペクトルとなる。しかし、ある原子の共鳴周波数は外部静磁場の強さに比例して変わり、その被観測原子固有の性質とはならない。だが、
(被観測原子のラーモア周波数 − 基準周波数)/(磁気回転比 × 外部静磁場強度)
で定義される化学シフトは被観測原子固有の値となるので、NMRスペクトルの横軸は化学シフトで表すのが一般的である。共鳴位置に現れるピークのことを単にピークまたはシグナル、信号と呼ぶ。
主に対象となる原子は水素または炭素(通常のではなく核スピンを有する同位体を測定する)であり、これらについては膨大な資料が存在する。水素原子を対象とするものを NMR(プロトンNMR)、炭素原子を対象とするものを NMR(カーボン・サーティーンNMR)と呼ぶ。他にそれ以外の元素についても核スピンを持ちさえすれば原理的には測定可能であり、現代の有機化学では最も多用される分析手法の一つである。例として水素のラーモア周波数は 、で窒素のラーモア周波数は である〔

〕。やは核スピンを持たないので検出できない〔。有機化合物の同定構造決定に極めて有用であり、NMRスペクトルを解釈して有機化合物の構造決定に結びつける技術や、その基礎となるNMRの原理についての多数の成書が出版されている。また病理検査においてもその有用性が活用されつつあり、可搬式の機種が開発される〔。
近年では永久磁石式だけでなく、超伝導磁石式でも卓上に設置できる機種が販売されている〔卓上に設置可能な世界最小、最軽量の高分解能NMR用分光計。 〕。
また、単結晶X線回折と並んで構造生物学のための強力な武器である。測定する核種の磁気回転比や天然存在比、電気四極子モーメント等の違いで感度や線幅が異なる。

抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)
ウィキペディアで「核磁気共鳴分光法」の詳細全文を読む



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