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毛皮を着たヴィーナス : ウィキペディア日本語版
毛皮を着たヴィーナス[けがわをきたう゛ぃーなす]

毛皮を着たヴィーナス』(原題:''Venus im Pelz'')は、「小ロシアツルゲーネフ」と謳われた〔(ドゥルーズ、1998年)pp.14〕ウクライナ出身の小説家マゾッホが、1871年に書いた中編小説。彼の代表作であり、そこには「マゾヒズム」の開花が見てとれる〔(種村、1983年)p.230〕。ポルノグラフィカルな性愛小説とみなされがちであるが、ドゥルーズは本作を「ポルノロジー」という、より次元の高いジャンルで扱うことを求めた〔(ドゥルーズ、1998年)pp.26-27〕。
== 梗概 ==
毛皮を着たヴィーナスと戯れる夢をみていた「私」は、来訪していた友人宅の従僕に起こされる。友人であるゼヴェリーンにその奇妙な夢を語りながら、「私」はふと壁にかかっていた絵がまさに「毛皮を着たヴィーナス」を描いていることに気づく。独自の女性観を持っているゼヴェリーンは、粗相をした女中に鞭打とうとすることを制止した「私」に、夢の話への返答として、かつての自分の経験をまとめた原稿を読むことを薦めた。それによれば、
退屈なカルパチアの保養地で過ごすゼヴェリーンは、そこで彫刻のように美しい女性、ワンダと出会った。まだごく若い彼女は未亡人であった。ゼヴェリーンはその美貌と奔放さに惹かれ、またワンダも知性と教養を備えた彼を愛するようになる。自分が苦痛に快楽を見出す「超官能主義者」であることを告白した彼は、ワンダにその苦痛を与えて欲しいと頼む。そして自分を足で踏みつけ、鞭で打つときには必ず毛皮を羽織ってくれ、とも。はじめはそれを拒絶していたワンダだが、彼への愛ゆえにそれを受け入れる。そして2人は契約書を交わし、奴隷と主人という関係になる。

しかしワンダにとって結局それは演技でしかなかった。「奴隷」を連れて旅行した先のイタリアで、ワンダの前に第三の男が現れる。ゼヴェリーンは嫉妬という苦痛に狂いそうになるが、ワンダは再び彼への愛を告げ、第三の男は意中にないと断言した。その翌朝、ワンダの寝室を訪れたゼヴェリーンはいつものようにワンダへ鞭打ちを頼み、縄で縛りつけてもらう。すると突然、そこに隠れていた第三の男が現れる。第三の男は力の限りを尽くしてゼヴェリーンを鞭で打ちつけ、その間ワンダは笑いこけるばかりであった。縄をほどかぬまま、2人は屋敷を出て行く。しばらくしてワンダからゼヴェリーンへ手紙が届いた。そこにある、当時の行いが「治療」であったという文章に、ゼヴェリーンは心から納得するのだった。
原稿を読み終えた「私」にテーマを問われたゼヴェリーンは、「女は男の奴隷になるか暴君になるかのいずれかであって、絶対にともに肩を並べた朋輩にはなりえない」という持論を改めて述べるのだった。

抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)
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